『ぼくらのへんたい』『恋につきもの』が話題を集めるふみふみこ先生の短編集『女の穴』が、『オチキ』『うそつきパラドクス』など青春エロティック作品を精力的にリリースし続けている吉田浩太監督により映画化された。

 『女の穴』は6/28に全国7館にて先行公開、7/2に全国各地の映画館、DVD・ブルーレイ、ビデオオンデマンド、テレビにて、邦画史上初の試みとなる「全メディア同時公開」予定となっている。

『女の穴』先行公開をひかえた吉田浩太監督インタビューの後半では、“エロティックムービー・マイスター”と勝手に称号を与えたくなる吉田監督のこれまでの映画作りの葛藤と現在を紹介したい。















■CO2に参加した頃
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吉田監督は2005年にオリジナル企画で第2回・シネアストオーガニゼーション大阪(CO2)で助成作品に選考され、江口のり子さん主演で『お姉ちゃん、弟といく』を撮り上げた。

——今年もCO2が始まりますが、吉田さんがCO2の企画に応募した時は、すでにプロとして仕事をされていたんでしょうか?

吉田:映像制作会社のシャイカー(清水崇監督・豊島圭介監督が所属)に入って3年目で、助監督としてTBSの連ドラの中国ロケに行っていたんですが、現地でHPを見ていてCO2を知りました。ロケしながら、昔から考えていたお姉ちゃんがパンツを盗まれる話で企画を立てて送りました。

——当時のCO2の予算が30万で、予算に合わせた企画を考えたそうですね。これは助監督としての経験からですか。

吉田:30万と聞いて絶対短編だろと思ったんです。いざ出来上がったらみんな長編だったので凄く驚きましたね。尺もさることながら作品も凄かったし。僕の場合は予算から逆算して発想した感じで。

——CO2に参加してその後役立ったことはありますか?

吉田:ありますね!当時は本当にしょうもない助監督で。現場ではてめえ死ね!って言われるような(笑)。演出部でセカンドまでは行ったんですが、こんな使えない奴は初めてだと言われましたし。演出部だけやっていて映画は無理かなと考えていました。
その中でCO2に応募して、お姉ちゃんがノーパンでボーリングする話ですけど(笑)、自分のお金ではなく出資で自分の映画として撮らせて頂いたのは凄く大きな自信になりました。助監督だけではなく、監督としてまだ可能性があるかもしれないと思えたのがCO2でしたね。そこがなかったら今監督としてやれていないと思う大きな存在です。

——タイトルも不思議な余韻がありますし、このストーリー!拝見したら想像以上にエロティックで(笑)、吉田さんならではのエンターテインメントのセンスを楽しませて頂きました。

吉田:久々に現場やったら凄く楽しかったですし。単純に監督する喜びを再確認しました。

■オリジナル、企画物に係らず一所懸命懸取り組むことで
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『お姉ちゃん、弟といく』は、2006年CO2フィルム・エキシビションで主演女優賞(江口のりこ)、ドイツ・ニッポンコネクションで日本映画3位に選出され、2008年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭では審査員特別賞を受賞。その後若年性脳梗塞を患い闘病生活を送ったが、2010年に復帰。『ユリ子のアロマ』で劇場デビューとなった。

——『ユリ子のアロマ』『ソーローなんてくだらない』『オチキ』『うそつきパラドクス』と撮られていて、若手でエロティック作品と言えば吉田さんが真っ先に浮かびます。
コンスタントに仕事をして行くために心掛けておられることはありますか?

吉田:偉そうなことは言えないけど、映画は根本的に“企画”だと思っています。作家性がある方はたくさんいらっしゃるけど、僕はそういうタイプじゃないので、どんな企画でもいいので自分なりに一所懸命撮って行くというスタンスでやり続けています。
コンスタントに撮っているのもエロなので需要があるというか(笑)。企画に対して自分を意固地にし過ぎないということでしょうか。どんな企画にも練っていけば面白い要素は必ずあると思うので。
 以前は少し自分に作家性があるんじゃないかという勘違いもあって、『ソーローなんてくだらない』を撮った後ぐらいのときは、たくさん営業もしたけど、軒並みダメだったんです。そのとき思ったのが、自分の企画が通らないのは周りから見たときの自分の存在はそんなもんで、そこに何かを賭けているようではダメということ。その辺りのことを理解したことが、一つターニングポイントだったかなと。
それで原作ものを手掛けたり。自分を過大評価しないという気持ちでいます。自分は所詮ソーローだよな、みたいな(笑)。

——とても冷静にご自分を見ているんですね。『ソーローなんてくだらない』の後の『オチキ』もオリジナルですね。

吉田:ワークショップに参加した人をどう料理するかで始まったオリジナルです。ワークショップに集まった無名な人たちと無名な監督が、どう這いつくばっていけるかをテーマとしていたので、やはり企画ありきですね。

——大メジャー作品の『モテキ』と比べたときに、人間のどん底を描ききろうとした吉田さんの視点がシビアで面白かったです。

吉田:監督の大根仁さんも気に入って下さったのでそれは良かったです。

——ラストもちゃんとドロでオチてましたもんね(笑)

吉田:大根さんには後で謝らせてもらいました(笑)。大根さんがある対談で“与えられた企画を自分で料理するのが楽しい”と仰っていて、勇気付けられました。どんな企画でも自分が妥協せずに考えて作れば、それがイコール自分らしさになって行く気がします。もし、僕の作品を好きだと言って下さる方がいるなら、自然とそうなったものを評価して下さっているのかもしれません。

——吉田さんのオリジナル作品では、突拍子もないシチュエーションの面白さと、手触りのある感情の表現が面白いです。

吉田:『お姉ちゃん』の前に撮った『象のなみだ』は妊娠した彼女からひたすら逃げ続ける話だったけど、『お姉ちゃん』はエロで勝負してみたいと思いました。自分の中でエロを考えたときにドラマとしてどうあるかを考え始めたので大きかったですね。

——こんなのあり得ない!と思いつつ、そこに伴う不思議な実感が魅力ですね(笑)

吉田:すみません。あんな話絶対ねえなと思いながら自分でも楽しんでいます(笑)。映画はリアルな部分は大事だと思うが、そこは役者さんの演技で感じてもらえたらいいので、あとはジャンルとしてもっと面白いものを見せていけたら。

■新作、続々と
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——『女の穴』に続いて7/19に『ちょっとかわいいアイアンメイデン』も公開を控えていますね。

吉田:撮影は2週間あったんですがあれも大変でしたね(笑)! 女優さんをいかに綺麗に魅力的に撮るかで。

——女子高に拷問部という設定で、予告を観てびっくりしましたが過激な作品ですね(笑)

吉田:これに比べたら『女の穴』は極めて上品です(笑)。『ちょっとかわいいアイアンメイデン』はエロというアクション映画ですね!原作が4コマ漫画なので設定だけ借りて後はオリジナルで作っていきました。

——このままエロ系一筋で、ぜひ!(笑)

吉田:そうですね(笑)。ホラーもやってみたいし、あまりジャンルに特化せずにリアリティベースのものもやりたいです。

——それは普通に向いておられると思いますよ。エロという手段で人間を描いてこられたんですから。

吉田:そうですかね(笑)。今年は次に漫画原作が1つあって、文芸物が1つあるんですけど、来年にはそろそろ1本オリジナルで撮れる機会を狙っています。

——これからも新作を楽しみにしています!

執筆者

デューイ松田

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