7/23より銀座シネパトスにて、絶賛開催中のSUSHI TYPHOON(スシタイフーン)まつり。
4週間限定上映、かつ4作品一挙投入のラインナップは、西村喜廣監督『ヘルドライバー』、千葉誠治監督『ANV/エイリアンVS忍者』、山口雄大監督・坂口拓監督『極道兵器』、山口雄大監督『デッドボール』。“世界の映画ファンが観たいと思う日本映画を提供する”“アクション、バイオレンス、ホラー、コメディそしてLOVE!”というSUSHI TYPHOONのコンセプトを血飛沫で実証する。

毎日怒涛のスペシャルトークイベントが組まれ、8/19の東京上映終了後は、大阪/テアトル梅田(8/20〜9/16)、福岡/KBCシネマ(8月公開予定)、愛知/シネマスコーレ(9/17〜9/30)、北海道/ディノスシネマズ札幌劇場(9月公開予定)、京都/京都みなみ会館(10月公開予定)とロードショー公開が決定している。

そんなSUSHI TYPHOONレーベル作品の中から、ゾンビ虐殺まつり『ヘルドライバー』の壮絶な制作現場、映画制作の現状そしてこれからについて、西村喜廣監督とSUSHI TYPHOON作品のVFXスーパーバイザーを務める鹿角剛司さんのインタビューを紹介します!

<右画像:(C)2010 SUSHI TYPHOON/NIKKATSU>












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■■日本政府はどう動く???■■
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——2年前プチョン国際ファンタスティック映画祭で『吸血少女VS少女フランケン』のインタビューをさせていただいたとき、すでに『ヘルドライバー』のお話をされていましたよね。

西村:したした!脚本だけですでに2年かかってるから。

——『ヘルドライバー』は『東京残酷警察』のように社会的要素に親子の確執も加わっていますが、どういったところから発想されましたか。

西村:女子高生が車に乗ってゾンビをひき殺して行く話を撮れ!とプロデューサーの千葉さんから言われたんです。日本でかー。日本火葬じゃねえかよ!と(笑)。今まで日本のゾンビものって何故かわかんないけど「いる」んだよね。俺も特殊メイクで関わった作品でもそういうのが結構多くて。それを避けたかったので、日本の半分が一瞬でゾンビ化して、そこに壁を作って分断すると日本政府はゾンビ化した人達をどう扱うんだろうって。女子高生がヒロインっていうのは決まっていたから、この話の元凶がお母さんって所に辿り着くまでを目標として立てたんです。

——今回は共同脚本で渚大地さんが参加されてますね。

西村:渚大地は学生で17歳の時からうちのアトリエに来て手伝ってくれたんだけど、造形のセンスが全くなくて。何やりたいんだって聞いたら「俺脚本やりたいっす」って。それで一緒にやって来たんだよ。

鹿角:西村さん、脚本があっても結局絵コンテで変えるからね。現場にもフツーの脚本の他にちゃんと製本された絵コンテ台本があって、むしろみんな絵コンテの方を見てるよね。

西村:俺も開いたことないもん。持ってないし(笑)。

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■■過酷!壮絶!制作の裏側■■
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——壮絶なメイキングを拝見しましたが、制作について教えてください。

西村:予算はCGと造形にまずお金をかけるってスタンスで。CG費20%位、造形費20%位にして。今までは監督料は別にあったけど監督費も含む造形費って大雑把なくくりになって。残りの約60%で2週間の撮影。どんなに雨が降っても、どんなに寒くてもやれって条件でやったんですよ。

鹿角:造形費とCG費にお金をかけるって言っても、やってる方からするとまるきり足りないんだけどね(笑)。CGは820〜830カットあったから。とにかく現場は物凄いペースで撮らないといけないんで。ややこしい仕掛けは極力避けるようにしたね。

普通のチェーンソー、ヒロインのキカの日本刀チェーンソー、警察官のヘルメットに付いてるチェーンソーとかたくさん出てくるでしょう。実際に回すと仕掛けで時間がかかるからCGで回したり、銃撃戦の弾着もいちいち引き込んでる時間がないので全部CGで出したり。頭部爆発や血は西造の売りとしてやりますが、それでも限界があるから、爆発をCGでやったり。

撮影していたら夜のシーンなのに結局夜が明け、昼間になっちゃって(笑)。最初はカラコレ(色調整)で何とかするって言ってたんですけど西村さんが最後の最後に「やっぱり無理!夜にならねーっ!」て。あと20カット夜にしてくれって急に振られたもんだから物凄い数になって。大変でしたね。

西村:鹿角さんが最初に“どんな映画でもCGは600カットくらいで、それ以上のものは俺も見たことがないって話をしてたんですよ。

鹿角:フルCGでもない限り『SPACE BATTLESHIP ヤマト』でも約700カットらしいから。

——それだけのカット数をどれくらいの日程で仕上げたんですか。

鹿角:シッチェス・カタロニア国際映画祭と9月のテキサスの映画祭に間に合わせようとして。結局2ヶ月でやったんですけど予算はないから1カットの費用が物凄い安くなって外部の会社に振れなくなったんです。

——中でやるしかないと。

鹿角:でもうちがスシタイフーンの『電人ザボーガー』と『極道兵器』も同時進行だったから6、7人くらいでやらないといけなくなって。現場の撮影が一日290カットって言ってたけど、僕らも1日10カットはOKカットを出さないといけない。現場はしっちゃかめっちゃかでしたね。全部がリアルでなくても面白いからいいかって許してくれる部分と、CGだと分かるとしらける場面があるので、バランスを取りながらやりました。ゾンビの●●●のシーンとかCG的には一番力を入れたところで。

西村:あそこは凄くよく出来てますよね。後はゾンビカーが出てくるカーチェイスのシーンはまるごとグリーンバック。ゾンビカー、一切走らないからね(笑)。最初は走ったらキックボードになり、それからチャリになり、オートバイから車にしたかった。乗り物の進化(笑)。

鹿角:それは無理ですって(笑)。造形が間に合わない。全部グリーンバックであそこはいかに膨大なカット数を成立させるかが大きな命題で、考えるのが大変でしたね。グリーンバックも2週間の撮影中4日しかなかったから、1日200〜150カットとか。

——驚いたのは、グリーンバックを現場に置いて撮影したり、同時にメイクしながら写らない所は省略してらっしゃいましたね。

西村:あれば俺特有だと思うよ。特殊メイクってみんな完成したものを見せようとするけど、俺は写らない所はいいと思っていて、その割り切り方だよね。そのぐらいのスピード感じゃないと出来ない。

鹿角:でもホントに雨が降っているところでグリーンバック立てたりするから、抜けないって!(笑)

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■■「グリグリグリ」にしいなさんは抵抗しなかった(笑)■■
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——ヒロインの原裕美子さんは今回初めての起用でしたね。

西村:役者ではなくて、グラビアアイドルでもなく、本当のショーのモデル。そういう人の立ち姿が大好きなんだよね。しいなさんもそう。今回何回もオーディションをしたけど、結局最初に来た原さんに決めてた。

鹿角:プロフィールについてた写真の目の印象がよかった。メイキングを見たら、キカって役とまるで違うゆるキャラだから、人生で一度も叫んだことがないんじゃないかってくらい。

——絶叫演技に開眼されたかもしれないですね。キカの母親役のしいなえいひさんは狂った演技で映画の要として素敵でした。

西村:今回は最初から最後まで狂ってる。あれは『東京残酷警察』があったからオファーできましたね。心臓をグリグリするシーンは、『オーディション』のキリキリキリーで、しいなさんに「これグリグリグリね」「あ、アレね」ってフツーに。何の抵抗も示さなかった(笑)。

——西村作品が始めての波岡一喜さんは、最初出演が意外な気がしましたが、画面で観ると永井豪のキャラクターに似ていて、まさに“ヒーロー”。変に『ヘルドラ』の世界観に収まりがよかったです。

西村:彼は『L change the WorLd』っていう『デスノート』の3作目でタイにロケで1ヶ月半くらい行ったときにずっと一緒で飲みに行って仲良くなったんだよ。永井豪のキャラクターに似ている人はたくさん出ますけどね(笑)。女キャラもダイナミックプロ女ばかりだよね。

鹿角:やっぱ知らず知らずのうちに影響を受けてるからね。

——柳憂怜さんとガダルカナルタカさんも初めてですね。

西村:憂怜さんは僕が特殊メイクで参加した『ゴスロリ処刑人』や『幽霊ゾンビ』に出ていて。『ミートボールマシーン2』をいつかやりたいって話をしていたら、「絶対出してくれ!」って。その流れですね。タカさんは日本の総理大臣役で、悪い感じの人がよくて、イメージは三池崇史監督かタカさんだった。最初三池さんにオファーしたら監督に専念させてくれってことで、タカさんになったんだよ。

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■■20年越しの夢の行方は?■■
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——鹿角さんは20年越しの夢がかないつつあるそうですね。

鹿角:去年SUSHI TYPHOON作品の制作を7本やったんです。20年前に黒澤明監督の『夢』に関わったとき、結局日本ではどこもお金を出さなくて。結局G・ルーカスとS・スピルバーグが協力してあの映画ができた。メインの特撮はルーカスのILMがやって、僕が所属していたデン・フィルム・エフェクトっていう『影武者』とか『乱』の合成をやっていた会社も関わっていて、その時に才能ある監督の作品が海外でも注目されているのに、日本で作って海外で商売するってことがなんでできないんだってずっと思っていて。

 それから20年たって、『片腕マシンガール』と『東京残酷警察』で井口さん・西村さん・雄大さんっていう海外でも通用するセンスの監督と出会って、海外に売る作品が作れるとなった時に、とりあえずこの人達の脳内を一遍映像化したら何とかなるんじゃないかと思って。採算を度外視して、先行投資のつもりでやって、海外と商売できる土壌ができるといいなって。結局2本とも海外で注目を浴びてSUSHI TYPHOONのきっかけになったんです。先行き新しい世界が広がりそうだなって。

——今のお話と絡むかもしれませんが、今年設立したパバーンの今後の展開について教えてください。

西村:基本的に僕が造形やって監督やって、ってやり方で来たんだけど、結局はそれがずっと続く状態にしかならない。俺は俺で監督業が大変になってきたから、うちの造形部と俺の仕事を分けようとしたんです。それだけなら造形部が独立しただけで面白くないし進んでる感じがしないから鹿角さんに「一緒にやりませんか」って声をかけたんです。元々西造と鹿角さんのバックボーンが東京の東と西にあって、造形物を送ったり返してもらったりするのが大変だったんですよ。

鹿角:西造で作った造形物のCGバージョンを作るのにモノを借りるんですけど、作品が何本もあって返すのが面倒だからそのままにしているうちにうちが西造の倉庫みたいになって来て(笑)。

西村:まとまった方がやりやすいんだよね。俺はプロデューサー的なことと監督的なこと、制作的なことをやるつもりで。監督をもう一人呼びたいなって思って、井口さんに声かけたら「やりますうー」って(笑)。それで俺と井口さんが西村映造になって、バックボーンがあって、西造のチーフだった石野大雅がヒゲメガネで、3社が合体してパバーン。

鹿角:話をもらった時に、海外で名が売れたけど、現実的には井口さんも西村さんもそれに対する恩恵がなかったんですよ。ただもう海外の契約をやりだすと、個人で仕事を請けるのにも限界があるから、会社として監督とか作品ごとのマネージメントができるようにした方がいいって話になって。

——今後はお金の流れが良くなるってことですね。

西村:後はスケジュール立てもよくなるね。CGも造形費の相談もすぐにできるし。今までは、あるところから渡ってきた仕事で、そのあるところで我々の予算をどれだけ確保してくれてるんだろうって探り探りやっていて。そうじゃなくて、この予算はこれだからって、みんなでオープンにしてやって行こうよって。

鹿角:不思議なことに日本の映画業界って予算が不透明なんです。海外だったらCG費がいくら、この全体のバジェットにいくらですって話がはっきりしてるんだけど。日本では、プロデューサーが各部著のチーフを呼んでどう?みたいな(笑)。

 お互いにいくらでやってるのか知らないから、監督は好きなように言うじゃないですか。これしかもらってないから出来ませんって言うと、「なんで?」ってお互いの印象が悪くなる。それで西村さんと僕は普通に監督やみんなにCG費いくら、造形費いくらってぶっちゃけるようにしていて。それでもっと全体的に透明になるといいなと思ってるんです。

——パバーンとして動いているものは?新展開を楽しみにしています。

西村:結構あって、今年一杯はスケジュールが埋まってるんだよ!

(インタビュー:2011/2/27・ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて)

執筆者

デューイ松田

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