毎回がゼロからのスタート。映画『パッチギ!LOVE&PEACE』主演、熱い男井坂俊哉単独インタビュー
数々の映画賞を総なめにした青春映画の金字塔『パッチギ!』(監督:井筒和幸)の公開から2年。2007年5月、キャストを一新させさらに感動もスケールもパワーアップした映画『パッチギ!LOVE&PEACE』が公開された。
本作は、パート1では描かれなかった、アンソン一家を明らかにするクロニクルである。舞台は68年の京都から74年の東京へ。兄妹の父親の若かった頃のエピソードも交えながら、三代にわたって受け継がれてゆく“命”のドラマを感動的に謳い上げる。
誰もが生きる勇気をもらえる笑いと涙の極上エンタテインメント作品。
前作同様にメガホンをとったのは井筒和幸監督。
主人公アンソン役の井坂俊哉さんと妹キョンジャ役の中村ゆりは、2,200人を越えるオーディションから大抜擢され、フレッシュな二人が『パッチギ!』第二章に新たな風を吹き込んでいる。
今回10月26日のDVD発売にあたり主演のアンソンを演じた井坂俊哉さんに撮影でのエピソードや全国試写一万人握手キャンペーンのお話などを伺いました。
——主人公アンソン役のオーディションを受けた経緯を教えてください。
最初はオーディションの話を普通に頂きました。前作の『パッチギ!』を観ている時に鳥肌が立った事もあって絶対に井筒監督の作品に出たいと思っていたので受けました。オーディションには前回アンソンを演じていた高岡蒼佑君がいたんでアンソン役はまずないだろうと思っていたんですよ。だけどいきなりアンソンやってって言われてそしたらこんな状態になっていて・・・
——では待望のアンソン役ということですかね?
いやー結構驚きの方が大きいですね。自分ではまったく予想してなかったですし最初監督と会ってオーディションでテストやっている最中にプロデューサーから「これから大変になるぞ」って言われて、受かったらどうなの?って思っている時に言われたんで、わけがわからなかったですね。(笑)
——オーディションで感じた井筒監督の印象はどうでしたか?
それはもう皆さんが思っている通りの方でしたよ(笑)
入った瞬間にどーんと腕組して座っていて、じっと見られて怖いオーラが出まくっていましたね。
——撮影を重ねることで印象は変化していきましたか?また井筒学校と言われるだけあり撮影現場は厳しかったですか?
変わっていきましたね。監督はもう熱血教師のように熱い方なので、撮影現場は厳しかったです。
——アンソン役を演じるにあたり何か役作りはしましたか?
アンソンっていう人間が今まで積み重ねてきたもの、壁っていうのが人並み離れていて、それをどう出していくかで悩みました。でも井筒学校って言うものを使ってそういうきつい状況を感じてこれがアンソンだって思って切り替えたりしていきました。
——関西弁と韓国語の勉強はどうしましたか?
関西弁に関してはスタッフの方に関西出身の方も多かったですし、共演した藤井さんが常に教えてくれたりしたので徐々に耳から慣らしていって覚えました。
また海外に行ったことがあったのでその時語学を覚えた経験を生かして覚えてきました。韓国語は、中でも在日韓国語っていうのがあって、またその中でも関東・関西って違うんですね、その辺で関西弁にするのが難しかったです。でもゼロからのスタートだと思えばやっていけましたね。
——アンソンの性格と井坂さんご自身の性格と共通する部分はありますか?
熱くなるととことん熱くなっちゃう性格ですね。まぁ悪い言い方になっちゃうと前しか見えなくなってしまうんです。でもそれじゃないとその壁を越えていけないんじゃないかなと思いましたね。
——息子役を演じられた今井悠貴君の印象はどうでしたか?また現場ではどうコミュニケーションを取りましたか?
一言で言うと卑怯です(笑)観てもらったらわかると思うんですけど、あの歯の抜けた可愛さと人懐っこい性格で映画の最後には歌も歌っていて、もう全員で卑怯だって言っていましたよ。本当に可愛い子でしたね。最初はどうやって接していこうかなって悩んでいたんですけど、今井君の方から寄って来てくれたんですよね。考え過ぎてしまうので今井君には本当に助けてもらいましたね。
現場にいるときは常に一緒にいて、肩車とかしてあげたりしていました。凄く仲良くなってお風呂も一緒に入りましたよ(笑)
——父親という役に関してはどうでしたか?
凄く難しい役だと思ったんですけど、台本を読んでいって今井君と接していくうちに変に父親って拘らないほうが良いなって思って自然とアンソンがチャンスに接する。台本を読んでそのままアンソンを作っていればそれが自分になっていく気持ちになっていく。現場に入ってしまえば、平気だったし現場の空気を凄く大切にしようと思ったので。それはやっぱり井筒組が作ってくれた空気のおかげですね。
やっぱり現場に入ってないと空気がわからないので100も200も考えていくんですけど、一回現場に入ったらすべていったん捨てて、ゼロにしていましたね。
——監督からの演技指導はありましたか
芝居するな!って言われましたね。色々考えすぎるなって言われてました。無心でやって凄く勉強になりました。
——全国試写会握手一万人キャンペーンはどうでしたか?
大変じゃなかったですね。やっぱり自分の中で「ありがとう」って言葉を言って頂けたのが凄く意外で、凄くそれが自分の心に入ってきて、しかも、握ってくれる力が半端なく強くて言葉とかも肌で感じることができたので、凄い握手をこれから自分のライフワークにしていきたいなと思うくらいです。この仕事をやっているとスクリーンの中だけで直に接することはないんでやっていけるならやって生きたいですね。凄くいい経験になったし活力になりました。
——全国回られて一番印象深かった土地は?
特に大阪は熱かったですね。パッチギの地元でもある関西なので全部熱かったし、みんな泣いて出てきてくれて手がパンパンになるくらい握ってくれてそれに負けないくらいで握り返したんで、終わったときに握力が10位上がっていましたからね(笑)自分たちのやってきたことが伝わったのでどこも印象深いです。
——パッチギを通して一番吸収できたことは何ですか?
吸収するものが多すぎて吸収仕切れなかったくらいです。本当に無駄なこと出来ないと思いましたし、一分一秒大切にしていきたいなと思いました。今までやってきたことを自分の中で出そう出そうとしていたんですけど、そうではなくて今までのものを全部一度捨ててゼロからのスタートで毎日現場に関わっていかないといけないんだなって感じました。
常にゼロから新しいものを出していきたいなって思います。
執筆者
大野恵理