マリーとマルグリット、ふたりのヒロインが放つ再生と希望の光。

本作は、三重苦で生まれた女性マリー・ウルタン(1885〜1921)と、彼女を教育したシスター、マルグリット、共に実在したふたりの女性による真実の物語。「三重苦の女性と、彼女を支える教育者」といえばヘレン・ケラー(1880〜1968)とサリバン先生の物語が有名であるが、後天的な病気によって視力・聴力・言葉を失いサリバンをはじめ複数の教師から教育を受けたヘレン・ケラーとは異なり、本作のヒロイン・マリーは、生まれつきの三重苦であり、彼女を教育したのは献身的な修道女、マルグリットただ一人であったという。

主演のマリーを演じたアリアーナ・リヴォアールにインタビュー!!

$red Q:この映画に出演しようと思ったきっかけを教えてください。 $

アリアーナ:監督がマリーの役をろう者に演じてもらいたいと考えていたということで、私が通う学校にもオーディションのお知らせが届いたんです。でも私はそのオーディションのことを忘れてしまっていて、参加できなかったんです。でも後で監督に会う機会があって、マリー役に選ばれたのです。それまで普通の学生で、女優になりたいと思ったことはなかったですが、映画『奇跡の人』を観た時に、障がいをもちながら闘っている人々に共感していましたから、監督に「この映画に出ないか」と言われた時は、夢をかなえたというよりは、チャンスがやって来て自分がそれをつかんだと思いました。学生である私が映画に出るには勇気が必要でしたが、マリー・ウルタンという実在した人が障がいを乗り越えたということを伝える映画なので、私が出演する意味があるのではと思い出演を決めました。







Q:初めて演技をしたとは思えないくらい素晴らしい演技でしたね。演じてみた感想を教えて下さい。

アリア—ナ:現場では今回私と一緒に日本に来日している手話通訳のサンドリーヌさんがスムーズな通訳をしてくれたので、監督とも最初からいろいろなことを話し合うことができました。共演のイザベル・カレさんはたくさんの映画に出ているベテラン女優さんですが、先にイザベルさんの撮影を進めてもらって、それをじっくり見てから私のパートの撮影に入ったので、撮影が進むにあたって演技することが気持ち良くなっていきました。

Q:マリーを演じるにあたりどのような取り組みをしましたか?

アリアーナ:撮影前には実際にろう学校に行って、皆さんの生活ぶりを見せてもらいました。最初マリーは両親と狭い世界に生きていたので、あまりにも情報に欠けていました。学ぶことに対してモチベーションをもつほどの情報がなくて、暴れるしか表現の仕方が判らなかった。マルグリットはマリーの中にある聡明さを直感で感じ取って、彼女に情報を与えて彼女の可能性を引きだしたのだと思います。マリーはそんな風にして成長していったのだと思いながら演じました。

Q:撮影で大変だったシーンはどこですか?

アリア—ナ:暴れるシーンです。シスターマルグリットと取っ組み合いになるシーンがありますが、取り直す時に最初からまた全部を演じなければならないので、暴れるシーンは結構大変でした。逆に野生児のようなマリーが木登りをするシーンでは、私も田舎育ちで高い木に登っていたので、楽々とこなすことができました。

Q:この映画の撮影を通して感じたことはどのようなことでしたか?

アリアーナ:人間は誰でも、困難の前では平等というか、困難は誰にでもありますよね。仕事がうまくいかない、コミュニケーションがうまくいかない、勉強ができないなど。マリー・ウルタンの場合は目が見えず、耳が聞こえないということでコミュニケーションがとれないという困難で、彼女をその悩みから救い出してくれる人を待つしかなかったのです。彼女には幸いマルグリットというシスターが現れて、救ってくれました。マリーの役は、実生活で私自身がコミュニケーションの困難を経験していたからできたと思います、美容院やパン屋さんに行くにしても日常生活の中で、なかなか私の要求していることが分かってもらえないことがあります。私たちろう者にとっては、皆さんが理解してくれないことがさらなる困難になってしまうのです。そんなことをこの映画を理解していただけたらと思います。お互いがお互いの違いを理解して寛容な心をもてたら争うこともなくなるのに、と感じています。

Q:この映画で伝えたいことはありますか?

アリアーナ:この映画は私のようにろうであるとか、バリア(障がい)をもった人たちにも観てほしいということです。フランスでは、本作をフランス語の字幕付きで観ていただくことができたんです。そのために監督が、様々なところに掛け合って、大変な努力をしました。皆さんに、そんな風にバリアフリーで観ていただく、違いをもっている人も含めて皆さんに楽しんでもらうのが映画という娯楽だと、私は思います。人間はそれぞれ困難をもっている、違いももっている。でも映画というものの前では、皆が平等に楽しめることが大切だと思います。たくさんの人たちが均等に機会をもらえるという、今回、監督の尽力のもとにそのようにアクセスできたことは素晴らしいことです。この方法が、フランスのパイロットモデルとして世界中に広がっていくことを私は祈っています。

Q:アリア—ナさん自身が好きな映画はありますか?

アリア—ナ:『ダイバージェント』とか大好きです。私が観るのはアメリカ映画が多いですね。実はフランス映画は実はあまり観ないんです。演技がわざとらしいしフランス映画のユーモアも重く感じてしまいます(笑)。

Q:映画のイメージと実際のアリア—ナさんは、イメージが違いますね。今後演じてみたい役などありますか?

アリア—ナ:私は体を動かすのが大好きで、とても活発な性格です。エネルギッシュだし、走るのも早いんですよ。だからアクション映画などにも出てみたいです。

Q:初来日の日本についてどう思いましたか?

アリア—ナ:人々が礼儀正しくて優しくてびっくりしました。フランスでも日本食を食べたことがありますが、やはり本場のお寿司はおいしかったです。
  
  

執筆者

Yasuhiro Togawa

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