世界中に4,000万もの競技人口がいると言われている空手。実は沖縄がその発祥の地であることは意外と知られていない。沖縄固有の拳法「手(てぃ)」から発展し、大正時代に沖縄から本土へ、そして海外へと広く普及していった。「踊りのうまい男は、空手も強い」、「琉球最強の美人空手家を巡る“嫁取りバトル”」など、琉球空手に伝えられる伝説や史実を基に作られた、沖縄初&発のダンス×空手ハイブリットアクションエンタテイメント、それが『琉球バトルロワイアル』である。

主演は、アメリカ出身の天才ダンスパフォーマー、丞威(ジョーイ)。空手、アクロバットにも精通し、本作でも驚異的な身体能力を披露。今後が期待される俳優である。共演には、琉球空手の達人・八木明人、元K−1ファイター・子安慎悟ら、本物の空手家や格闘家が集結。圧巻の“拳”と“蹴り”を余すところなく披露する。また、「海賊戦隊ゴーカイジャー」のゴーカイピンク役で人気急上昇の小池唯がヒロインを演じ、小悪魔的な魅力で強者たちを翻弄している。







——ダンサーとして活躍しながら、役者としても活動の場を広げている丞威さんですが、『琉球バトルロワイアル』で本格的な映画初主演となりました。ご出演のきっかけを教えてください。

丞威さん(以下:丞):3年前の冬、本作のアクション監督・西冬彦さんと出会い、その1年後に、「『トーナメント』(2012)という映画に出演してみないか」と声をかけてもらいました。出演者は本物の格闘家ばかりで役者は僕くらい。お芝居はほとんどなく、ひたすら戦っているだけという映画でした。厳しかったけれど、とても楽しく、いい経験になりました。その作品への出演がきっかけで、『琉球バトルロワイアル』に声をかけて頂きました。

—— 脚本を読んだときの感想を教えてください。

丞:コメディ要素もあって、とても楽しそうな作品だと思いました。“嫁取りバトル”といった、琉球空手で実際にあったとされるエピソードなども台本の中に織り込まれていて、その史実を現代に置き換えたらきっとこんな感じなんだろうな、と。誰もが楽しめるコメディタッチの作風の中に、琉球空手にまつわるマニアックなストーリーも隠れている、その両方を楽しめる作品だと思いました。

—— 劇中では、究極のダンスを求めて放浪するダンサー役を演じられています。ご自身もダンサーとして活躍されてきましたが、ダンスを始めたきっかけを教えてください。

丞:両親の影響です。まだストリートダンスブームが訪れる前、ディスコが流行っていた時代から、両親は日本でダンスをやっていました。そして、二人でアメリカに渡り、ダンススタジオを経営していたのです。僕はその中で育ち、周りにはダンサーばかりで、気がついたときにはダンスをしていました。

—— 空手やアクロバット、テコンドーもされていたのですよね。

丞:母が空手をやっていて、後々に役に立つのではということで空手をやらせてもらいました。強くなるため、というのもありますが、アメリカで生まれ育った僕に日本の文化を覚えさせようという意図もあったようです。小学校に入ったくらいの、5、6歳から始めました。その後、アクロバットやテコンドーもやってみたいと思い、習いました。

—— 俳優を意識されたのはいつ頃からですか?

丞:父が大の映画好きで、家には膨大な数のDVDがありました。それで、小さい頃から、意味がわからないながらもよく映画を観ていたんです。アクション映画やカンフー映画が大好きでした。空手をやっていたので、芝居をしたら、自分もこんな感じになれるのではないか、というイメージが子どもの頃からありました。そして、今回、アクション映画で主演をつとめさせてもらうことになり、夢がひとつ叶ったような気持ちです。

—— 映画『琉球バトルロワイアル』は、ダンスと空手の融合をテーマにしています。丞威さんはダンスにも空手にも精通されていますが、二つのつながりを感じることはありましたか?

丞: ありました。例えば、小さい頃、空手の先生や師範に、“ダンスをやっているから成長が早いんだね”などと言われることがありました。当時はよく理解できなかったのですが、この作品への出演を機に、琉球舞踊の研究をしてみると、舞いの中に拳の握り方や空手の突き、受けなどといった空手の要素がふんだんに隠されていて、こんなに昔からダンスと空手は通じあってたのかと驚きました。いまのストリートダンスには、琉球舞踊のようには、格闘技の要素は入ってはいないようですが、元々は皆一緒なんだなと感じました。実際に身体の軸の取り方なども似ています。

—— 劇中で丞威さんがよくされていた、波のように流れる手の動きがあります。あの動きも空手に通じるものがあるのでしょうか?

丞:あれは、ダンスの一種である「タット」というものです。体をパズルのように動かします。その中に「フロウ」というものがあり、それを小さく手でやったのがあの動きです。僕の癖のようなもので、小さいときからひまがあると手を動かしていました。
空手は、その漢字の通り、「空」の「手」、つまり武器を持ちません。元々は「手(てぃ)」と呼ばれていました。琉球舞踊も手の動きがとても印象的です。それでバトルのときに用いる技や、モチーフとして使えないか、と、あの手の動きをアクション監督に提案してみたんです。ダンスのようでもあるし、空手の技のようでもあるし、いいね、ということで使うことになりました。

—— 沖縄の剛柔流空手道の達人・八木明人さんや、正道会館の子安慎悟さんなど本物の空手家と戦います。いかがでしたか?

丞:怖かったですね。僕も空手はやってきましたが、いつも歳の近い人たちとの試合でした。しかし、格の違う人と試合をするとなると、“動物は自分より強いものは襲わない”という本能が出てきてしまい、最初は構えただけでもとても怖かったです。
でも主演をつとめさせてもらっている限り、倒さなければいけないので、強い人たちと戦うために、どうしたらいいか、とにかく考えました。彼らを倒せるだけの説得力のある技や構え方、また、指の動き方や目力などに至るまで、徹底的に研究しました。どうリアルに攻めていくか、一発目はどうするのか、向こうから蹴るのかこちらが蹴るのか、自分は構えるのか構えないのか。事前にしっかりアクションの振りを考える必要がありました。
子安さんは一度組んでみると感覚がつかめてきたのですが、八木さんの場合は難しかったです。八木さんの空手と僕の踊り、二人の良さを活かしながらどうしたらいいものが作れるのか、時間がかりました。

—— 映画が出来上がってご覧になった印象はいかがでしたか。

丞:想像以上の出来でした。楽しくてかっこよくて。音楽もかっこよく、この映画に関わることができてよかったと思いました。年齢を問わず誰でも気楽に楽しめる作品になっていると思います。この映画をきっかけに、若い人たちが琉球舞踊や空手に関心を持ってくれたらいいなと思いました。

—— 今後の目標を教えてください。

丞:アクションではない役もやってみたいですね。いろいろな役をやってみたいです。いつかは生まれ育ったロスに戻って、母国語である英語を使って、ハリウッドのアクションスターとして活躍したいです。もっともっといけると思っています。

執筆者

Yasuhiro Togawa

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=51793