個性的過ぎる容姿と何度自殺を図っても死ねない超人的な体を持つブ夫(小出志浩)。どこかにいるはずの自分の片割れを求めて嘆きの日々を送っていたが、優しく可愛い女の子(増田久美子)との出会いで愛に向かって猪突猛進を始める。
一方、幼い頃から暗殺者として育てられ、殺すことが他人との唯一のコミュニケーションである殺し屋(児玉拓郎)。超人・ブ夫に生死を賭けた愛を見出した戦いを挑む。。。

これはありきたりな男女のLOVE STORYではない。2006年にカナダより来日、園子温監督の勧めで映画を撮り始めたというアレックス・パイエ監督。2010年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭ではサスペンス映画『カルマ』を上映、本作が2作目となる。『愛』とは何かを、対照的な組み合わせのバランスというアレックス監督独特のシニカルな視点で見せた作品。ZERO’Sアクションチームによるアクション、前作に引き続き西村映造が手がけるスプラッターシーンも見所となっている。

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現在、アレックス監督は第3作目となる 『まりちゃん頑張れ!』を制作。まりちゃんの夢はお金持ちになること。さまざまなビジネスに挑戦する度にライバルが出現。ビジネスは頓挫、すぐにドロップアウトしてしまうまりちゃん。果たしてまりちゃんの夢はかなうのか!?

『まりちゃん頑張れ!』
主演:清瀬やえこ(まり役)、高山友里(金田さん役)
出演:仁科貴、三元雅芸、児玉拓郎、田村研作、藤澤信泰、松村マサル子、田中敬司、紅井ユキヒデ
近日Web配信予定、全8回のコメディドラマとなっている。




















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園子温監督との出会い
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——まずカナダから来日したきっかけを教えてください。

アレックス:カナダで武道をやっていたから。日本に来て英会話の仕事をやって、園子温さんは俺のスチューデントだった。それで、すぐに友達になった。『愛のむきだし』を撮る1ヶ月前だったかな。英会話で会ってすぐ園さんに「俺の映画に出て」って言われたね。最初、映画は興味がなかったし、漫画を描いていた。毎日園さんとプライベートレッスンをしていると、ある日「これで映画撮って」ってカメラをプレゼントされた。出来たのが去年ゆうばりファンタで上映した『カルマ』でサスペンス・ムービー。その前に5分くらいのショートムービーはたくさん撮った。

——今回はユニークな作品ですけど、主演の小出志向さんの存在があったからできた作品ですか。それとも先にストーリーがあった?

アレックス:最初は『カルマ』にも出ている藤澤信泰(フジサワノブヤス)がブ夫の役だった。でも園さんに、「ブ夫の役にぴったりの知り合いがいる」って紹介されたのがZERO’Sの小出。それで藤澤には新しい役を作った。

——ストーリーはどう考えていったんですか?

アレックス:最初、『You+Me=Love』のテーマ曲になったVideo Dayの曲を聴いた。その曲を聴いたときに、すぐにストーリーが思いついて、Video Dayに映画にしたいとオファーすると、OKが出たから、スクリプトを書いた。俺は、いついつまでに書かなきゃとかそういうのは考えずに、直感で出てきたものをサクサク書いていく。ベーシックなアイディアは“陰と陽”。逆説的な。

——男と女であったり。

アレックス:頭いいとバカ。ゲイとクレイジーなキャラクターがいるけどみんな違う。バランスだね。

——主演の小出さんと児玉さんは、アレックス監督の演出はいかがでしたか?

児玉:坂口拓さんに「おもしろい外国人がいる」って紹介していただいて。アレックスは、現場でははっきり言うところは言う。しょっぱなから小出さんに「ヘタ!」って(笑)。

小出:それくらい言ってくれた方がこっちもやりやすい。切り替えも出来るし。

アレックス:コミュニケーションの問題はあるね! でも『カルマ』の時よりも日本語はちょっと上手くなったから。

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いい俳優は多いけど、いい女優は少ない
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——今回はヒロインが『SRサイタマノラッパー2』のビヨンセこと増田久美子さんですね。

アレックス:去年ゆうばりでいい友だちになった。いい俳優はいっぱいいるけど、いい女優は少ない。可愛い女の子はいっぱいいるけど、才能の方が大事。久美子ちゃんは上手い。ナチュラル。だからオファーした。

——他のキャストでは亜紗美さん、紅井ユキヒデさんが出てらっしゃいますね。

アレックス:亜紗美さんの方から出たいって言ってくれた。紅井さんも。はじめは亜紗美さんがヒロインだったけど時間がなかった。亜紗美さんのためにリベンジャーの役を作った。

——現場で亜紗美さんのアクションはいかがでしたか。

アレックス:すごくイイ! 撮影の1ヶ月前に練習してずっと会ってなかったけど、全部覚えてくれていた。

児玉:練習1回でね。

アレックス:ネ(笑)?

——なんですか、その笑いは。小出さん何かあったんですか。

小出:グダグダだったんです、自分。撮影日に頭が真っ白になって手を忘れちゃって。アドリブのアクションばかりになって、マジでへこみました。

アレックス:久美子ちゃんと紅井さん、亜紗美さんもNGあまりなかったでしょ。上手かったから。小出は台詞は全然いいよ。スピーキングはノープロブレムだった。

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小出さん復活の陰に坂口拓監督
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——小出さんはアクションを始めて何年目ですか。

小出:元々昔、JAC(ジャパンアクションクラブ)だったんですけど、アクションから一時離れた期間があったんですよ。

アレックス:それホント?

小出:ホント。坂口拓と同期で、10年以上の付き合いです。JAC辞めて一旦故郷の名古屋に帰ったんですけど、又東京に出て来て。

——復活したきっかけは?

小出:拓を見て刺激を受けたんです。拓と電話で「又やるよ」って話して。一番最初に出たのが『エリートヤンキー三郎』のハンマーヘッドのショートフィルム。主役は拓と斉藤工くんです。自分が準主役で、ボコボコにやられるっていう。その後数々の拓の映画に出て、『極道兵器』にも出てます。リアルアクションでお腹を無茶無茶に殴られるシーンがあって。

アレックス:顔分かんないよ。フードしてて滅茶苦茶殴られる。背ちっちゃい人。

小出:体型で分かります。叫び声に本当に地声が出てしまったくらいで。ホント、痛かったです。一応パッドはしてるんですけど、パンチ、入ってます。

——『極道兵器』は小出さんの素の悲鳴にも注目ですね(笑)。

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スプラッターとコメディ命・紅井ユキヒデさん
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——児玉さんは紅井さんと親子の役だったんですけど、現場ではいかがでしたか。

児玉:紅井さんは優しかったですね。芝居も上手ですし。経験が違うね。

アレックス:すごいプロでね。紅井さんと亜紗美さん。この2人のレベルは高いよ!

——どのシーンでそれを一番感じましたか。

児玉:紅井さんを●●時。リハーサルではやりすぎなんじゃないかと思ったんですけど、実際メイクしてやってみると。

アレックス:超コメディね!

児玉:ちゃんと作品の意図も分かってらっしゃるし、こちらを、相手を引き込む力があって、こちらも感化されましたね。

アレックス:紅井さんは面白い役だけする。オーディションでも役が面白くなかったら仕事したくない。スプラッターとコメディだけ。スシタイフーンだけってくらい。シリアスでつまんない役はやりたくない。

——そこまでスプラッターとコメディにこだわってらっしゃるんですね。

アレックス:うん。ファニーガイね(笑)。去年ゆうばりで会ったときはジャッキー・チェンの話とかずっとしてて。カンフー映画大好きなんだ、この人は。だからぴったりの役だったね。

児玉:元ネタが全部分かって完璧にコピーしてたね。『少林寺三十六房』のアクションだよね。

アレックス:本当はアクションできないけど、うまいねー。

——仁科貴さんがワンシーン出演されてましたが、オファーのきっかけは。

アレックス:紅井さんから「いい役者がいる」って紹介されて、やくざの組長役をお願いした。仁科さんのことは知らなかったし、仁科さんのお父さんが有名な俳優だったことも知らなかった。仁科さんはその役のために、何回も北野武さんの『アウトレイジ』を見たと言っていた。仁科さんはとても良かったよ、演技だけではなく、とてもいい人。
田村研作さんもいいよ。『青春墓場』のヤクザのボス。『カルマ』にも出てるよ。

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ピカソも言ってる。常に新作がベスト!
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——『カルマ』拝見できてないんですよ。

アレックス:見なくていいよー。

——アレックスさん的には『You+Me=Love』の方が好き?

アレックス:こっちの方が好き(笑)。

児玉:You make another movies, you say that again?

アレックス:ハイ!新しい映画撮ったら絶対これより面白いから、これは見なくていい。

——過去の作品はどんどん隅に追いやられる運命にあるんですね。

アレックス:Picasso said, my best work is my next work.

——ではこの映画でアレックスさんが描きたかった「愛」とは何ですか。

アレックス:ん? Not really.「バランス」。「陰」と「陽」。愛はちょっと関係ない。この映画では。

——タイトルで、しかもイコールなのに??(笑)

アレックス:一番ディープな意味としては、愛は全然関係ない。最後のシーンは男と女が一緒に歩いている。実はこれはメタファー。女の子は政府、ガバメント。男はただの人。彼女は人々をコントロールする。彼は奴隷。

——搾取する方とされる方ですか(笑)

アレックス:明確なのは彼女が彼の後ろからコントロールしていて、彼はペットのように見えるけどお互いにハッピー。

児玉:でもどちらもいないと成立しない。

アレックス:奴隷プラス愛。デイープだよ!!!(笑)血もメタファーだよ。

——何のメタファー?

アレックス:Love。愛は痛いでしょ。ペイン。この血はLOVEだよ!

執筆者

デューイ松田

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