まきの・えりによる原作を、『ミッドナイトイーグル』の成島出が映画化。プロデュースには、日本映画界を代表する俳優、大沢たかおが初参戦し、ふたりを見守る大木会長役として出演も果たした。

ヘタレ男子から男らしく成長していく稔役は、『バッテリー』『ダイブ!!』の林遣都。闘うヒロイン亜紀を演じるのは、『幸福な食卓』『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』の北乃きい。数々の映画賞の新人賞を受賞している期待の若手俳優2人が等身大で真っ直ぐな初恋を描き、吹き替えなしの迫力溢れるボクシングシーンにも挑戦した。日本映画界の勢いを感じさせるパワフルにしてピュアな青春ラブストーリーがここに完成!!

今回はDVDの発売を記念して、『ラブファイト』でW主演を果たしている林遣都、北乃きいのふたりに話を伺った。



ーーおふたりは仲が良さそうですね。

北乃「でも最初は人見知りしていたんで、あまりよく喋れなかったんですよ。控え室が同じだったのに、お互いマネージャーさんと端の方にいたりして。普通に喋れるようになったのは、撮影の後半くらいからですかね」

林「僕は普通に喋ろうとしていたんですけどね」

北乃「緊張していたんですよね。同い年なのにずっと敬語でした。でも幼なじみの役なので、これじゃ駄目だと思って、話すようになりました」

ーーこの映画はある意味、男の子らしさ、女の子らしさがテーマだと思います。おふたりが思う男の子らしさ、女の子らしさってどんな感じですか?

林「勇気と根性があり、身体的にも精神的にも強い存在が自分が思う男らしさですね」

ーーそうすると、林さんが演じた稔という役はどうでした?

林「そういう要素がまったくない。僕に似てるところも少しはあるかもしれないですけど、ほぼ離れていると思いたいです(笑)」

ーー北乃さんはどうですか?

北乃「女の子っぽさって2種類ありますよね。ぶりっこな感じでいく女の人と、亭主関白な男の人を支えていく気配りの出来る女の人と。気を使える人と、何も出来ない人みたいな。自分はけっこう、気を使える人の方が、女の子っぽさがあるかなと思います」

林「女性と女の子の違い、みたいな」

北乃「あ、それそれ。でも何歳からが女性になるんですかね? それが分からないので、いつまでもこんな感じなんですけど。
 亜紀ちゃんと私はちょっと似てるところがあると思うんですよ。ライオンだと思って演じました。けっこう亜紀ちゃんはハートがガラスなので、ガラスのライオン。私は単なるライオンなんですけど(笑)」

ーーハードなボクシングシーンが印象的でしたが、トレーニングはどうされてたんですか?

北乃「あんまり一緒にやってないよね」

林「最初はひとりでトレーニングを重ねてました。撮影に入ってから一緒にやるシーンも増えてきたんですけど」

北乃「最初から型が全部決まっていたんですよ。左ジャブ、右ストレート、左アッパー、右フック、下がって蹴る、みたいな。ふたりで練習したときは、忘れたら教えてもらうというような感じでした。何回も練習することによって、少しずつ当たらないようになっていくので、練習練習でしたね」

ーートレーニングは大変だったんじゃないですか?

北乃「泊まっていたホテルが同じ階の目の前の部屋だったんですよ。筋肉痛で死にそうになっていたら、遣都くんが筋肉痛に効く塗り薬を、貸してくれたんですよ。何も教えてくれなかったんですけど、確かそのころは3月だったんで。全身に薬を塗って寝てたら、すごく寒くて寝られないんですよ! それこそ死ぬかと思いました」

林「あまり全身に塗るものじゃないですからね」

北乃「タオルで拭っても取れないし、熱いお風呂に入っても、水に入ってるようだったし、恐怖でしたね。でも次の日に治ったんですよ。薬は次の日にお返ししました。ありがとうございます(笑)」

ーー怪我はどうでした?

北乃「私は青たんだらけだったのに、遣都くんはあまり怪我がないんですよ。殴るときにピキンと痛みが走らないようにテープを巻いてから、バンテージを巻くんですけど、彼はテープを巻かずにやってて。ボクシングの先生に、一度とってやりたいと言ったんですけど、女の子だから駄目だよと言われて、とても悔しかったですね。
 ずっとテープで固定しながらパンチをしていたんですけど。ピキンと痛みが出てくると、3日くらいはずっと痛くて殴れなくなるんです。それでもやらないと強くならないんですけどね。そのへんの怪我は大変でしたけど、遣都くんはすぐに強くなるんで、そのへんはすごいなと思いましたね」

林「強くなりたかったんですよ。ボクシングやり始めると、拳を固くしたくなるんですよね。だから早く拳を固めようと思って、机とかを殴ったりとかしてました」



ーー『バッテリー』『ダイブ!!』といった出演作の流れがあるので、林さんはスポーツのイメージがあるんですが、北乃さんはあまりそういうイメージないですよね。

北乃「何かおしとやかなイメージがあるらしいんですよ。だから会うとガッカリしましたと言われるんですが(笑)」

林「『ダイブ!!』を撮ってたときに、合宿所でみんなでドラマの『ライフ』を見ていたんですよ。だかあ困難に立ち向かうというか、精神的に強いというイメージはありましたね。でも、初めてのボクシングシーンのときは驚きました」

北乃「私はものすごい体力がある、と言われてたみたいで」

林「長時間でも、体力がもつんですよね。だから『きいちゃんに負けるな、遣都』ってずっと言われてました」

北乃「逆に私は、遣都くんのいないところで、『遣都くんの方がもっと頑張れるからね』と言われてて。たぶん、お互いを刺激していたんじゃないですかね。あまりにも遣都くんのことを言われるんで、嫌いになりそうでしたもん(笑)。
 私、今まで男の子にライバル心を持つことが多くて、女の子にライバル心を持つことはあまりないんです。まして今回は相手役が男の子だったんで、ライバル心むき出しでしたね。負けられないなと思って。役の上でもそうだったんで、いい関係性だったと思います」

林「僕もそうでしたね。あの子には絶対に負けられないって」

北乃「私、女の子だよ(笑)」

林「最初に一ヶ月近くひとりで練習した後に、同じ部屋で、一ヶ月の成果を発表するときがあったんです。一ヶ月の間に完全にやり切ったという自信があったんで、見せつけてやろうと思ったら、先にバテちゃったんですよ。それからは、絶対にあの子には負けない、という気持ちで練習を続けたんです」

北乃「バテたというか、最初スパーリングが出来なかったんですよ。やったこともないのに、いきなりやれ、と言われたんで。
 しかも遣都くんが照れてるんですよ。目を合わせないと、次に何が来るのかも分からないのにすぐに下を向いちゃって。だからコーチに『照れるなよ!』と言われたりしてました。そうすると、だんだんこっちも照れてくるんですよね。だから最初のスパーリングは緊張して、なかなか出来なかったですね。パンチを出すんだけど、当たらないようにしたりとか。無駄な動きが多くて。それでバテちゃったという感じですね」

林「スパーリングというよりも、女優さんとお芝居をしているような気分だったんですよ。目を離しちゃ駄目なんですけど、自分の思ったように打てる技術があるわけでもないので、とりあえず打ってましたね」

ーー女の子を殴ることに抵抗はなかったですか?

林「最初のころは自分のパンチにそれほど自信がなかったんで、それほど抵抗はなかったんですけど、練習を積み重ねて再会したときは、怖かったですよね。でもあれだけ練習するとボクシングが出来るようになるんですよね。だから当てたらどうしようとかという思いは無くなりました。」

北乃「だから当たったときは逆にビックリしちゃうんですよね。蹴りが当たっちゃったのは一回だけでした。
 私のようなファイタータイプは早さは求めていないんですけど、逆に遣都くんがやってるのは、早くパンチを打たなきゃいけない役なので、ちょっと怖かったですよね」

ーー本作では共演者でもあり、プロデューサーでもあった俳優の大沢たかおさんですが、ふたりにとって大沢さんとはどういう存在ですか?

林「映画の中の大木会長のような存在です。名前の通り、地面に生えている大きい木のような、いれば落ち着くような。何か言ってもらえるとすごく嬉しいし、大沢さんに褒められると誰に褒められるよりも嬉しいんですよね」

北乃「ボクシングも、もともとやられていたから、練習が必要ないくらい上手でしたね」

林「誰が見ても『大沢さんすごい』って言いますね。説得力があるんですよ」

北乃「何でも出来るんだな、と感心しました。大阪弁も、大阪の人じゃないのに。北乃もやりましたけど、すごい上手だったんで本当にすごいと思いました」

ーー最後にDVDをご覧になる方にメッセージを。

林「大沢さんが言ってた言葉がすごく印象的だったんですけど、この映画には携帯電話とかは出てこないんですよ。今の若い人は真正面から人に向かうことの恥ずかしさがあると思うんですけど、この映画みたいに、まっすぐ相手に向かっていって、自分に返ってくる気持ちが大事なんだと思うんです。僕はこの映画でそういうことを学んだので、そういう気持ちが伝わるといいですね」

北乃「映画っぽい映画なんですよね。フィルムで撮影しているんですけど、撮り方やアングル、照明などがデジタルじゃなくて、とてもアナログな感じがしたんですよ。
 それとCG吹き替えなしというのがすごく嬉しいんですよ。ちゃんと練習期間を与えてもらえたというのと、大阪できちんと撮影をしたので、ちゃんと役に入ることが出来たんです。時間を与えてもらって頑張ったところは見てもらいたいですし、感謝したいですね」

執筆者

壬生智裕

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