ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された作品が次々公開中、または公開待機中となっている。関係者のコメントと共に紹介したい。

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■ 『クソすばらしいこの世界』
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何かと自粛気味の映画が多い中、“女性監督による”という冠を敢えて付ける必要があるのか?と考えさせられる程、堂々たるスラッシャー映画『クソすばらしいこの世界』。

ゆうばりファンタでお披露目後、現在ポレポレ東中野にて公開中だ。日程は6/8〜6/28の3週間限定レイトショーとなっている。

日本語しか話さない日本人留学生グループのキャンプに招かれた韓国人留学生。ロサンゼルスの田舎町でホワイトトラッシュの殺人鬼ブラザーズの狩場に足を踏み入れた彼女達は、逃げ場のない恐怖の一夜を体験する…!

ユーロ#━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
キングレコードプロデューサー・山口幸彦さん
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企画は朝倉加葉子監督とキングレコードプロデューサーのホラー映画談義の中でスタートしたという。

「元々、女殺人鬼が暴れまくるホラーをやろうと思っていました。
それが一昨年ゆうばり映画祭でキム・コッビさんにあって一目惚れ。
主役はキム・コッビさんということで、アメリカ留学生たちの話になり大きく設定が変わりました」

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韓国人留学生アジュン役/キム・コッビさん
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『息もできない』に代表される高い演技力。飾らない人柄とその笑顔で多くの映画関係者やファンを惹きつけるキム・コッビさん。

ゆうばりファンタでは常本琢招監督にも見初められ、大阪でCO2助成作品として制作された『蒼白者』にも出演。現在ユーロスペースにて、同じく6/8〜6/28の日程で公開中となっている。

『クソすばらしいこの世界』での韓国人留学生アジュン役に関しては、

「複雑な役柄でもあるので不安でしたが、女優として挑戦したいという気持ちがありました」

「役作りするときは、自分の中にある悪魔的な部分を出して近づけるようにしています」
とコメントした。

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日本人留学生エリカ役/大畠奈菜子さん
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撮影は、カリフォルニアのロサンゼルス市内から車で約2時間程の標高約5000メートルの山にあるキャビンで行われた。スタッフとキャストは、ナイトシーンの撮影が多く春にも係らずその寒さに悩まされた。血に塗れたラストシーンにファンタジックに雪が降り積もっているのが印象的だ。

日本人留学生のエリカを演じた大畠奈菜子さんは、そのアクションスキルを本編で十分に発揮している。撮影時は寒さとの闘いだったと振り返る。

「普通は雪が降らない3、4月の撮影だったのですが、あの時雪が降ったのは何だったんだろうって思いますね。私たちが降らせたものかも(笑)」

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朝倉加葉子監督
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朝倉加葉子監督は『怪談新耳袋 百物語』(BS-TBS)の『空き家』でデビュー。新作『HIDE and SEEK』(13)はカンヌ映画祭マーケット部門ショートフィルムコーナー2013に出品の快挙となった。映画が好きでホラーも好き。ホラーで好きなのは『悪魔のいけにえ』と語る。朝倉監督の目指すところはホラー専門の監督なのだろうか?

「限定している訳ではないですけど、ホラー好きなのでもっと撮りたいと思っています。
分かりやすいジャンル分けでなくても、映画はいろいろな要素が複合されて行くものだと思います。サスペンスだけどコメディ、ホラーだけどファンタジー、人間ドラマだけどSF、といったようにミックスされている方が面白いと思うんです。色々な映画が撮りたいですね」
「お客さんは色々な解釈で観てくださいますね。意図は汲み取ってくれた上で、自分の方に引き寄せて頂いての感想が嬉しかったです」

撮影はアメリカに在住の日本人とアメリカ人スタッフによって行われた。キム・コッビさん演じる韓国人留学生アジュンと英語で話そうとしない、または理解できない日本人留学生間の、ディスコミュニケーションがきちんと描かれている点がこの映画の味わいを複雑にしている。撮影現場のコミュニケーションについては、
「英語ができない事を前提に、みなさん優しくしてくださいました。どちらもできる方がたくさんいたので、色んな局面で通訳に入ってもらったお陰で、現場はスムーズに進みました」
言語を越えたコミュニケーションには、お互いの気遣いが不可欠であることを実感したとのことだ。

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日本人留学生マサノリ役/北村昭博さん
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北村昭博さんは、ハリウッドでTVドラマHEROES/ヒーローズ(09)や映画『ムカデ人間』(11)に出演。日本では『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)、本作『クソすばらしいこの世界』に出演と国境を越えて活躍中だ。

「朝倉さんはホラー映画界のニュースター。普通は撮影していると何となく仕上がりが予想できるんですけど、朝倉さんの才能に完成版を観て驚きましたね。スタイリッシュだし、音楽の使い方、編集のセンス、サスペンスの描写、エスプリが効いているし。僕自身ホラーに出演していて、色々観てきて結構辛口な方ですけど、この映画は出演できて幸せです。初の長編監督作でアメリカで撮影なんて、他の監督が嫉妬する程のインパクトのある作品になったと思います」

「好きなシーンは、キャビンで英語できないのに“YO!YO!”ばかり言っているところ。“殺してくれ!そこを観たい!”と思わせますね(笑)。遊んでばかりいる留学生を遊学生って言うんですけど、日本人遊学生の嫌なところが上手く出て、観ていて面白かったですね」

“遊学生”たちがどんな運命を辿るかは、ぜひ劇場で楽しんでいただきたい。

執筆者

デューイ松田

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■『クソすばらしいこの世界』公式サイト
■ポレポレ東中野

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