国際的評価が高まるチアン・チアルイ監督が惚れ込んだ当時16歳の少女、リー・ミン。
初出演にして主演作『雲南の少女 ルオマの初恋』で甘く切ない恋心を演じきり、中国のアカデミー賞とも言える金鶏奨で最優秀新人賞を獲得した。
映画同様リー・ミン自身も中国の少数民族、ハニ族だ。衣裳をまとったリー・ミンは屈託のない笑顔と身振り手振りを交えながらインタビューに答えてくれた。




—オーディションはチアン・チアルイ監督自身が様々な高校に出向いて選出したんだそうですね。オーディションに参加しようとしたきっかけって何ですか?

やりたいと思ってオーディションを受けたわけではないんです。ある日学校に行って、帰ろうとしかけていたときに、これから映画監督が映画に出る人を探しにくるからいらっしゃいと先生にひきとめられたんです。「じゃあ、まあ、行ってみようか」と。映画は自分にとって遠い存在なので選ばれることも無く、行っても無駄足だろうと思っていました。監督と反対方向を見ていたら、「そこの赤い服を着ている子!」と三回くらい聞こえたんです。ふと気がつくと赤い服を着ている女の子は私しかいないんです。そして振り返って挨拶しました。後から聞きましたが、その挨拶した仕草で監督は80%以上「この子にしたい」ということを決めたそうです。選ばれたと聞いたときはとにかく涙が出ました。

—映画が自分にとって遠い存在だったのに、どうして涙が出てきたんですか?

驚き、信じられないといった涙ですね。ありえないことほど、人に起こりうるのだなという驚きです。

—とても映画初出演とは思えない自然な演技だったんですが、演技経験はあったんですか?

いえ、それまで演技の勉強を全くしたことがありませんでした。作る側に参加したことはもちろん、自分に才能があるとかそういうふうなことも全くなかった。もし私の演技が自然に見えるのだとしたら、それはすべて監督のおかげだと思います。監督の演出の仕方、演技の経験のない女優に自然に演技をさせるという監督の腕があってこそのことだったと思います。監督は私に台本を一切見せずに口で説明した上で私に自由に演技をさせるといった形でした。

—チアルイ監督についての印象はどうでしたか?

監督は非常によくできたかたで映画の撮影の時に大声で怒鳴りつけたりしませんでした。俳優達にとてもいい雰囲気を作る方ですから私は緊張したり怖がったりすることなく、映画を撮ることができました。私にとって監督は私の師だと仰いでいます。私は性格的に癇癪を起こすのが嫌いなんですね。とても穏やかで優しいところが大好きです。

—雲南地方のロケーションがとてもキレイでしたね。棚田が光を反射してきらきら輝いていて。

私は棚田を愛しています。棚田は美しさだけではありません。棚田自体が私達民族として愛する対象だと思います。棚田はハニ族にとっては働く上でのパートナーという感じでとらえています。非常に大切なものです。私の心の中にあるものは棚田だと思います。
映画の見所はやはり美しい自然と景色だと思うんですね。日本の皆さんも気に入って下さると思います。監督は美しい雲南の自然とそこに暮らす人々の美しさを最大限に引き出した映画の撮り方をされていると思います。そこが非常に見所だと思いますね。

—主人公ルオマとの共通点はありますか?

ルオマのキャラクターと私は性格が似ていると思います。あとハニ族の人間としても共通点が非常にあると思います。彼女の考え方はハニ族が共通して持っているものなんです。ルオマを演じるときに自分のフィーリングに従ってルオマを演じていました。もし違いがあるとすれば恋愛関係ですね。そこだけが少し違います。

—どういう違いがあったんですか?

ルオマは初恋の想いを抱いてわりと能動的に働き掛けていく役だと思うんですが、当時私はまだ初恋を体験してなくて、ルオマの気持ちを捉えるのが難しかったです。映画でそこが一番難しかったですね。

—日本の公開が6月16日に迫ってきていますが、これから作品をご覧になる皆様に一言お願いいたします。

ハニ族と日本人は私から見ると共通点があると思います。私たちは昔、木の下駄を履いていました。過去は文字もなかったわけですし、ハニ語のしゃべり方が日本語に似ていると感じています。日本の方に親近感を持っていただけると思います。

執筆者

加藤 容美

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