みずみずしいタッチで、日常生活の中での日韓関係を描いたオムニバス青春映画『まぶしい一日』。その中のひとつ、≪宝島≫は戦中に祖父が残してきた宝物を探すために済州島へ来た、エイコ(杉野希妃)とミエ(森透江)のロードムービーだ。
エイコを演じた杉野希妃さんは、現在慶応大学経済学部在学中。『猟奇的な彼女』が日本で公開されてから、韓国の映画に興味を持つようになり、去年一年間韓国へ語学留学をした。留学中にオーディションを受け、見事映画初出演にして主演となった作品が『まぶしい一日』≪宝島≫である。
現在は日本で復学しているという杉野希妃さんに、撮影時の思い出などを話してもらった。

協力:上島珈琲 大門店



—— オーディションでも、森さんとコンビを組んでいたとのことですが。
『会場に行く前に偶然透江ちゃんがいて、オーディションでたまたまコンビを組みました。監督は、私たち2人を見て、“ミエとエイコがそこにいる”と思ったようです。オーディションの時に、『2人で受かると良いね』と言っていたのですが、まさか本当に2人で受かるとは思っていませんでした。』

—— 映画では杉野さんはほんわかしていて、森さんはとてもクールな役柄ですが、実際はどうなのでしょうか。
「実際は全然違くて、透江ちゃんは凄く明るくて面白くて、可愛い人です。2人でいると、二人ともぼけで、笑いっぱなしでした。(笑)」

—— エイコがお腹を空かせて歩いているシーンで、「今格好良い人が現れて歌ってくれたら、元気86倍になるのに。」というセリフがありましたが、“86”という数字には何か意味があったのですか。
「初め、シナリオにそのセリフはありませんでした。(笑)透江ちゃんと私と撮影スタッフの安藤さんでシナリオを日本語に手直ししている時に、私は“元気もりもり“が良いと言ったら、安藤さんが『86倍が微妙過ぎて良い』と言って、監督も『良いんじゃない』ということで決まりました。意味は全くないです。(笑)」

—— 一度韓国語で書かれたシナリオを、日本語に直したのですね。
「監督の書いたシナリオを、安藤さんが翻訳していました。初め監督が大阪弁が良いと言っていたので大阪弁で書かれていました。でも、安藤さんは福岡出身だし、私も透江ちゃんも大阪弁を喋れなくて、大阪弁の人が聞いたら違和感を覚えるかもしれないということで、標準語にしました。」

—— エイコはユキに国籍について隠していましたが、ご自身はそのような経験はありましたか。
「私は幼いころから在日であることを全く隠さずに生きてきたので、そういった経験はなく、初めエイコの気持ちが分かりませんでした。今まで在日であることに悩んだこともなかったので、エイコを通じて在日の悩みを理解できた気がします。そういう意味で、在日について勉強するいい機会でした。」

—— 完成作品を初めて観た時の感想は。
「映画初出演、初主演だったということもあって、観た時ショックを受けました。(笑)もっと出来たのに…と。でも自分を客観的に見て、問題点もいっぱいみえてきたのでこれからもっと頑張ろう、もっといい演技をしていきたいと思っています。」

—— 実際作品を観て驚いたことなどはありますか。
「監督が『このシーンはすごく重要なシーンだからかね』と、凄く拘ってて何度も撮り直したりんごを食べる場面があったのですが、映画を観たらそのシーンがカットされていました。(笑)監督に理由を聞いたら、『時間を短くしなければいけなかったから仕方なく』と言ってました。(笑)」

—— 撮影中、印象的だったシーンは。
「スクーターの持ち主が歌を歌ってくれるシーンで、6月だったのに、真冬かと思うくらい凄く寒かったのです。その歌がとても良くて、聴いていて心が温まりました。それと、スクーターの持ち主が着替えるために入っていく倉庫があるのですが、私たちの出番がない時に、透江ちゃんと2人でそこで寝ていました。(笑)撮影を観ていたかったのですが、邪魔になるから入ってろ!と言われて。(笑)」

—— 歌ってる男の人はかつらを被るなど、変な格好が印象的ですよね。
「そうなんです(笑)でもあの格好は実はあの人の私物で、衣装持ってきてといったらあれを持って着替えて来て、スタッフ一同爆笑でした。(笑)でも、あの格好も、映画のファンタジー的部分を表しているなと思います。」

—— 役柄でも在日の役でしたが監督からはどのような演技指導がありましたか。
「私は何も考えずに、ちょっとぼけてるような感じで、のこのこついてきている感じでいわれました。ゆきえちゃんは毎日笑っていて、笑っちゃダメと言われてました。(笑)」



—— 脚本を読んだ時はの感想は。
「初め読んだ時、題材が古いのではと思いました。在日だからといって差別する人はいないので、『今の日本はこういうことはありませんよ。』と監督に言いましたが、監督は『在日の題材は絶対に使いたい』ということでした。韓国人の描く日韓の問題としては面白いと思います。韓国人だからこそ描けたものだし、映画を観た韓国の若者は在日についてあまり知らず、『なんで在日であることを隠しているのか、意味がわからない』と言われました。在日について知らない人もいることを知り、韓国で公開されて良かったと思いました。」

—— 『猟奇的な彼女』から韓国映画に興味がでたとのことですが、それまでは韓国映画には興味はなかったのでしょうか。
「韓国は好きでしたが、韓国のエンターテイメントは遅れているのではという変なイメージがありました。『猟奇的な彼女』からは韓国の作品を多く観るようになりました。」

—— 韓国の監督で好きな監督はいますか。
「キム・ギドク監督、ホ・ジノ監督、ホン・サンス監督が好きです。コメディも好きですが、内面の葛藤とか人間模様を描いた作品が好きです。」

—— 実際韓国に留学してみて感じたことはありましたか。
「食べ物が辛いです。(笑)人も熱くて、仲良くなれば徹底的に仲良くしてくれる。あとはやっぱはっきり言う民族だなと。時間が経つと私もそれに馴染んでいました。(笑)」

—— 釜山映画祭で『まぶしい一日』が上映された時に、キム・ギドク監督と会い、映画にも出演したとのことですが。
「映画祭で会て話して、その後にメールがきて、映画面白かったよと言ってくれました。作品に出演は、人伝いにオーディションを受けないかと言われて受けて、決まりました。本当に小さな役ですが、主人公と若干からむ役で出演しています。」

—— これからどのような役者になりたいですか。
「どういうものというのに固定せずに、狂った役、悪女、面白い役と、何色にでも染まるような役者になりたいです。まだまだ未熟者で課題は多いのですが、頑張っていきたいです。」

—— この映画を観る人にメッセージを。
『まぶしい一日』には、3つの物語があり、韓国人が考えた日韓問題が描かれていて、笑ったり泣いたりと、色々なことを考えさせられると思います。韓国に旅行しているような気分で観れる作品。色々な人に観てもらいたいと思います。」

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