主人公と、人間の言葉を話す無愛想なイヌとの奇妙な交流を描いた ハートウォーミングコメディ『イヌゴエ』横井健司監督インタビュー!
一見キュートなフレンチブルドッグが、口を開けばお下劣な”ワン”ウェイトークが、なんと関西弁で炸裂!
2006年、戌年にふさわしい、とっても楽しくて、ちょっぴり切ない、「犬」映画『イヌゴエ』。内気で冴えず、やることなすこと全てに慎重、恋にも臆病の主人公直喜。人生に消極的だった不器用な青年が、人間の言葉を話す無愛想なイヌとの奇妙な交流によって、少しずつポジティブに成長してゆく姿を描くハートウォーミングコメディだ。
監督は、遠藤憲一&鈴木紗理奈主演『SEMI-鳴かない蝉』(03)、『ヒッチハイク 溺れる箱舟』(04)の横井健司。コメディーは初挑戦という横井監督に、製作の経緯や、撮影時のエピソードについて話してもらった。
〔情報提供:(株)バイオタイド〕
『イヌゴエ』のお話はどんなところから始まったんでしょう?
これまで何本かお仕事した永森さん(『イヌゴエ』製作・原案・脚本)からお話をいただいたのが最初ですね。話をもらったときには“犬もの”で感動させてみようじゃないか、という話から始まったんですが、永森さん自身がリサーチをしていくうちに、犬と人間がわかえりあえるっていうのは人間の思い過ごしなんじゃないか、ストレートに感動させるのはちょっと違うんじゃないかと。そういう経緯があって、第1稿の台本をもらった時は、今の『イヌゴエ』のようにコメディ色が強いものになってました。自分はいままでコメディをやったことがなかったのですが、でも台本がおもしろかったし、実際に映像化できた時にもおもしろくなるだろうな、という予感があって。だからぜひやらせてくださいということになりました。
犬がしゃべる、しかも関西弁でおっさん声という設定は最初から?
そうですね、犬が話すっていうのは企画書をもらった時からありましたね。『イヌゴエ』は主演の山本浩司くんを当て書きしていて、ペスの声に関しても、遠藤憲一さんをある程度当てて書いていましたから、この二人ははずせない要素としてありましたね。
たくさんある犬種の中から、主役がフレンチブルドッグなのはなぜでしょう?
もともとレトリバーの子犬を主演に、という考えだったんですけど、子犬がしつけが大変だからと断念したんです。成犬になってもそこまで大きくならない犬種を探しているときに、僕がたまたまフレンチブルドッグを知っていて。ブサイクにも、かわいくもとれるその表情がいいなあと思ったのと、いろいろな撮り方で遊べるなあと。それでフレブルに絞って探してみて、会ったうちの1匹が(ペス役の)ブン太だったんです。
ずばり、ブン太採用の決め手は?
一番の決め手は、体にある黒いブチがまん丸だったところ(笑)。かわいい模様みたいで気に入っちゃって、もうコイツしかいないと(笑)。あと、動物ものの撮影は大変だとよく聞きますが、フレブル皆がそうなのかあまり鳴かないし、ブン太自身もあんまり動き回ったりしなかったので、想像していよりはやりやすかったですね。
ペスと出会う主人公・直喜役には、要注目俳優の山本浩司さん。違和感なく、そして印象的に人生に消極的な青年を演じていました。監督から見た山本さんの魅力は?
いい意味で、すごく普通に写るところ、変に飛び出さずに画面にいるところですね。俳優さんには「演じてます!」という人もいれば、演技がナチュラルに写る人もいるんだけど、山本浩司くんは今までの概念の俳優さんとは違うというか。あるべきところにあるのが当然でしょ、という感じ。いい意味で、いるだけで納まっちゃう空気感があって、絵が“山本浩司”色になっちゃう。でもそれが邪魔じゃない。それが一番の魅力かな。
Vシネ、ナレーションなどで活躍されている遠藤憲一さんがペスの声をあてていることも注目要素ですよね。ご本人は東京出身とのことですが、関西弁に違和感を感じませんでした。
変に作っている関西弁ではなかったというのと、あとそこが遠藤さんのすごいところだと思うのですが苦手なところも味にしちゃうというか。もともとの飼い主は別にいて、その後で関西弁を話す直喜のお父さんに拾われたから、関西弁が移ってしまった、という裏設定があるんです(笑)。だから覚えたての関西弁ということで、やってもらいました。あとは、遠藤さんの間に近いもので、自由に演じてもらいましたね。
何か『イヌゴエ』ならではのエピソードがあれば教えてください。
撮影も後半に入った頃に撮った、山本君演じる直喜がペスをお風呂に入れて「散歩に行くか」と声をかけるシーンなんですが、直喜のお父さんからの電話に出て戻ってきた山本君のひざに、ブン太が寝っころがってきたんです。そこで思わず山本君も「散歩に行くか」って自然に言葉が出て。すごくいいシーンだったんですが、テストだったからカメラを回してなかった(笑)。本番も本番でよかったけど、山本くんもブン太がとってもかわいくみえたって言ってましたね。
最後にこれから『イヌゴエ』を見る方にメッセージをお願いいたします。
コメディなので、犬がしゃべるということに対して素直に受け入れてもらえたら、より楽しく観られるんじゃないかなと思います。コメディでもあり、ファンタジーでもあり、青年と犬の友情物語でもあり…。犬が話すこと自体がテーマではなく、しゃべることで巻き起こる直喜という青年の生き方・考え方が変わっていくということろに注目してほしいですね。
執筆者
T,SUZUKI