1970年代半ばから90年代半ばにかけての30年間の激動の中国・北京を舞台にした父と子の葛藤の物語『胡同のひまわり』で、主人公シャンヤンの幼年時代を演じた少年チャン・ファン君が、チャン・ヤン監督ともに来日した。1万人の候補者のなかから選ばれたというチャン・ファン君は、監督の子供時代に似ているとか。自分の生まれる遥か前の時代の子供を演じた現代っ子のチャン・ファン君に、映画初出演の経験を聞いてみた。

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——まず、最初に、いちばん難しかったシーン、楽しかったシーンはどんなシーンでしたか?
チャン・ファン(以下CF)「泣くシーンはどのシーンも難しかったです。僕はふだんあまり泣かないので、とても大変でした。楽しかったのは、パチンコで石をぶつけてお父さんに怪我をさせるシーンです」
監督「そう言っているけど、泣くのはうまかったんですよ。なかでも、映画が見られなくて泣くところ。寒かったけど、うまく泣いてくれました。でも、いちばん良かった“泣き”のときフィルムがなくなっちゃって(笑)」
——泣くために努力したこととか、コツは?
CF「助監督の奥さんとか僕のお母さんが厳しいことを言ってくれると、いつも簡単に泣けました」
——映画のなかのシャンヤン君は、お父さんに絵を描けと言われて友達と遊べないことがとても辛そうでした。チャン・ファン君は撮影中辛くはなかったですか?
CF「ううん」
監督「彼は、友人役の子達とよく遊んでいました。でも、主役なので遊んでばかりもいられないんです。向こうで他の子たちが遊んでいても、自分はこっちで出番を待っていなければならない。気持ちは向こうにあるわけで、そんなときは辛そうでしたね。ちょっと目を離すと、すぐに逃げ出して遊ぼうとしてました」
——(劇中の父子の関係はよくないですが)あなたとお父さんの関係はいいですか?
CF「しょっちゅう口げんかしてます。僕は、言い返してます」
——映画出演をお父さんは喜んでくれましたか?
CF「お父さんは嬉しかったと思うんですけど、あまり表に出しませんでした」
——お父さん役のスン・ハイインさんと、お母さん役のジョアン・チェンさんは優しかったですか?
CF「お父さん役のスン・ハイインさんはすごく優しくて、アイスキャンディを買ってくれました。ジョアン・チェンおばさんは、一緒のシーンがあまりなかったんだけど、思うように演技させてくれました」
——映画に出てきた昔の遊びはやったことがありましたか? いま、好きな遊びは?
CF「やったことなかったです。今、いちばん好きなのはテレビゲーム」
監督「子役たちには、助監督が撮影一ヶ月前から徹底的に当時の遊びを教えました。何しろこの子たちは木登りも屋根に上ることもできなかったから。一ヶ月間思う存分そういうことをやらせたので、その後、お母さんたちからすごく野性的になったと言われました(笑)」
——自分の出た映画を見た感想は?
CF「僕の演技が素晴らしいと思います。機会があったらもう一回映画に出たいです」

執筆者

稲見 公仁子

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