井筒和幸監督の『ゲロッパ!』(03)や『パッチギ!』(05)で助監督を務めて来た弱冠27歳の新鋭、吉田康弘の初監督作品。
“映画は楽しくなければいけない!”というポリシーの下、初監督ながら大きな母の愛が再び家族を結び付けていく様をユーモアを交えながら描ききり、ベテランの大竹しのぶも「熱意があるだけでなく、才能が満ちあふれている」と絶賛。監督自身の経験も反映された型破りな母と子の物語に笑い、あたたかい気持ちになりながら、最後には家族の素晴らしさにあらためて気付いて幸せになる。『キトキト!』はそんな映画だ。

二人の子供の母親・智子役には2年ぶりの映画出演となる大竹しのぶ。ときにハチャメチャなまでの激しいアクションを見せるかと思えば、その一方では包み込むような優しい表情で母親の深い愛を表現。共演の石田卓也、平山あやも「まるで本物の母親のようだった」とロを揃え、大女優ならではの凄さを見せつけている。

主人公の優介には『蝉しぐれ』(05)でスクリーンデビュー以来、次から次へと話題作に出演し、いま最も注目の若手俳優、石田卓也。時には反発し、迷い悩みながらもやがて自分の居場所を見つけて行く若者を等身大に演じている。

今回は主演の石田卓也さんにお話を伺った。





台本を読んだ時の印象を教えてください。

あたたかい話だなと思いました。自分が何をしたらいいのか分からないというような部分で、優介に共感できる部分もありました。

吉田監督は撮影当時27歳と若い監督だったわけですが、一緒に組んでみていかがでしたか?

今回、初めて20代の監督とご一緒させてもらったんですが、ものすごくコミュニケーションがとりやすかったですね。監督の体験を元にした話だから、いろいろと教えてくれましたし、やりやすかったです。

大竹しのぶさんも平山あやさんも、みんな家族のようでしたね。

あんなに楽しい現場もなかなかなかったですね。監督と大竹さんがそういう雰囲気を作ってくれたんだと思います。どちらかというと僕は人見知りする方なので、あまりうまく話せないんです。平山あやちゃんも人見知りするところがあるんですが、その間に大竹さんが入っていただいて、いろいろ話してくれたんです。僕もちょっとガンバって話してみようかなと思いました。

大竹さんの演技を実際に見て、どうでした?

ホストクラブで再会するシーンがあるんですが、本番前までは僕とワイワイ笑い話をしていたのに、いざ本番になったら、涙をボロボロ流して泣いているんです。その切り替えがすごいなと思いました。

光石研さんとの共演はいかがですか?

光石さんとの共演は、本当に勉強になりましたね。細かい仕草や間の取り方がすごくうまいんですよ。あの間が少しでも崩れたら笑えないし、感動しない。本当に尊敬している俳優さんです。光石さんが出ている映画はたいがい見てますね。最近は映画館に行くとたいがい光石さんが出てますから(笑)。

今回はホスト役にチャレンジしていましたね。リサーチなどはされたんですか?

はい、やりました。僕がお世話になったホストの人たちはとてもいい人たちだったんですよ。街の掃除をやったりしていましたし、すごく親切で。外見で人を判断しちゃいけないなと思いましたね。

とはいえ、石田さんの役柄はいかにもといったホストの役ではなかったですよね。

僕はあまり売れてない新人の役でしたからね。等身大の自分で良かったんです。そんなに茶髪にはしてなかったですからね。それはきっと監督が狙ってたところなんでしょうね。

大竹さんのようにぶっとんでいるお母さんはどう思いますか?

大竹さんが演じたようなお母さんがいたら楽しいですよね。中学生の時なら、うっとおしいと思ってしまうかもしれないですけど。今だったら楽しいと思いますね。監督がこの映画を見た後に、お母さんに電話の一本でも入れてもらえたらいいなと言っていました。誰もが共感できるような物語だと思うんですよ。

この映画がきっかけで、お母さんに対する見方が変わったりしたんじゃないですか?

母親のことは演じる前から大切だと思ってたし、今でも大切だと思ってます。だからこの映画を母が見てくれたのが一番嬉しかったですね。自分でも一生懸命やって、満足しているところが多かったし。僕も反抗期はありましたけど、今は母親に感謝していると面と向かって言えるようになりました。

執筆者

壬生 智裕

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