いま日本の映画業界が最も注目している才能と言っても過言ではない、カナダ人監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの最新作『複製された男』は、答えが分からない鑑賞者が回答を知りたがって異常な盛り上がりを見せているミステリー映画だ。この度7月18日(金)からの日本公開を前に、主演のジェイク・ギレンホールからインタビューが届いた!



Q『複製された男』に魅せられたわけ
ジェイク「まず僕がこの映画に参加したいと思ったのはドゥニ・ヴィルヌーヴが大変素晴らしい監督だからなんだ。そこで実際彼に会って映画の話をしたら、彼の思い描いていた世界は脚本を遥かに超越するものだったんだよ。人は成長する過程で多くの妥協をし、何かを手放すことを余儀なくされる。それに対する葛藤や抵抗、誰もがもつ二面性、本当は不適切な状況だと理解していながらものめり込んでしまうこと…、と同時に、人はある一定の慣例に則した生き方や決められたルールに従わなければいけないことを教わる。人生を無駄にしないためにも、時には手放さなければいけないものもある、とね。こういった葛藤や妥協は世界共通だと思うんだ。何かを欲することや、それに伴う葛藤、その過程の意識下では何が生じて、その時自分はどのような決断を下すのか。主人公がたどるその不可解で奇妙な道程にとても魅了されたんだよ。」

Q自分が演じた大学講師アダムとドゥニ監督にある共通点。
ジェイク「この話はドゥニ監督の夢想そのものなんだよ。彼が創造した世界だし、映画自体が彼そのものと言える。ドゥニ監督とアダムが共存する世界の中で、アダムは語り手として彷徨っているんだね。アダムは大学で歴史を教えるごく普通の男に見えるけど、彼の内なる世界は混沌として屈折しているんだ。でも一人の人間として考えれば、その苦悩は誰にでもあるようなことだと思うよ。他の人と比べて彼が異質だというわけじゃないよね。」

Qアダムとアンソニーという難しい二役を演じたことについて。
ジェイク「映画では、二人の外見にはあまり差をつけず、態度や行動でそれと分かるように心掛けたんだ。二人は別々の人間なんだけど、最も困難で、かつ最も興味深い演技の方法は二人をなるべく似せることだと思ったから今回はそうしたんだよ。それに、二役なので自分の演技を相手役の目線から見る事が出来るのは面白い経験だった。普通は自分の演技が相手にどのような影響を及ぼすか、自分では分からないからね。相手にどんな影響を与えるか考えることはあっても、それを実際に体験することはまずないから。この映画の場合は特殊な撮影方法のお陰で、それを体験することが出来たんだ。僕は方向感覚の喪失みたいな感じを楽しんでいたから、その体験も含めて、二人の役を演じることができて面白かったよ。」

Q二面性をもつ人間を描いた映画の面白さ。
ジェイク「僕らは白と黒や、陰と陽みたいに分かりやすいストーリーには慣れているし、コンセプトも理解出来るでしょう? でもこの映画を観た人が不穏だと感じるのは、ハッキリと白黒が分かれていないからだと思うんだ。この映画でそういう今までの対立の概念を破壊してしまうくらい、観客を困惑させることが出来たら面白いよね。」
難易度の高い一人二役を演じたジェイクだからこそ感じられる、演じることの面白さが伝わってくるインタビュー。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督との仕事は、ハリウッドきっての演技派と言われているジェイクが本領を発揮した実感のある作品に違いない!

執筆者

Yasuhiro Togawa

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