『男たちの挽歌』から20年、香港映画がまた、新たなる伝説を生んだ。香港アクション界の重鎮サモ・ハンとドニー・イェンの対決が白熱する<バイオレンス・オペラ>が3月4日より日本でロードショーされる。サモ・ハン扮する香港黒社会のドン、ポーの逮捕に命をかける刑事たちがいた。しかしいつもあと一歩のところで逃げられてしまう。さらに、刑事たちのリーダー、チャン刑事は大病を患い、あと数日でリーダーの座を降りなければいけなくなってしまう。そこで署内でも有名な武闘派刑事マー刑事(ドニー・イェン)が新リーダーの座に就任することになったのだが…。ポーを監獄にぶち込もうとする敏腕刑事達の前に、殺し屋ジェット(ウー・ジン)が立ちはだかる。そして最終決戦やいかに!?

2006年3月4日より”男泣き”全国順次ロードショー!



役作りの上で、苦労した点・工夫した点はなんですか?
「ジェットという役には、人間性というものがないんですね。普通演技をする時は、役を自分の中にひっぱってきて、心の奥深くの感情を理解する努力をします。しかしジェットにはそう言った感情と言ったものがないんですよ。だから刑事達と戦う時、僕は自分自身を狼だと思って戦っていました。狼が獲物を狙う時はとても残酷で、そしてすぐ殺すのではなく、獲物の体をもてあそび飽きたら、ばっさりと息の根を止める。その状況をイメージしていました。」

ドニー・イェンとの戦いで見せたナイフ裁きお見事でした!相当な練習を重ねたのですか?
「いいえ。あれはまったく練習をしていません。あのようなシーンの場合、相手がどう出てくるかが重要になるので、練習する時間が無駄なんです。僕は、幼い時から体や筋肉の使い方が体に染み付いていますから、それまで扱ったことのないような武器でも本能で使い方が分かってしまうんですよ(笑)。ドニーとの45秒間のシーンはまさに、本能の反応が生んだ賜物ですね。」

SPLは男の生き様のぶつかり合うドラマだと思うんですが、ウー・ジンさんの生きていく上での信念を聞かせてください。
「ポーの、『天は公平である。間違ったことをすれば必ず報いがある。』というセリフが僕には響いてきました。しかし白と黒の間に灰色があるように、善と悪にも区別がつかないものがあります。だから、僕は何にも犯されず、汚されない純粋に綺麗な水でいたいと思います。長江の源流はヒマラヤにあり、中国大陸に流れ、中国の支流と混ざり海に流れ出します。もともと綺麗な源流にも、汚い水・澄んだ水が混ざってしまいます。僕は純粋な水であり続け、役者人生というものをやり遂げたいと思っています。その中で、僕は多種多様な人間を演じて、自分なりのスタイルを開拓していきたいんです。レインマンのダスティン・ホフマンのような役もやってみたいし、狂人や目が見えない役も演じてみたい。今回の『SPL』でのジェットは、僕の人生に新たな色を加えてくれました。本気を出せば、僕は人を殴れてしまうから、体の力は抜きつつ、かつリアルさは残して体を動かして、でも役者として頭は緊張度を高めさせないといけない。これの体験は本当にとてもいい経験になりましたね。今回は武闘家の一面を残した役だったけれど、今年中にまた違った僕の役者としての一面をみなさんにお見せしたいと思います!」

最後に、これから『SPL』を見る皆さんに一言お願いします!
「中国では旧正月になりました。皆さんも楽しい旧正月を!今年も、皆さんにとってよい年になりますように。」

$ インタビュー中、目の前にあったスプーンを使って実際にナイフ裁きを見せてくれたり、と、映画からは考えられない気さくな一面を持つ、ウー・ジン。「今年中には…」という言葉を信じて、彼の次回作を待ちたいと思う。

執筆者

林 奏子

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