悲惨な家庭環境のもとで虐げられて育った少女の希望への道のりを描いた『プレシャス』で全米の映画賞レースに新風を吹き込み、作品賞と監督賞を含むアカデミー賞6部門にノミネート(うち助演女優賞、脚色賞を受賞)。この一作でアメリカン・インディーズの新たな才能として脚光を浴びたリー・ダニエルズ監督が、ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザックというそうそうたる豪華キャストを迎え、待望の新作を完成させた。

主演のザック・エフロンにインタビュー。

$red Q:原作を読んだ時はどのように感じましたか? $
ザック:衝撃を受けたよ、強烈な作品だ。青年の旅のようなもので、寄り道したり 逆行したり暗闇に入ったりするんだ。最後まで何が起こるのか、何についての物語なのか理解できなかったよ。とにかく衝撃を受けたんだ、すごくね。でも映画の方は結末がすごい。完全に打ちのめされたよ。



Q:今回の役はいままでのイメージを覆す役でしたね。役者として成長されたと思いますが、演じた感想はいかがでしたか?
ザック:すばらしい経験だった。夢みたいだったよ、挑戦でもあったしね。現場にはクリエーティブな人が集まっていて一つの目標を達成するために夢中になっていた。共演者も監督のリーもすばらしかった、みんな最高だったよ。この映画の大きなテーマは、大人になるということだ。ジャックは学ぶんだよ。大切な人たちから人生を教わり教訓を得る。僕自身はまだ分かってないこともある、役者業も理解しきれてないしね。今回の撮影では、共演者たちに助けられたよ。

Q:役作りはどのように進めましたか?
ザック:一番大変だったのは、舞台となっている時代と場所の感覚をつかむことだった。1969年のフロリダについて、言葉のアクセントとかどんな時代だったかを勉強した。でもリーからは「心を開いて来てくれ」と言われただけだった。「エゴを捨てて参加してくれ」とね。

Q:ニコール・キッドマンとのラブシーンは緊張しましたか?
ザック:ラブシーンはいつだって緊張するよ。演じる役者だけじゃなく撮影スタッフもね。でも撮影が始まってしまえば、ほかのシーンと同じだよ。それに簡単だったよ、ニコールにキスするだけだ。

Q:この物語はミステリーではありますが、さまざまな要素が詰め込まれています。最初に脚本を読んだ時はどのように思いましたか?
ザック:把握しきれないほどたくさんの要素が詰まっているよね。最初に脚本を読んだ時はよく分からなかったけど、すごく探求的で人物が詳細に描かれているんだ。この映画は、何か一つの要素に限定することはできないよ。多くの質問を投げかけているし、多くの疑問を生じさせている。そういう意味で、考えさせられる映画だよ。刺激を与えてくれる。

Q:リー・ダニエルズ監督はどんな方ですか?
ザック:彼からは刺激を受けたんだ、パワーをもらえるよ。役者が演じやすいような環境も作り出してくれた。彼にはエゴが全くないんだ、そしていつもふざけている。嘘じゃないよ、本当にそうなんだ。僕たちをリラックスさせようと努めてくれる。無欲で愛に満ちた人だと思ったよ。彼と仕事ができて光栄だよ。リーは本質を見る目を持っている。だから登場人物がとてもリアルなんだ。それに、人間関係を築くのにも長けているよ。会話しただけで通じ合えるんだ。優れた洞察力の持ち主で、人のことをよく理解できる。だからいい監督なんだ。それにリーはためらわずに何事にも挑戦する脚本だって気に入らなければ流れに任せるんだよ、「ここはアドリブで」ってね。

Q:泳ぎは得意ですか?
ザック:まあ、下手ではないよ。

Q:泳ぐシーンに備えて何か準備しましたか?
ザック:あのシーンは予定外で急に撮影することになったんだ。だから準備はできなかった。気付いたらプールがあったよ。急に泳ぐことになるなんて思いもしなかった。

Q:撮影はどのような感じで進みました? 大変でしたか?
ザック:現場では常に全員が動いていたよ。休憩時間がないんだ。トレーラーもなかったけど、あれが純粋な映画作りだね、全員が一致団結するんだ。まさにこれが映画作りだよ。

Q:あなたが演じたジャックとマシュー・マコノヒーの演じた兄ウォードの関係は?
ザック:ウォードとジャックの関係は少し複雑に思えるかもしれない。離れ離れになっていた兄弟が、久しぶりに再会を果たすんだ。感動的な再会と言えるね。兄弟の仲はよくて、お互いに自慢し合えるような関係だと思った。でも、リーは「そんな関係じゃない」と。突然戻ってきた兄に対して、ジャックは戸惑いがあるんだ。この映画が特別なのは、それぞれの関係が現実的だからだよ。軽くて楽しく見えるシーンが暗いシーンに通じていて闇が浮かび上がる。映画が現実にしっかり根付いているんだ。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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