原作は全国の書店員や書評家が大絶賛する「彼女との上手な別れ方」。監督はドラマ「JIN-仁-」や大ヒット映画『ROOKIES-卒業-』『ツナグ』など、記憶に残る感動作を次々と生み出すヒットメイカー・平川雄一朗。未練を残したままこの世を去った人たちの“想い”を大金と引き換えに叶えていくという意表をついたストーリーを、笑って泣ける極上のエンターテインメントに昇華させた。

そして、最後の“別れ”の瞬間がおとずれたとき、優しくも清々しい涙に包み込まれる。

平川雄一朗監督に話を聞く

$Red ●岡田将生さんのダメ男設定がイメージと違って話題になりました。あえて岡田君を起用した意図は? $

岡田君のイメージはきれいで好青年ですよね。『悪人』(10)では、ちょっとヘンな人を演じていたけれど、基本的にはきれいなので、この役柄は逆にあうのでは? と僕のなかで勝手に思っていました。素顔と対照的な役柄を演じたほうが、俳優さんにとってはいいと思うので。岡田君はよかったですよね。自分の中にないものを出そうと葛藤している姿もわかって、そういう考える葛藤があると、考えた結果が画面にも出てくると思うので。彼は、素顔が女々しいかもしれない(笑)。でも、そういうほうが成長すると思います。人って極端には変わらない、根本は変わらないと思うので、よく演じてくれたと思います。本当にいい人になるとウソっぽいですが、基本は悪いガジロウという人間のままの変化なので、そこは受け入れられるとは思っていましたけどね。






●広末涼子さんの、リアルとファンタジーを交互に引き出すような演技力も秀逸でした。

この作品の中で、とにかく広末さんは圧倒的な母性でいてほしかった。原作は母性よりも、女性のほうが強いわけです、そこだけはこだわったけれど、でも広末さんはそもそもきれいなので、女性の部分も大いに残っている。それはそれでいいけれど、それ以上に本当は彼女が隠しているだろう母性が必要だった。それは表には出さないけれども、圧倒的に母であるはずだと思うので、僕が観たかった部分ですね。広末涼子さんの母性を観たくて、だから脚本の段階で女性から母性のほうにシフトチェンジした。そうじゃないと、家族で観る映画にならない。そのユウコでなければ、家族で観る物語になってなかった。セリフも演技も控え目、感情をなるべく出さない。母は強いイメージなので、そういう存在でいてほしかったですね。だから、泣かないでほしい。涙を流さないでほしいと、彼女にリクエストしました。その我慢している表情がいいと思います。涙が見えると、そこで全部終わっちゃいますからね(笑)。

●ファンタジーを作る際に、どういうことに気をつけていますか?

正解を簡単に出さないこと、ですかね。自分の中に正解はあるけれど、最後の最後まで本当にそうか? と悩み続けることですかね。だから、おごらないということです。エゴがないと作品はできないと思うので、最終的にはせめぎあいではありますが、どれだけエゴを消せるか。葛藤しないと、いいものは作れないと思います。僕はまず大枠のテーマを決めて、ゴールも決めてはいるけれど、そこの過程にいたるアプローチとしては、いろいろな手段方法があると思うので、そこを悩み続ける。答えはあるけれど、あえて出さない感じですね。

●この題材に出会う前後で、自分の中で何か変化したことは?

今回の『想いのこし』を経て、人の目に触れる作品を作り続けたいと思いましたね。この物語はきれいごと、性善説なわけですが、そうであっても自分も同じようにありたいという願望は、この映画を撮る前も撮った後も一緒で。やっぱり人ってラクをしてしまいがちじゃないですか。でも、一生懸命やらなくちゃいけないということを言い聞かせて、毎日やっていくことには変わりはない。それは、自分の中では変わらないテーマでしょうね。僕にも子どもがいて、彼らや自分の作品に成長させてもらっているということも、常日頃感じていますし。

●最後になりますが、メッセージをお願いいたします!

大切な人と観てほしい作品ですので、お家の中で泣きたい人は、一人でも楽しめます。もちろん家族で、友だちと、恋人と一緒に観られる作品なので、観てほしいです。僕自身、家族で観ることが多いですが、でも思い切り一人で泣くのもいいですね(笑)。映画館では周囲が気になって泣けなかった人も、今度は大丈夫ですね(笑)。

『想いのこし』 2015年5月20日(水) DVDレンタル開始!

※セルDVD 東映ビデオ株式会社より同時発売

執筆者

Yasuhiro Togawa

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