若きカリスマ・御堂一沙を中心に巻き起こる男達の任侠大河ドラマ『戦 IKUSA 第弐戦 二本松の虎』。本作は”任侠映画”というもののイメージをくるりと変えてしまう「戦」シリーズの第2弾である。
「戦」シリーズには他のいわゆるエンターテイメントと言われる映画にはない、不思議な魅力があるのだ。それは本田隆一監督と脚本の永森裕二の最強タッグが成せる技。一作目では「やくざがアニメを作る話」、そして本作では「やくざがラーメンを作る話」という奇抜なアイデアを元に究極のエンターテイメントが完成したのだ!
また、前作に引き続き出演している津田寛治や遠藤賢一ら豪華キャストの普段見ることのできない意外な一面が映し出されているところも見所である。

これは仁侠映画というジャンルに興味のない人にも是非観てほしい作品。そんな映画を作り上げた本田監督に話を聞いてみた。


——やくざのアクション映画だと聞いて観たんですけど、かなりおもしろかったです。
「一応アクションもありますね(笑)。やくざ映画だと思って観てもらったほうが嬉しいです。でも”バリバリのやくざモノです”って宣伝して、そういうものを求めて観に来た人は「ん??」て思うでしょうし。難しいけど、この映画をどう売るかって考えるのは面白いと思いますね。永森さんが脚本で、僕が監督だっていう時点でもう普通のやくざモノじゃないってわかる人もいますけど(笑)。パッケージを見て本格やくざモノを期待して観た人はどう思ったんだろ?(笑)」

——絶対面白いと思ってもらえると思うんですけどね。
「それは津田寛治さんも言っていました。普通のトラックの運転手とかでやくざモノを観ようと思って観た人はどう思うんだろうねって。でも「これはギャグです」っていう撮り方はしてなくって、あくまで真っ当にやくざを本格的な撮り方で出してるんです。」

——撮り方は凝ってますよね。
「作品自体はすごく真面目な作り方をしているんです。ただ台本が面白いから、面白い話をちゃんと撮ろうと思って作っていたところはありますね。」

——台本からあんなに笑えるんですか?
「もう台本のまま撮ってます。永森さんは普段はサラリーマンをされていて、ノーギャラでこの脚本を書いているんですよ。毎月1本邦画の脚本を書かれていて、しかも全部当たってるんですよね!全くのオリジナルであるところがすごい。よく思いつくなと思いますね。永森さんはずっと女性を描いてる台本が多かったので、1作目の台本がやくざモノだったのがすごく嬉しかったです。」

——ガンダムのセリフも台本の時点で入ってるんですか?
「全部入ってたものです。永森さんがガンダムが好きなんですよ。実は僕も高野君もガンダム知らないんです(笑)。だから2人で撮る時は「これどういう言い回しなんですかね?」とか相談してました(笑)。」

——1作目と2作目は結構続けてすぐ撮られたみたいですが。
「でも1年空いてますよ。1作目が去年の8月で、2作目が今年の5月ですから。シリーズものって間が空いちゃうと、せっかくついたファンが忘れてしまうっていうのがあるので、もっと早く出そうって言ってたんです。でもやっぱり1作目のキャストが2作目にも出てもらうためには、なかなかスケジュールが合わなくて。」

——キャストが本当にすごいですよね。
「あれはもう斎藤芳子さんの力です。普通にVシネに出ている役者さんが真剣にコメディやってくれてるんですよね。でも皆ホントに楽しんでやってくれてて。」

——ずっとVシネを撮られたのは前作が初めてなんですか?
「どっからがVシネなのかよくわかんないです(笑)。前に撮った『脱皮ワイフ』もエロVシネっていう括りでやってたんですけど、UPLINKでかけてもらったので一応劇場映画ってことになってます。」

——戸惑いはありませんでしたか?
「台本がおもしろかったので全然無かったです!元々日活アクションとか東映やくざが好きだったので、やっと男モノが撮れる!という感じで嬉しかったですね。」

——やくざ映画ですが、何かリサーチはしましたか?
「やくざモノのVシネってほとんど観たことがなくて。でも昔の東映Vシネは観ていて、深作監督の『仁義なき戦い』とかすごく好きなんです。だから今のやくざVシネは全然観ずに、昔の”東映実録モノ”のイメージで撮りました。『仁義なき戦い』はホントに何回も観ていて、人物が出てくるたびにストップモーヨンになって名前が出るところなんかは思いっきりマネしてます。」

——シネスコで撮ったのは?
「『脱皮ワイフ』では普通のサイズより細長く撮ろうという企画でやってたんです。だからその頃からですね。でも元々はたぶん亀井さんが思いついたんですよ。プロモーションの1作目で亀井さんがあのサイズでやってみたら永森さんが気に入って。僕が3作目、4作目を撮る時もこのサイズで撮ってくれって言われたんです。奥行きなんかがわかりにくくなっちゃうので、ビデオ作品で観るともったいないんですけどね。シネスコはアップを撮る時とかは難しかったりするんですが、やっぱ面白いです!」

——どう難しいんですか?
「例えば真ん中に顔を持ってきた時、横がスカスカになっちゃうんですよ(笑)。そういう時はモノなめで映したり、斜めで撮ったりして何とか空間を埋めるんです。後は、立ってる人物のフルショットがもっと難しいんです(笑)。身体全体を入れたフルショットを撮る時は、アップを撮る時よりも空間ができちゃいますから。でも東映の70年代のやくざ映画とかを観てるとそれがかっこいいんですよ!だからいちいち手持ちで斜めにして撮ったりしました。」

#——1人で歩いて行くシーンが素敵でした。
「個人的にはああいう情景とかは苦手なんですけどね(笑)。セリフとか何か出来事が起こってる方が好きなんです。このシリーズはセリフが多いですよね。しかも1作目よりも2作目がほとんど会話劇になってるから、引きで見せるとたるんじゃうと思ったので会話のシーンは意識的にカットを割っていきました。」

——高野さんはすごくハマり役ですね。
「それは皆言ってました。ホントにハマってますよね。」

——遠藤さんのキャラがいいですね!
「アドリブも結構あったんですよ。どこまでアドリブかわからないくらいでした(笑)。一応台本どおりにやって、そのままカメラが回り続けるとアドリブが入るんです。カメラが回ってればアドリブを止めることはないですね。遠藤さんが入るとカットを割らなくなりますね。見ていた方がおもしろいと思うので、そういう気がなくなります。」

——何日かけて撮られたんですか?
「7日間です。『脱皮ワイフ』とかは同じ40分の作品とかで4日間とかだったから、それに比べれば時間はかけてる方ですね。合宿でやってたんですけど、毎晩8時か9時ぐらいにはもう撮影終わって、後は飲み会ですね(笑)。その日によって集まってる役者さんが違うからおもしろかったです。朝は6時〜7時ぐらいからやってました。」

——衣装は?
「パジャマとかありましたけど、台本に「かわいいパジャマ着てるんだな」っていうセリフがあったのでかわいいヤツを探したんですよ。。千太郎君なんかは自前で持ってきてましたね。黒石組のキャラクターをハッキリさせようというのは意識的にやっていて、それぞれかわいいパジャマとか、裸のまんまとか、ジャージとか着せました。」

——ラーメンはあの通りにつくるとおいしいんですか?(笑)
「撮影が終わってつなげたモノを永森さんに見せたんですけど、1作目はエンドロールで作ったアニメが流れるのに、今回は何もなくて。何かないの?ってなったので慌てて後で撮りに行きました。後輩にラーメンマニアがいたので、電話して作り方を聞いたんです。でも撮りながら作っていったらおいしかったですよ(笑)。あと、永森さんの脚本にはやたら商品名が出てくるから、たまに大丈夫なのかな?って思います(笑)。」

——1作目で作るアニメはなぜ色をつけなかったんですか?
「だって裏ビデオの監督が上手いアニメ作っちゃったらウソでしょ(笑)。やっぱりただの裏ビデオ監督がアニメを作ったらあんなもんだろうなと。あれは僕の知り合いに頼んで作ってもらったんだけど、ホントはCGとかを使ってすごいものを描く人だから、頼むのがすごい大変でした(笑)。」

——古い映画の他にどういう映画が好きですか?
「石井輝男監督がものすごく好きで、結構作品を手伝ったりしていたんです。8月12日から始まる石井監督作品のオールナイトにゲストで呼ばれてるんですよ。」

——大阪芸大で映画を撮っていたそうですが、映画を撮るようになったのはなぜですか?
「高校の時にクラスで舞台をやって、すごく楽しかったんです。もし芸大に行って映画を撮ればこんな日々が4年間続くんだと思って。それがキッカケですね。」

——この続編はやるんですか?
「ここまできたらやると思いますよ。御堂一沙が日本を統一するまで終われないですね(笑)。一応やっと二国統一したところだし。でも永森さんも『戦』の台本は難しいって言ってましたね。1作目はアニメ、2作目はラーメンっていうモノを作る話だし。「やくざだってモノを作れるんだよ」っていう御堂のセリフにもあるように、シリーズを通してそれがテーマになってるからそれも考えなきゃいけないんですよね。」

——本田監督オリジナルの映画は撮らないんですか?
「次に永森さんとやるのはオリジナルの企画、脚本ですよ。昭和っぽいモノがすごく好きなので、昭和の時代を舞台にして久しぶりに思いっきりやらせてもらうつもりです。」

——なぜ昭和が好きなんですか?
「何でですかね・・(笑)。今ないものだからかな?あの時代を経験してない人間してないから好きなのかもしれません。小学生時代に下手に経験した80年代の文化とか嫌いなんですよ(笑)。もし自分と同じ世代で80年代が好きな人がいて、当時のことを聞かれても何も答えられませんもん(笑)。」

——それは映画からきているものなんですか?
「映画とか音楽とか本とか。最初はたぶん音楽から入りましたね。『戦』は全部ジャズで通したいと思っているんですよ。」

執筆者

umemoto

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