【ポーラーサークル】とは、映画監督・蔭山周監督が発起人となって、映画の枠にとらわれない人選で注目の監督を招集した映画のユニットだ。ポーラーサークルとしては2009年以来2度目の登場となる今回は、<未知なる生物>をお題に、実にバラエティ豊かな監督と作品が出揃った。

さて、ポーラーサークル代表の蔭山周監督と“マリコローズ”こと小林でび監督のインタビュー後半は、“防空頭巾女子”から8ミリ映像の加工方法、果ては『手書きのポスター10枚でイベントを成功させる方法』にまで及び、ゆうばりファンタのみならず、イベントや上映で集客を目論む人には要注目の内容に。

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ゆうばりファンタでの好評を受けて、9/24(土)24時より<ゆうばりロックフェスティバル・イン・トーキョー>『ポーラーサークル〜未知なる生物オムニバス&ゆうばりロックフェスティバルin東京』が開催される。
興味はあってもなかなかゆうばりまで足を運べない方は必見。ぜひゆうばりファンタならではのコラボと、参加しなければ分からないオールナイトの高揚感を存分に味わっていただきたい。
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「防空頭巾女子」ブーム到来か?
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——蔭山さんの『ウィーウィルの蜜のジュース』は、どういう発想からできたんですか。

蔭山:元々千木良さんの原作です。千木良さんが読んでいた本の話で、「戦時中の女の子達は、意外と今と変わらないらしいよ」って言い出して。

——どういうところが変わらないんですか。

蔭山:現在の僕らって、ある日交通事故で突然死ぬかもしれないのに、平気で暮らしているじゃないですか。戦時中の女の子達も、死ぬかもしれない状況におかれながら、恋したり友達同士で本を貸し借りしたり、キャッキャやっているところが変わらない。戦時中っていう異空間の中で女の子の初恋を描いたら面白いなって。僕は初恋っていうのは妄想だと思っていて(笑)。ようするにキムラタクヤとか——例えが古いね(笑)。ずっと好きでいられるのは本人に会わないからなんですよ。

もっと身近で僕が高校の時に聞いたイイ話があって。初恋の人と初めてデートに成功して、カウンターでお寿司を食べに行って、ふと見たら隣にいる女の子が寿司をぱくっと食った瞬間に恋が醒めたと。リアルな口とか、物を食べる行為って憧れだった妄想が現実になる。初恋が醒める瞬間を前から描きたかったんですけど、こっ恥ずかしくてできなかった。でもこれならできるなって。

捕虜がずっと縛られていて、女の子が一方的に恋をするんですけど、それは十字架に貼り付けられたキリスト像みたいにリアリティがない。女から見ると男って一緒に生活すると凄い汚いと思うんですけど、うなだれてじっとしているから神聖化していっちゃうんですよ。

——それは良く分かります(笑)。では“ウィーウィル”はどうやって発想したんですか。

蔭山:子供たちを描くと僕はどうしても大人を汚く描いてしまうんですけど、この戦争は、ウィーウィルが金になるんですよ。要するにドラッグで、天国にあった花が何を間違えたかこの世に来たものだから、蜜を吸うとまさに天国気分な訳です。そういう黄泉の国に咲いていた花を奪い合うという設定です。

——主役の溝口まりもさんはどうやって選ばれたんですか。

蔭山:ネットです。1枚の写真で一目惚れしましたね!

でび:蔭山さん、防空頭巾女子!(笑)

蔭山:これはねー!美術監督が江津匡士さんで美術家としても有名な、奥秀太郎監督の美術をやっていた方で、今回オファーしたら凄い乗ってくださって。モンペはこう、シャツはこうとか、デザインに燃え出したんですね。僕、人のせいにし始めてますけど(笑)。女の子の防空頭巾萌えはヒゲ女子の魅力と近いものがあって、モンペや防空頭巾といった地味な格好をする方が、今時の女の子より可愛いって。女の子のキャスティングの一番の条件は、今時っぽくない感じで。

——ネットで写真を探す時にはやはり防空頭巾が似合うような(笑)。

蔭山:本当に大変だったんですよ。溝口さんは今は原宿系のモデルで、めちゃめちゃ今時っぽくなってるけど、撮影の時は14歳だったからねー。

——『ウィーウィルの蜜のジュース』は8ミリで撮影したそうですが、何故8ミリだったんですか。その後の工程についても教えてください。

蔭山:千木良さんの発想は、日常と違う、童話のようなどの時代・どの場所か分からない世界。8ミリで撮ると現実感がなくなって、ノスタルジックな要素が加わるんです。
処理に関しては、フィルムをビデオに落とす時に業者に頼むんではなくて、自分の部屋の壁に10〜15cmの幅に小さく映写して、それをビデオカメラでズームして撮るんです。色を2回狂わせることをやっていて、照明に対応したタングステンフィルムで昼間に撮影すると真っ青な状態に写るんですよ。映写機は人工の電球の光ですけど、それをビデオカメラで撮る時に、色設定を太陽光にすると真っ黄色になる。青いものが黄色になると人の肌の色がちゃんと出るんです。ビデオで撮影する時にカットごとに明るさやフレーミングを調整したりします。PCでエフェクトをかけるより上品な仕上がりになって、独特の色合いが出るんです。元々は『モロヘイヤWAR』を撮った時に友達に見せるために8ミリを映写してビデオで撮影したのが始まりで、その色合いにぐっ時て10年くらいこの方法。8ミリは音が悪くなるんで、ビデオにすることでクリアな音になるのもメリットですね。

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手書きポスター10枚でイベントを成功させる方法
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——ゆうばりでイベント上映となりましたがいかがでしたでしょうか。

蔭山:毎度のことですけど、作る側と観る側の距離が凄い近いですし、楽しいですね。直接感想が伝わってくる。今回はみんな宣伝を頑張ってくれたんですよ。ポーラーサークルでゆうばりに来たのが30人はいるんでチラシを配ったり。でびさんのポスターの貼り方が凄い良くて、本書いたらゆうばりで売れるんじゃないかと(笑)

——何ですかそれ!?こっそり教えてください。

でび:ポスターを貼るといいゾーンっていうのがあるんです。そのゾーンの中でも特に効果的なところがあって。今ポスターの数って凄いじゃないですか。あれはまだ誰もやってない頃に僕や何人かが始めたポスター合戦だったんですよ。なのでポスターとはどうあるべきかを伝授させていただきます(笑)。

——広まり過ぎて来年からでびさんが困らない程度にお願いします(笑)。

でび:バスを待つ場所とか、上映を待って列ができる場所というような、人が暇になるところに貼るべし!あと、人って視点が動いて生活しているんですけど、視点が止まる瞬間っていうのがあるんですよ。例えば階段を登る時、視点は先の方を止まって見ている。そこがポスターを貼る場所として最適。

——踊り場ですか。

でび:そうそう。人が立ち止まらざるを得ないところ。視点が止まらざるを得ないところにポスターを貼りましょう、と。だから今、たくさんポスターを貼っている人がいるんですけど、僕とは全然違う流派。

——効果としてはどうかってことなんですね。

でび:あれはね、お金がかかるんです!(笑)。

蔭山:手書きポスターたった10枚だけなんですよ。それでどれだけ効果を出すかって作戦で。

——『手書きポスター10枚でイベントを成功させる方法』って本を出しますか(笑)。

蔭山:いいねー!(笑)

でび:その考え方って実は映画を監督するのと同じなんですね。画面の中でお客の視点はどこにいくのか。その視点が次は何処に動くか。もしくは動かないかってことを全部把握していれば、お客にストーリーをきちんと伝えていくことが出来るというのと同じなんです。

——素晴らしい!いいお話を聞かせていただきました。

蔭山:そんなポスター作戦と、お客さんにチラシを手配りしてたんですけど、「これ僕がやってるんで」って作者の顔を見てもらうのはデカイですよね。お客さんもどっちに行くか迷っている時に、“あの人頑張ってたなー”っ感じで来てくれたから、あの集客はスタッフ全員のおかげですね。

執筆者

デューイ松田

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ポーラーサークル公式HP
小林でび監督公式HP