直木賞作家・桜庭一樹、伝説の原作小説を実写映画化。ハリウッド仕込みのアクションで熱い支持を集める監督・坂本浩一が、直木賞作家の桜庭原作に真っ向から勝負を挑む。芳賀優里亜、多田あさみ、水崎綾女、小池里奈、山口祥行、桃瀬美咲 、榊英雄、品川祐など、新世代スターと実力派俳優が織り成すアンサンブルにも注目したい。

東京・六本木、廃校になった小学校で毎夜繰り広げられる格闘イベント「ガールズブラッド」。戦いの場である八角形の檻の中、少女たちは血を流し、肌を露わに戦い続ける。さらしで胸をきつく巻いた女嫌いの皐月、チャイナドレスに身を包んだ儚げな人妻の千夏、弱虫&人見知りのまゆ、SMクラブの女王様ミーコ…。彼女たちはなぜここでしか生きる実感を得られないのか? 自らのアイデンティティを探し、生きる場所を求め彷徨う、繊細な4人の女性たちの成長と恋を描いた、最も挑発的でロマンティックな青春映画だ。

今回は、ショーマンシップにあふれる心優しきSMクラブの女王様ミーコにふんする水崎綾女にインタビューを敢行した。





——台本を読んだ感想は?

水崎:やはり原作のままで映像化するのは難しい部分もあったので、実は台本をいただいたときに監督と4人のキャストみんなで集まって、ディスカッションを行ったんです。みんなで話し合いながら、このキャラクターはこういうセリフまわしの方がいいよね、というようなことを言い合ったので、みんなで一人のキャラクターを作るという感じ。たとえばわたしが演じるミーコなら、わたしの目線だけではなく、みんなの目線から「ミーコってこうだよね」というようなことを話し合ったりしました。それがとてもやりやすかったんです。話し合いのときは大変だったんですけど、実際に作品にクランクインしてしまえば、あっという間でしたね。

——ほかのキャストから「ミーコってこんな役だよね」と指摘されて、なるほどなと感心したことはありますか?

水崎:ミーコは一番原作に忠実な感じだったので、キャラクターがあまりぶれていなかったんです。むしろミーコを軸にして、皐月はこうだよね、まゆはこうだよね、といった関係性を探っていきました。だからある意味、『赤×ピンク』ってこういう作品だよねと決まったのは、ミーコがメインにいたからだと思います。そういった意味ではわたしはやりやすかったんですが、4人の中で一番大変だったのは千夏ですね。

——原作よりも一番膨らんだキャラクターですからね。

水崎:原作では皐月、ミーコ、まゆという3人のエピソードがあって、それから千夏も少し登場するといった感じでしたが、そうすると3人の話になってしまいます。でも今回は4人の話ということなので、千夏をどうしようかという話になったんです。千夏が魅力的でないと、皐月が惹かれない。そこが一番こだわったところだし、大変だったところですね。多田あさみちゃんが演じた千夏というキャラクターは、難しいキャラクターですけど、とても演じがいがある役ですから、そこの軸がしっかりしてないとみんながぶれてしまう。だからそこはみんなできちんとカバーしながら、監督とも話し合いながら、みんなと作りあげた作品です。

——ミーコというと、まゆ(小池里奈)との関係性がもう一つの軸になると思うのですが。

水崎:そうですね。皐月は千夏、ミーコはまゆ、とのペアという感じだったので。アクションけいこも、まゆとやることが多かったんです。小池里奈ちゃんはすごくかわいかったですね。撮影中はもちろんですが、撮影が終わってからもほっとけない感じでしたから。プライベートまでミーコとまゆの関係性が続いていた感じですね。

——「キューティーハニー THE LIVE」や「特命戦隊ゴーバスターズ」などでアクション経験はあると思うのですが、アクションへのこだわりは?

水崎:観てくれる人にカッコいいと思ってもらいたいということですね。とにかくアクションを自分でやりたい、というわけでもないんです。やはり作品として観たときに作品自体がいいものになった方が、自分でも得をしますし、そこが一番だと考えています。役者さんって自分でやりたがる人が多いらしいんですが、わたしは全然。むしろ「吹替えでお願いします」という感じなんですが、坂本監督は「水崎は出来るからやりましょう」と言ってくるんです(笑)。





——アクションはご自身でやられたと聞くと、かなりハードなことをやったのではないかと思うのですが。

そうですね。飛んでいくアクション以外はほとんどやりました。

——飛んでいくというのは?

水崎:相手に蹴られて、柵にダーンッとぶつかるアクションですね。ただ、おととしにやった「特命戦隊ゴーバスターズ」のときもそうだったんですが、スタントの人のテンポについていくのは大変でした。でも、そこについていけたときに生まれるものがあるので、毎日頑張ってついていって良かったなと思いました。

——坂本監督とは今回が初タッグですよね。

水崎:坂本監督もずっと仕事をしたいと言ってくださったみたいで。わたしも特撮をやっていた時代から坂本監督のうわさは聞いていました。この話をいただいたときも、坂本さんが監督だと聞いて、ウキウキ気分で引き受けました。

——実際に一緒に組んでみて、これぞ坂本演出だと思ったことはありましたか?

水崎:やはり女の子をカッコよく、きれいに撮るのがすごく上手な方だなと思いました。現場もすごく楽しくて。監督は基本的に怒らない人なんですよ。

——確かに坂本監督はいつもニコニコしていますね。

水崎:そうですね。そんな中から、自分のやりたいことを伝えていくというのが上手い人なので。ある意味怖い方なのかもしれないですが(笑)。

——のせ方が上手ということなんですかね。

水崎:そうなんです。とりあえず女の子を見たらすぐに「いいね!」という監督なので楽しかったですよ。自分が出ていないシーンでもモニターの近くにいて、次はどんな面白いことをするんだろうと楽しみにしていました。わたしは、楽しいんだけど、締めるところは締めるというやり方があっているので、そういうところが監督と波長が合ったのかなと思いました。

——役柄としてはSMの女王様ということですが、それを聞いたときは?

水崎:また来たなという感じはありました(笑)。今までにSMの女王様の役をやったことがあるわけではないんですが、絶対に派手な役がまわってくるなと思っていたので。今までも、心境などは別として、役柄としては自分と真逆なものが多かったんです。心境や悩みなんかはミーコに似ているんですけど、見かけがこれだから、派手に思われることが多いんですよ。まぁ、確かにまゆじゃないよなとは思いましたが(笑)。

——女王様の衣装に身を包んで、心境の変化はありました?

水崎:やはりSにならなきゃと思いましたね。SMの女王様って、逆にドMな人が多いと聞いたので、そういう面ではわたしに似ているのかなと思いました。MじゃなきゃSは出来ない。相手の痛みが分かるからこそ、相手がどうしてほしいか分かる。だからこそ、ここはこういう風な責め方をしようか、というように考えるんだと思います。本当のSだったら、相手のことを考えずに、ただただサディスティックに接するだけですからね。ただ、実際に人を殴るのは怖かったですけどね。

執筆者

壬生智裕

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