3D版で進化した『完全なる飼育』の新章がここにはじまる! 監禁される女と監禁する男のアブノーマルな愛を追及し、カルト的人気を誇る『完全なる飼育』が5年ぶりに帰ってきた!! 主演は、ミュージカル「テニスの王子様」の主役でデビュー以来、舞台、映画、テレビで活躍する若手実力派の柳浩太郎。内気な青年が愛欲を知って変わっていく様を繊細に演じ、一途な男心を見せつける。対する苺役には、大型新人アイドル・亜矢乃。今回は荻野目慶子らに続く“飼育女優”として、激しい濡れ場に挑み、そのしなやかな肢体となまめかしい眼差しで観る者を挑発する。さらに、二人の運命を狂わせるストーカーとして前田健が怪演を見せるほか、久野雅弘、黒川芽以、竹中直人、西村雅彦といった多彩なキャストが二人の禁断の愛を盛り上げる。

これまで和田勉、若松孝二といった名だたる巨匠が手がけてきた“飼育”シリーズに挑んだ鬼才、深作健太にインタビューを行った。


−−『完全なる飼育』といえば名物シリーズですが。

「話が来た時は単純に嬉しかったですね。母親が女優だったので、女優が苦手だったということはありますが。今までもアイドル映画みたいなのはやっていて、場数は多いんだけど、セクシャルな面が弱かったんですよ。それに『完全なる飼育』って、好きなシリーズだったんで。先輩たちが作ってきた伝統があるじゃないですか」

−−今回は秋葉原でメイドですからね。

「秋葉原に久々に行ったんですけど、萌え系の街に変わっていてビックリしました。それでメイド喫茶に行ったんですが、この元気のない時代におじさんたちがすごくいい顔をしているんですよ。キャバクラならわかるけど、こんなにも身体を張って癒してくれるメイドさんやメイド喫茶って何なんだろうと思いまして。ラストカットはこのおじさんたちの顔で終わろうと決めました。移動撮影でおじさんたちの顔を写しているんですが、裏の主役はこのおじさんたちなんです。それと、秋葉原の有名電器店が次々とつぶれ、空き地が広がっていったりと、そういう日本もリアルに写せるなと思いました」

−−空きビルも増えてますよね。

「中央通りのど真ん中が空いているわけですからね。ありえないですよ。それと自分の住所を持たないネットカフェ難民の生き方などもいろいろと盛り込んでいって。要するに、先輩たちもそうやって闘ってきたわけですよね。自分の作家性と時代性との兼ね合いで。それを僕なりにできるかなというのが、最初のアプローチですね」

−−主演の亜矢乃さんと柳さんはどういう経緯で決まったんですか?

「2008年の2月にオーディションをして、彼女が先に決まったんですけど、これまた面白い娘で。高校時代に演劇をやってて、寺山修司が好きで。塚本晋也監督の『六月の蛇』が一番好きな映画といった。どうなっとるんだ、全然アイドルじゃないなと思って。将来は演出家志望なので、話していて楽しいんですよ。やはりコミュニケーションがとれるのが入り口であって。それで相手役はというと、柳くんしか考えてなかったですね。彼の舞台を観ていたし、事故の後、ハンディキャップを克服している姿を見るのが好きだったので。ふたりを揃えたというのがスタートでした」

−−『完全なる飼育』というと、エロティックなシーンが必須ですよね。

「問題は僕もひっくるめて、全員が濡れ場が初めてだということだったんですよ。そこに監督が入っちゃいかんだろうと思うんですが(笑)。それでも、ふたりは今までアイドルをやってきて、人生をかけて違うフィールドで勝負をしようというわけじゃないですか。そういうのは裏切っちゃいかんと思うわけです。ふたりの想いをリアルに焼き付けられたらなというのがあったので、撮影の一週間前からリハーサルをしました。現場に入ってから、始めてキスをしたり、裸を見るというのはやめようと。
 ただ、言ってはみたものの、こっちはビビるわけですよ。何を撮ったらいいのかわからないし。ただ、リハーサルを重ねる中で、本当に捨て身で彼女の方からいってくれた瞬間があって。今まで僕は、あややにしても、役者のアイドルの壁を壊す仕事をやってきたわけです。だけど、向こうから始めて壊してもらったんですよ。その体当たりの気持ちを感じて、この作品いけたと思いました」

−−話し合いはどのように進んだんですか?

「嘘の芝居はイヤだったんですよ。このAV全盛の時代に、かわいい娘も含めて、身体を張ってやっている中で、このセクシー映画を作る意味合いって何だろうか。本物に対して僕らはどう芝居で闘うのか。とにかくラブラブにやろうと。恋人同士のエッチって、とにかく見つめ合うよね。ちゃんとベロチューをしようよ。女が男を攻めるでもいいじゃない、とか。3人でそんな話をして、リハーサルをしました。いわばアクションをつけるようにやってましたね」

−−濡れ場とアクションの殺陣を重ねて考えるというのが面白いですね。

「京都の撮影所って、殺陣師が枕をつけるんですよ。大奥シリーズとか、一時期いろいろエロ映画を作っていたじゃにないですか。あの頃は、枕師がいなかったから、殺陣師がつけていたんですよ。結局は俳優を動かすのが、ある意味所作なので。その意味が自分でやってみて、よく分かりました」

−−今回は同年代のふたりというのが特色ですね。

「濡れ場のシーンは、本番の3倍くらいの量をカメラを回しています。それをあの不器用なふたりがやっているのがすごく素敵で、それがむしろ僕がやりたかった『完全なる飼育』のテーマなんです。今までは、ある程度年輩の男が、若い女の子をさらってきて、最後は惚れられたという、ある意味男性原理なファンタジーじゃないですか。そんなご都合主義があるわけないと思うんですが、そういうところは変えたかったんです。今は男性原理の時代じゃないと思うし、無理にはできないじゃないですか。別に草食系男子を描きたかったわけではないですが、女性の強い時代に生きる童貞という設定だし。そしたら女の子がリードするのが当たり前ですからね」


−−ある意味、つっこみどころが満載ですよね。

「『完全なる飼育』シリーズなんて普通はそう思いますよね。僕自身、突っ込みどころの多い映画というのは大好きなんで」

−−監督の前作の『エクスクロス』なんかは特にそうですよね。

「僕はそれでいいと思うんですよ。昔は突っ込める映画が楽しかったんですよね。たとえばスタローンの映画やシュワルツェネッガーの映画なんて、滅茶苦茶だったじゃないですか。『ターミネーター』なんて楽しかったですからね。そういう楽しみ方をお客さんにしてほしいんですよ」

−−3Dの話も聞かせてください。カラミとアクションのシーンが3Dでしたね。

「気持ちとしては、ゾエトロープ(のぞき絵)だったりといった覗きの感覚。それはいかがわしい見せ物小屋的な感覚でもあるんですが、この時代にこういう見方があってもいいだろうと。エッチシーンになるとみんなイソイソとメガネを取りだすのが楽しくて、映画よりも客の方を観ていたい感じでしたね。今は個人鑑賞の時代ですからね。みんなで裸を見ることのおかしさが大事なんですよ」

−−まじめそうなスーツを着たおじさんがいそいそとメガネをかける姿がおかしかったです。

「はずし忘れるのもおかしいんですよね。そういうイタズラですな。これは普通のカメラで撮影した素材を、イマジカのチームが後処理で3Dにしてくれたんで。全部にレイヤーを切って、すごく大変だったんです。一番こだわったのが、裸の柔らかさなんですよ。全部レイヤーで追いかけているわけなんですよ。変な話ですが、身体が揺れるたびに勃ってる乳首を追いかけてるわけなんですよ。サングラスをしながら『乳首を強調してください』とかやってて。大の大人がバカみたいな作業ですよね。オペレーターはオペレーターで、こんな楽しい仕事はやったことがないですとか言ってて(笑)。そういう作業を経て、やっと裸の柔らかさを出していったんですよ」

−−最後にメッセージを。

「飼育のファンはもちろんのこと、飼育を見たことのない若い世代。特に女性の方やカップルなどにも観に来て欲しいですね。むしろ男性よりも女性向けの映画だと思っているので。だから『完全なる飼育』のイメージにとらわれずに、ちゃんと観て欲しいですね」

執筆者

壬生智裕

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