太陽へ向かった彼らが、今、あなたに問い掛ける。『サンシャイン 2057』キリアン・マーフィ インタビュー!
西暦2057年、太陽の死滅により滅亡の危機にさらされた地球を救う為に8人の乗組員が太陽へと旅立った。太陽に核装置を投下することで再活性化を図る”イカロス計画”を遂行するのだ。
しかし思わぬ事態が発生し、物語は大きく傾いていく。
様々な思いを抱えて向かった宇宙で繰り広げられる予想もしなかった衝撃の数々。
果して彼らの前に立ちはだかるものとは…!?
イギリスの鬼才ダニー・ボイル監督が贈る、史上最高のSFヒューマンアドベンチャー『サンシャイン 2057』。
『28日後…』から5年。監督と再びタッグを組み、本作で主人公を演じたのはアイルランド出身の実力派俳優キリアン・マーフィだ。
数々の映画でその存在感を放ち、多くの映画ファンを魅了してやまない彼が今回演じたのは物理学者・キャパ。
選択という責任を負い、それでも目的を果たそうとする彼の複雑な心境を見事に演じきった。
今回は、映画界で活躍し続けるキリアンの不思議な魅力に迫ってみました!
——個性的な役をやられることが多いですね。出演される作品を選ぶ上で大事にされていることは何ですか?
「僕は作品選びではいつも慎重なんです。まず重要なのはシナリオ。いい映画なのかはシナリオで決まりますから。それと、僕が演じるキャラクターが今まで演じたものと違うものであること。同じような役を繰り返して演じることは絶対にしたくないんです。常に新しいものにチャレンジしていたいと思っているから。その次にくるのが監督ですね。」
——今回の役でキリアンさん自身に似ているところはありますか?
「そうですね・・・キャパは僕より頭がいいですね(笑)。とても寡黙な男だし、僕は彼のような勇気は持っていません。実は、僕はあまり演じるキャラクターと共通点を探したりはしないんです。むしろ自分から離れていればいるほど役者としてはおもしろいんですよ。」
——この作品で一番エキサイティングだったことはなんですか?
「実は撮影中に子供が生まれたんですよ!あれは人生で一番エキサイティングなことでした。撮影に関して言えば、無重力状態や飛行機のシュミレーションを体験したことですね。あれは楽しかったですよ。」
——日本とアイルランドを比べて、どうですか?
「真田さんとは気があって、よく一緒にご飯を食べたし、歌も歌ったし、お酒も飲みました。アイルランド人も歌やお酒が好きだから、気質は似てるのかもしれないですね(笑)。」
——今更な質問ですが・・・なぜ俳優になったんですか?
「アクシデントみたいなものでした。最初は法律の勉強をしながら音楽家を目指していたんです。でも法律の勉強が嫌いで(笑)。そういう時期にたまたま俳優というものに興味を持って、演技の勉強を始めたんです。そしてそれがとてもおもしろくて、他のものは全部自分にとって重要じゃなくなってしまった。演じることが生きがいになって、今の自分がいます。」
——最初は舞台から始められたんですよね。
「舞台は4年くらいやってました。そこから映画に変わったのは、やっぱり好奇心ですね。映画は子供の頃から観ていたし、その上演技の勉強を始めていたから。」
——この作品の素直な感想を聞かせてください。
「とても知的な映画だと思いますよ。僕が好きなクラシックな映画のように、この映画は知にチャレンジし、訴えかけています。それに太陽に行くという設定は今までありませんでしたよね。しかもこの作品中で太陽はまるで1人のキャラクターであるかのように描かれています。このアイデアはとてもおもしろいと思いました。そして、CG。グリーンスクリーンで撮るのが流行である今の時代ですが、それを更に超えてビジュアル的にも新しいところがすごいですね。それプラス、俳優のパフォーマンスが本当に素晴らしいです。」
——キャパとピンバッカーは同じ目的を持っているのに正反対の道を選びますね。
「ピンバッカーは非常に極端な考え方を象徴しているんだと思います。宗教や神など、極限にあるものですね。そしてキャパは太陽の中に太陽を作る、というとても理論的な目的を遂げようとすることで人間の進歩というものを象徴しているんだと思います。」
——”人間は塵になる”というセリフがありますが、人間が生きて残せるものって何だと思いますか?残したいものって何ですか?
「何もないですね。僕にとっては息子に残したい言葉でもありますが、”人間は死ぬんだ”ってことです。太陽が死ぬのは約50億年先です。時間はまだありますから、とにかく死ぬということをわきまえた生き方を大事にして欲しいんです。」
——この作品はキリアンさんにとってどんな作品になりましたか?
「作品に出たことが自分のキャリアにどうつながるかなんて考えないんです。とにかく俳優として、この作品はチャレンジでした。」
——キャパが星が生まれる瞬間に憧れたように、見たいものや瞬間はありますか?
「父親になったばかりだからかもしれませんが、子供がこの世の中で安全に成長してくれるのかどうかを見たいですね。それを一番願っているから。子供が無事に育ち、旅立っていく姿を見たいです。」
——ラストシーンはとても美しいものでしたが、どんな気持ちでした?
「現場では光の壁を監督が作って、そこにものすごく強い風を当てていたんです。あれは恐怖の叫びではなく、むしろ魂の高揚でした。それが1秒であったのか、永遠であったのか。あの瞬間、時は止まったんです。」
——一番好きなシーンは?
「好きなシーンはいっぱいあります。その中でも印象的なのは、ラストの方で宇宙服を着て転ぶシーンです。普通はヒーローってかっこいいのに、キャパは転ぶんですよ(笑)!とても難しかったんですが、監督からは”もっとやれ!”って指示が何度も飛びました。世界があと数秒で終わるという時に立ち上がろうとする、あのシーンが一番ですね。」
——『28日後…』でも本作でも2通りのエンディングがありますよね。珍しいと思いますが、どう思いますか?
「本作のように世界が終わる、みたいな大きな物語にはそれに見合うエンディングが必要ですよね。そうじゃなきゃバランスが取れないから。監督としてはいろんな結末を考えるんですよ。楽観的なものと悲観的なものを。基本的にはテストスクリーニングをやってみて決めるんですが、監督としては最後に希望を与えたいと思ってあのような結末も考えるんです。」
——今仕事をしたい監督や俳優さんはいますか?
「本当にいっぱいいるんですよ。全員の名前を挙げることなんかできないのに、例えばここで誰かの名前を出したら限られてしまいますよね。だから言わないことにしているんです。」
——生きていく上で大事にされていることは何ですか?
「チャレンジすることが人間にとって大切なことだと思うんです。”1日に1回、自分が怖いと思うことをしなさい”という言葉があります。毎日やるのは無理かもしれませんが、そういう生き方はいいんじゃないかと思いますね。」
執筆者
umemoto