1991年『羊たちの沈黙』,1996年『セブン』,2004年『ソウ』—
そして2009年秋、いまだかつて体験したことのない、
衝撃のサディスティック・サスペンス・スリラー誕生!!

『トランスフォーマー』シリーズ、マイケル・ベイ プロデュース最新作!
先読み不能な猟奇スリラー!!

極太の釣り針で宙吊りにされた屍体、それを囲むように「COME AND SEE=来たれ」のメッセージが残された奇妙な猟奇殺人。事件は刑事ブレスリン(デニス・クエイド)を挑発するかのように連続殺人へと発展してゆく。この“儀式”一体誰が?何のために?被害者の娘クリスティン(チャン・ツィイー)の不気味な告白で事態は一層迷宮へ入り込む。
そして突き当たったヨハネの黙示録・四騎士=ホースメンの記述が、謎を解く鍵なのか?さらに事件は誰もが予想しえない、衝撃の結末をむかえる!

ジョナス・アカーランド監督にインタビュー。




●本作はチャン・ツィイーが初のシリアル・キラーに挑戦したことで話題の一作ですが、彼女と仕事をした感想はいかがですか?
「素晴らしい体験だったよ。彼女に関しては、いいことしか言えないよ(笑)。彼女ほどカメラの前で存在感を出せる女優と、僕は今まで一緒に仕事をしたことがなかった。彼女は撮影のためにニューヨークに引っ越して来て家族とアメリカに住み、最初はそれほどでもなかった英語が最終的にきちんと話せるようになった。彼女ほど熱意を持って現場に来てくれる俳優も初めてだったよ」

●チャン・ツィイー演じるクリスティンは、女性版”ハンニバル・レクター博士”のようなキャラクターでしたが、意識をしましたか?
「それは素晴らしいよ! 素晴らしい比較だと思う。ただ、チャン・ツィイーが演じたクリスティンはかわいそうな境遇の女の子で、悪い影響を受けて、あのようになってしまったわけさ。そこにシンパシーを感じてほしかった。『羊たちの沈黙』(91)のハンニバル・レクターは悪意を持って計画的に殺人を犯しているような人物だから、ちょっと違うよね。ただ、そういう比較は、いいと思うけど」

●殺人鬼を演じるチャン・ツィイーはいままで誰も観たことがなかったので、彼女は女優として新境地を開拓したと言えそうです。
「そうだね。彼女はセットに入るとキャラクターに入り込み、まったく別人のように変わったよ。キャラクターをきちんと理解して、熱意を持って演じていた。そして、セットから離れれば、本当にまた別人に戻るのさ。僕らはカナダで撮影していて家族のように過ごしていたけど、彼女はとてもパーティーが好きで、楽しむことが好きな女の子だった。クリスティンとはまったく違う女性だよ(笑)」

●本作はジャンルとしてはサスペンス・スリラーに分類されると思いますが、監督はもともと興味があったジャンルなのですか?
「実は撮影中に方向性がどんどん変わっていったけど、もともとサスペンス・スリラーにはすごく興味があったよ。ただ、僕個人としては、ジャンルとしてのサスペンス・スリラーというよりも、”ドラマ・スリラー”と表現したほうがいいかもしれないと思っているよ」

●本作は『羊たちの沈黙』(91)や『ソウ』(04)などの大人気シリーズのエッセンスを継承して、その系譜に名を連ねそうな内容だと思いますが、監督しては『ホースメン』を撮影するにあたって、ご自身なりのオリジナリティーをどのように追求・表現しましたか?
「僕が考える、この映画がそのほかのサスペンス・スリラーと異なる点は、人間ドラマ、エモーショナルなドラマが盛り込まれているところで、そこが気に入っているよ。人間の感情がとても強く表われているストーリーだと思ったので、それをすごく大事にしようと思っていた。子どもたちや親の感情部分が強く出てくるドラマになって、それがこの映画のポイントになるだろうと思っていたよ」

●撮影中に話の方向性がどんどん変わったとのことですが、脚本に対してご自身のアイデアを積極的に出されたのでしょうか?
「初期の脚本は警察の捜査の下りがすごく複雑でわかりづらかった。脚本家のデヴィッド・キャラハムがさまざまなバージョンを作っていて、僕はディレクターの立場で脚本に手を入れただけであって、僕はその警察の捜査の下りを観ている人たちが簡単に理解できるように変更した程度だよ。デヴィッドが書いたすべての脚本にはエモーショナルなドラマが含まれていたけど、僕やプロデューサー、脚本家たちが会議を開く度に変わっていったことは確かだね。ラストシーン用に、5〜6種類のエンディングを用意をしたけど、基本的なストーリー自体は変わっていなくて、それをどう伝えるかについてディスカッションを繰り返して変えただけさ」

●また、人間の心の痛みや、許しというテーマに対して、演出をする上で、監督の人生観が反映されていたりするのでしょうか?
「そうとも言えるし、そうでもないかな(笑)。僕の人生はアップとダウンがすごく激しかったので、エモーショナルな経験はかなりあったほうだと思う。だから、人生観が投影されていると思うけど、仕事の経験ではなくて、個人的なプライベートな領域がね(笑)」

●プロデューサーのマイケル・ベイは、本作の全体的な製作上のコンセプトとして、どんなリクエストを出してきたのでしょうか?
「マイケル・ベイには、僕が何をどう撮るのか、詳細をすべて伝えてあったけど、積極的に関わってくることはなかったよ。マイケルと僕との間のイメージについて同意は取れていたし、さまざまな意味でマイケルは力を発揮して助けてくれたけど、口を出すということはなかったかな。マイケルがムチャぶりをする人だということは知っていたけど(笑)、僕たちは悪い関係にはならなかったよ。今回の映画はいままでプラチナム・デューンズ社が作ってきた映画とは違うものだし、大スターを使っていたので、助けてくれたということはあると思う。それに、マイケルは僕が撮った以前の映画やショートフィルム、ドキュメンタリーなどを観ていて、とても気に入ってくれていた。『ホースメン』は僕にとって初監督作品ではないので、尊重してくれたのさ。僕を信頼してくれたと思う」

●この映画が、プラチナム・デューンズ社にとって、初のオリジナル作品という意味では、そうとうプレッシャーがあったのでは?
「いや。それほどなかったよ。映画製作はいつだってプレッシャーに襲われるものだけど、プラチナム・デューンズ社がどうこうという意味でプレッシャーはなかったな。プラチナム・デューンズ社の初めてのオリジナル作品ということで、とてもいい経験だったよ」

●今回で長編映画は『SPUN スパン』(02)に続いて2本目ですよね。2本撮ってみて、映画監督としての意識など何か変化は?
「実は一度にいろいろなプロジェクトを進めていくことは、僕にとっては普通のことなのさ。今回の『ホースメン』のような長編映画になると、比較的深くテーマなどを掘り下げることになるので、長時間を費やして作業をすることは大好きさ。それに、いろいろなプロジェクトをやると、気分的にリフレッシュされる。大きなプロジェクトに対して新しい気分で取り組めるというメリットもあるのさ」

●また、前作『SPUN スパン』(02)に比べ、映像的に凝った演出は抑え気味だったような気がしますが、その狙いは何ですか?
「抑え気味という表現はネガティヴな言いかただと思うけど、今回はこの映画の持っているテーマを確実に伝えるために、一番いい方法を採ったまでさ。前作の『SPUN スパン』(02)では、ちょっとショッキングで印象に残る映像、強い色使いやバックグラウンドに流れる音楽などが作品にとってふさわしかっただけで、(その演出が)今回の『ホースメン』にはふさわしくないと思っただけさ」

●最後になりますが、日本の映画ファンの皆さんに向けて、アカーランド監督から何か一言、メッセージなどお願いいたします。
「この映画のテーマの中心にあるのは家族です。日々子どもたちに向かってきちんと話をするということ、無視しないこと、そして子どもたちが親と話すということ。そういうメッセージがサブとして入っています。仮にそのメッセージが伝わらなくても(笑)、ストーリーが素晴らしいので、エキサイティングするとは思うけど、家族の大切さは世界中のどこにでも伝わっていくものだと思います」

執筆者

Yasuhiro Togawa

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