『ワカラナイWHERE ARE YOU?』は小林政広監督による21 世紀の『大人は判ってくれない』(フランソワ・トリュフォー監督)とも言うべき作品。
映画は、母親を病気で亡くし、医療費も葬儀代も払えず、そして自分自身が食べる事さえ困難な貧困の中を生きていくしかない現実と向き合う少年をリアルに、時にファンタジックに描きます。社会から見放された少年の行動の全てを、観察するように、時には見守るように、ドキュメンタリー映画のような距離を保ちながらカメラはとらえていきます。

デビュー作『CLOSING TIME クロージング・タイム』から国内外で高い評価を獲得し、3年連続でカンヌ国際映画祭に出品した『海賊版=BOOTLEG FILM』、「KOROSHI 殺し』、『歩く、人』や近年でも『バッシング』『愛の予感』と話題作を作り続けている小林政広監督の最新作『ワカラナイ』が、日本では11月14日から公開される。

10月に開催された釜山国際映画祭で、『ワカラナイ』と『白夜』が出品され、公開を控えた監督に話を聞いた。




── 海外の映画祭を回られて、今回、作品に対する観客の反応などは?

日本だけではないですが、先進国などでは、このようなテーマ性の作品は、現実にありえないと評価されがちですが、発展途上国や貧困差のある国などでは、現実的に起こりえるテーマと共感できるようです。母親が亡くなった時の葬式は子供だけでできるわけではないなど。子供だけでは何もできなかったりします。

── 本作を制作するきっかけは? 子供を主人公にしたわけは?

『バッシング』『愛の予感』と作ってきて子供を描いてみたいと思っていた時に、個人的な話で、親父が亡くなったときに、自分の身近で周りの大人は勝手だなぁといろいろ感じたことがあったんです。それと、子供のときにトリュフォーの『大人は判ってくれない』を見たときに、映画が身近に感じることができたんですね。

── 主演に新人・小林優斗を起用した理由は?

オーディションはしましたが、子供っぽい演技をする役者はいましたが、最初は、彼の演技には違和感があったのですが、暗い感じなどのイメージが合うので、子供の無垢な部分が良かったので、彼に決めました。作品を取っていくうちに彼の良さが見えてきました。衣装も着替えずに1点のみ、彼もお金が生きていく上で必要なんだと実感したのではないかと思いますよ。よく撮影に耐えたと思います。

── 食事のシーンが印象的でしたが、『バッシング』のおでんを食べるシーンなど。演技指導は?

特に指導はしていないです。「なるべく早くたべろ」としか指示していませんが、小林優斗くんが考えてサンドイッチを2つ同時に食べているなど、自然な形になっています。メロンパンを口の中にいれながらカップラーメンのスープをすするなんて驚きでしたね。彼で本当に良かったと思うよ。

── あまり多くを語っていないラストですが意図するものは?

大変だけど、彼が幸せな道をあるいていけると感じています。

執筆者

Yasuhiro Togawa

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=47802