4/30より緊急上映≪福島第一レベル7の現在から【原発映画特集】≫十三・シアターセブン本格始動
大阪市淀川区十三本町のサンポードシティの5Fに4月2日(土)、オープンしたのがNPO法人淀川文化創造館・シアターセブンだ。6Fにある第七藝術劇場と連携し、十三の文化・芸術・社会の情報発信の拠点として、その特色を生かした独自の特集上映を行っている。
福島原発の事故を受けて、4/30(土)より5/13(金)まで上映予定なのが≪福島第一レベル7の現在から【原発映画特集】≫。日替わりで上映される作品は、『アレクセイと泉』『祝の島』『ナージャの村』『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』『原子力発電の夜明け』『原発切抜帖』『海盗り-下北半島・浜関根』『へばの』『夏休みの宿題は終わらない』の9本。その集客に注目が集まる。
シアターセブンの活動について、十三の街の活性化に挑むNPO法人淀川文化創造館の理事長・松田昭男氏にお話を伺った。
(写真右:シアターセブンに来館した瀬々敬久監督とスタッフの皆さん。『ヘヴンズ ストーリー』は4/23(土)より4/29(金)までシアターセブンで公開される)
■■■テーマは『文化と交流』■■■
——まず設立の経緯についてお聞かせください。
松田:2002年に市民の手で第七藝術劇場がオープンしました。十三の街おこしとして始めた単館で、劇場としてはそれなりに成功していますが、十三のイメージを良くして、もっとたくさんの方々に来ていただかないと街おこしとは言えないんです。
そこで文化情報発信の拠点としてシアターセブンをオープンしました。テーマは『文化と交流』。イベントや映画を通して、十三の街を盛り上げて行きたいと考えています。設備としては、BOX1(イベントホール)が約100名、BOX2(映像ホール)が約40名、BOX3(交流サロン)が約15名収容可能という3タイプのスペースがあります。
■■■ネットの映像とは違う価値観を提供するのが我々の役目■■■
——イベントはどういったものを予定していますか。
松田:当館独自の企画イベントもあれば、持込のイベントもあります。コンテンツとしては、映像や音楽もあるし、ナナゲイで行っている7gei-spirito(★)の流れを汲むようなSeven Forum、お笑いのイベントと多彩な内容を送り出す予定です。現在予定しているコンテンツでお笑いが多いのは、支配人である尻谷よしひろが放送作家をしているからなんですが、シアターの特色としてはこれも一つの強みですね。
原発特集の後、5月後半は沖縄の中学生・仲村颯悟監督『やぎの冒険』の上映が控えています。阪神百貨店で開催される沖縄物産展と連動した宣伝を考えています。
6月末には「日本人監督が見た世界」といったテーマで、『One Shot One Kill —兵士になるということ』や『アメリカばんざい-crazy as usual』の藤本幸久監督を中心に、ドキュメンタリー映画の監督を招いての上映やディスカッションを予定しています。その中で沖縄デーやモンゴルデーといったテーマ別の構成を考えています。
最近は映画を観るにしても映画館、TV、ネットといった選択肢が増えています。シアターセブンは『交流』がテーマですので、観た人同士が語り合ったり制作者と語り合うことで、初めてネットの映像とは違う価値が出て来るのではないでしょうか。
(★)7gei-spirito:ナナゲイで行っている「どこもやらない、やれないことを」をモットーに行っている文化、政治、社会問題のディスカッションのイベント
——現在の課題はありますか。
松田:音楽のコンテンツが弱いところでしょうか。街おこしの一環として2009年に発足した十三ジャズ(※)もありますので、継続できるイベントを考えて行きたいです。
後はイベントスペースとしてたくさんの方々に借りていただくことを定着させることですかね。
淀川区は区民センターが一つしかないので、利用するにも順番待ちの状態です。レンタル料は区民センターの方が安いですが、シアターセブンでは食物の持ち込みOKといった区民センターにないメリットもありますから。
(※)十三ジャズ:昭和30年代の高度成長期、十三にはたくさんのキャバレーやクラブがあり、華やかなジャズバンドの演奏が十三の夜を彩ったという。そんな古き良き時代を現在に復活させようと十三ジャズ実行委員会/NPO法人淀川アートネットが立ち上げた組織。定期的な演奏活動やアーティストの発掘にも力を入れている。
■■■「エンターテイメントタウン十三」を目指して■■■
——松田さんの十三に対する想いはどういったものがありますか。
松田:ナナゲイとシアターセブンが入っているサンポードシティは、大正4年に創立した映画制作・配給の「帝国キネマ演芸株式会社」が戦後の昭和21年に作った「十三劇場」「十三朝日座」という二つの映画館が前身なんです。昭和31年からここで働かせてもらって来ただけに、十三という町が良くなって欲しいんです。かつては街全体で8館ほど映画館がある繁華街だったんですけど、今では風俗店が増えていることを残念に思っています。十三のイメージを変えるために「エンターテイメントタウン十三」というキャンペーンで、十三ジャズやナナゲイでの7gei-spiritoを始めましたが、まだまだ不十分です。シアターセブンで、前述のイベントの他、例えば「世界のアニメ祭り」といったようなありきたりでない大きなイベントを組むことによって、街のイメージアップを図りたいと思います。
今の十三はワンルームマンションが多くて、淀川区は大阪市で一番転出入が多いんです。税収入では中央区、北区についで第三位。工業生産高は第一位。そんな力がある淀川区なのに、文化施設は淀川区民センターしかない。市が動いてくれないなら、民でやるしかないと。しんどいことではありますが、新しい文化事業のモデルケースという意気込みで取り組んでいます。良質な文化が根付くことによって、魅力ある街になれば定着率も増えると考えています。オープンまでに3回イベントを実施して、それなりの感触はつかめています。今、やっとスタートラインに立ったところですね。
執筆者
デューイ松田