『GHOST IN THE SHELL─攻殻機動隊─ 』『イノセンス』『スカイ・クロラThe Sky Crawlers』などで知られる世界的鬼才・押井守。
その最新作は、『Avalon』以来約8年ぶりに手がけた長編 実写映画。仮想空間の大砂漠を舞台に、美しき女ハンター達が、野望と駆け引きに満ちた戦いを繰り広げる弩級のSFアクション・ファンタジー。

熱核戦争後の荒廃した砂漠の戦場に集まった3人の美しき女ハンターたち。ゲームマスターが 監視する中、ターゲットである巨大モンスターのスナクジラの群れを相手に、それぞれの戦闘スタイルでバトルを繰り広げていた。ある日、伝説の超大物マダラスナクジラを仕留めるべく、彼女たちはパーティーを組むが……。

今回、完成披露記者会見後の押井監督をはじめ、押井監督作品への2度目の 出演を果たした女優佐伯日菜子さんにお話を伺った。


●先ほどの記者会見で意外と” コミカル”になったとおっしゃられていましたが、具体的にどのように最初想定されていたのか、完成してみての違いを教えて下さい。

ー(押)「もうちょっとタイトな映画になると思っていたけど、準備している間に少し変わっていって、撮影したらさらに 変わって、編集やったらもっと変わって、音響なども完全に変わ っちゃった。最初はもっとハードな感じかとも思ったけど。」

●実際に撮影で、佐伯さんが受けた指示も 、どんどん変わっていきましたか??。

ー(佐)「具体的には特になかったかも。現場での指示的なものは、 結構絵コンテと一緒じゃなかったですか??。」

ー(押)「だいたいね。カーネルに関しては、大体変わっていない。ただ編集の感じで、多少開拓に行ってる感じです。」

●本作で監督が一番” こだわった点”を教えて下さい。佐伯さんは カーネルを演じるにあたって、気をつけた事 を聞かせて下さい。

−(押)「こだわったというか、女優の為の映画だから、女優さんをどうやって、魅力的に撮るか・・・楽でしたよ。ただ合成の佐藤君(撮影・編集・VFXを担当した佐藤敦紀)がなんとかするんだろうと思ってました。エンジョイしてました。きれいな物を撮ってる時、人間やっぱり幸せだからね。後は、日が暮れる前に帰って、温泉入って、飯食って、寝るだけだっていう。そういうバラ色の日々だったよ。 不満があったとするなら、飯もうちょっと何とかなんないっていう・・・。」

ー(佐)「えーなんで??。」

−(押)「彼女はおいしいって言ってくれたけど、僕が 要求したのは、”弁当だけはやめてくれ”っていう。あの環境で冷えた弁当食べてたら、人間物悲しくなるから。温かい物を優先してもらいました。あんな寒い所で、冷えてる弁当食べてたら、嫌になっちゃうよ。なので今回はあったかい飯を食わせるのがテーマだったから。」

−(佐)「だから天津丼とか・・・でも宿おいしくなかったですか??。」

−(押)「宿は・・・旅館だからね。」

−(佐)「えーきびしいなあ。。。」

−(押)「温泉があったのが最大の幸運だね。やっぱり温泉入ったりしないとやってらんないよ。吹きまくられてるし、体は冷えまくってるし、砂でじゃりじゃりだし、どうしようもないもん。砂漠に行っちゃったから、女の人で一番大変だったのは” トイレ”だったと思うよ。男は、そこらへんの草むらでやればいいんだからさ。女の人はね、ちゃんと用意はしたんだけどさ、やっぱり辛いよね。」

−(佐)「きめ細かい・・・。私の気をつけた点は、あのコスチュームを着て、あの場に立 つと、もうその世界に浸ってしまうのですね。だから一番気をつけた事というか、大変だった事は、” アフレコ”です!!」

●特にどんな所が??。

−(佐)「英語だというのと、マスクをつけているので、アフレコの時もマスクをつけて、声を録るので、それがまあ大変でしたね。マスクは合わないし、英語は下手糞だし、滑舌は悪いし、もう本当に心から申し訳なかった。。。」

−(押)「マスクがあわなかったんだよね。喋り辛かっただろう けどね。」

−(佐)「精進します・・・。英語。」

−(押)「実際そういう会話になるはずだから・・・自国語以外で感情を入れて芝居をするのは大変な事で、ネイティブじゃなく、英語という日本語をしゃべればいいんだよ。」

−(佐)「でも!!大変なんですよ。押井監督と仕事をすると必ず女優さんてなんでもできなきゃいけないなと心から思いますね。いきなり馬連れて来られて・・・

” 馬乗るから”” え!!!???”

みたいな。優しい馬でしたけど。」

●作るきっかけというのが、本格的な” ファンタジー映画”を作りたいという思いからだったと思いますが、押井さんと佐伯さんのお勧めのファンタジー映画を紹介して下さい。

−(佐)「ファンタジー映画ですか・・・『ティム・バートンの コープスブライド』!!」

−(押)「やっぱり『ロード・オブ・ザ・リング 』でしょうかね。ファンタジーってのは、” 闘争”ってか” 戦い”っていうのと” スケール感”が絶対に必要なんで。メルヘンとは別物だね・・・。」

−(佐)「『ナルニア国物語』なんてのは、どうですか??。」

−(押)「『ナルニア』はね、キャラが年齢とあってないという。disney映画だったら別にいいんじゃないっていう。あれは、子供が見るものですよ。本当のファンタジーってのは大人が見るものですから。まあ・・・『ロード・オブ・ザ・リング』も完璧じゃないけれども、キャスティングは良かったですよね。男には皆色気があった。日本でファンタジーをやろうとしても、どういうキャスティングしたらいいんだろう。そこらへんに難しさはあると思う。」

執筆者

長島美秋

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