映画『FURUSATO−宇宙からみた世界遺産』日下 宏美監督インタビュー
「世界遺産を宇宙から眺めたら…」そんな思いを実現してくれるのが、映画『FURUSATO−宇宙からみた世界遺産』だ。
本作品では世界最大級の地球観測衛星「だいち」と、最新の3Dデジタルカメラでの撮影により、エジプトのピラミッドをはじめ、広島の厳島神社、原爆ドームなどの世界遺産が圧倒的なスケールで表現されている。
監督はTBS『THE 世界遺産』で知られる日下宏美氏。そして監督と古くから親交の深い映画『おくりびと』で脚本を担当した小山薫堂が温かくも、心にしみるオリジナルストーリーを作り上げた。
今回は息を飲むような世界遺産の映像美とストーリーが絶妙に絡み合わさった本作について日下監督の想いを伺った。
—どういう経緯で製作することになったのでしょうか?
TBSビジョンの小川さんからお話を頂いて、元々日本科学未来館のドーム映像の作品として始まったんです。ドーム映像で何を流すかっていうので、彼が元々JAXAの「だいち」の映像を使って何か世界規模のロケーションをして、大型映像を作りたいと。それで、だいちが撮影した世界遺産の衛星写真がいっぱいあったので、それと地上の3Dの撮影をして、それを合わせて作品にしようというのが狙いで、そこから始まった感じですね。
—3Dで表現することについての意義をどう考えているのか?
綺麗なところとか、変わったところだとすごく効果があるいうか、2Dと違う世界があると思いますね。
—構成をされている小山薫堂との繋がりは?
繋がりは古くて(笑)。14、5年くらい前からで、いろんな番組を一緒にやって、世界遺産が一番多いのかな。その延長線上というか、前からこういうストーリーのあるものをやろうと言ってて。あとなんといってもちょうどこの企画が立ち上がった時に『おくりびと』でアカデミー賞を受賞されてしまって(笑)。ものすごい強力な人になってしまったというか。まぁ、長いですよね。メジャーな作品は無いですけど、深夜番組とかちょこちょこやってましたね。
—『ふるさと』を演奏するシーンが印象的でしたが、本木雅弘さんの長女の内田伽羅さんの起用にはどういった経緯があったのでしょうか?
たまたまだったんですよね。インターネットで僕がたまたま見つけて、「誰かなこの子?」と思って調べたら本木さんの娘さんで、それで小山さんとプロデューサーに話をして「どうかな?」と言ったら、その場で彼が本木さんのマネージャーに電話して出演交渉を始めたんです。
演奏するシーンは「優しくする」っていうのと、「未来への贈り物」というテーマっていうのに象徴的なシーンとして入れたかったんです。あんまり演技めいたものは考えていなかったので。そこに佇んで存在感があるっていうので組み合わせて行きました。フルートが上手だからというわけではなく、オーラのあるような、そういう女の子を探すのはオーディションでも難しいだろうなと思っていたので。CDジャケットの写真をみて、そしたらたまたまだったんですけど。
—世界遺産を映画館の大スクリーンで、かつ3Dということですが、見所はどこでしょうか?
より良い撮影ポジションというか、贅沢な映像と言うか。観る環境が全然違うので、皆さん集中して観るような環境で観てくれるので、インパクトあるちょっとした短い画と言うよりも、浸れるような長いワンカットに耐えられる映像を狙いましたね。3Dっていうのもあり、それは気を付けました。その場限りじゃない何回も繰り返し上映されるので、そのあたりを見て欲しいですね。
—最後に教育的な意味合いも強いと思うが、この映画を通して子どもたちに伝えたいメッセージはありますか?
それぞれ3か所遠いんですけど、世界遺産と呼ばれている場所はそんなに特別な場所ではないっていうか、外国から見れば厳島ってすごい不思議な場所という風に見られますが、そこには暮らしている子どもたちもいて、そばに人の暮らしがあり、そこと密着した生活があって、当たり前の日常の中に世界遺産があったりするので。ピラミッドも日本から見れば遠くて、全然離れた場所の世界で、そこに人がいて暮らしがあるのかと言われると全然想像もできないですけど、でもピラミッドのそばで普通洗濯物の横で暮らしている子たちもいっぱいいるので。その辺がふつうにあるっていうのを結構言いたかったって言うのはありますね。
映像美とともにもっと身近にある存在で、そのもの自体が素晴らしいって言うのがあるので。あんまりエキゾチックなものというわけではなく、それぞれ身近にあって自分たちと同じような子どもの生活があって、それで暮らしているっていうので何か繋がりを感じてくれれば。地球の中には日本があってエジプトもあるっていうのをもっと普通に行けてしまうというように感じてもらえればいいかなと思います。
執筆者
森根隆之