『8人の女たち』や『まぼろし』のフランソワ・オゾン監督最新作『ぼくを葬る』の主演、メルヴィル・プポーがこの映画のプロモーションの為来日した。

ある日突然余命3ヶ月だと宣告されたら、人はどこに生の意味を見出すのか?
死を見つめることで「生きる」ことを讃える。

オゾン監督が監督生命をかけて挑む、『まぼろし』から始まった”死についての3部作”。その2章となる『ぼくを葬る』で描くのは”自分自身の死”。
本作の主演・ロマンを演じたメルヴィル・プポーが作品について語ってくれた。




−− 残された時間、あなたなら何をしますか?
「ロマンのような態度には出ないと思う。なぜなら僕自身は彼のような立場ではないから。彼は人生に悩みを抱えていて自分の人生に満足してないけど、僕自身は幸せな人生を送ってきてますから、死を宣告された時同じような態度を取るとは思えません。ちゃんと伝えて、できるだけ自分の愛する人達と過ごして毎日楽しいことをしながら最期を迎えたい。」

−− 最後の方で体が痩せ細っていきますが、そのために体をつくったのですか?
「オゾン監督から撮影中に痩せてくれ、と言われました。ロマンは病人だから痩せることは不可欠でした。というのも監督は映画の中で、病院のシーンのような苦しんでいるシーンは見せたくなかったんだ。そうすることで陰鬱で非情なものにしたくなかった。僕の肉体の変化が唯一病人としての証明だったんです。なので撮影中はとても厳しいダイエットを強いられましたが、結果的にはそのことで役に入りやすくなった。例えば実際服を着ててもブカブカになってくるし、演じなくても疲労感を感じることができたので演技をするにはプラスでした。痩せることが本当に大事だとわかっていたので、モチベーションとしても非常に高かった。ダイエットから開放された時は嬉しかった!でもこれは肉体的なチャレンジだったので、成功したというのは僕にとっては本当に満足できるチャレンジでした。」

−− この映画では死を表現することで生も描いていますが、ご自身は“生”と“死”についてどう考えていますか?
「この映画に出ることで、もっと今を大切に生きたいと思うようになりました。僕自身とても怖がり症で物質的なことや、ささいなことでくよくよしたりします。でも死という大きなものに直面すると、こんなことで悩んでいる自分は馬鹿じゃないのか?ささいなことじゃないか!と思うことができ、人生のもっと大切なことに目を向けることができた。結果的に人生をよりよく生きる為の助けになったと気づきました。だからこのことについて考えることは、よりよい人生を送るということにつながるのです。」

−− 以前オゾン監督からラブコールを受けていたにも関わらず出演を断られていましたよね。今回出演されたこの作品の1番の魅力は何ですか?
「実は前々からオゾン監督と一緒に仕事をしたいと思ってたんです。今回は僕のほうからアプローチしました。前に会った時にかなり意気投合して仲良くなって、それから彼の映画を観始めて映画を好きになり、彼がいろんなジャンルにアタックしているという姿勢にとても敬意を抱いてました。ですから、今回ようやく実現して幸せでした。前のオファーが出た時に受けなくてよかったと思うくらい今回の役は素晴らしい役で内容の濃い役でした。こういう役のオファーがきて実現するというのは本当にグッドタイミングだなって思いました。しかもオゾン監督との関係性においても、おそらく俳優と監督の間で稀な関係を築けたと思います。共犯関係のような、仲間意識のような本当にお互いを信頼しあっている、そういう関係を築けました。僕は全身全霊でこの役に取り組む覚悟でしたし、監督自身も僕を信頼してくれていました。信頼の上に仕事が出来たというのは本当に素晴らしい。全てのものが最良のものでできたというのは稀な機会で、本当に幸せに思っています。」

−− フランス語を勉強している方にメッセージをお願いします。
「僕自身は自分の出ている映画を海外にプロモーションできるのは嬉しいです。皆さんが映画に対して同じような感動に立ち会ってくれているというのを実感していますし、皆さんがフランス人あるいはフランスの文化、フランスの言語や映画に対して興味を持ってくれているというのを感じます。喜びも感じています。こういうことを確認するということは僕にとっては大事なことですし、これからもフランス映画がいろんな国で感動をもたらすということが続いていけばいいなと思っています。毎日頑張ってください。」

−− ラストシーンについて。
「太陽というものはまた次の日になれば昇ってくる。そういう人間として生命の中の1つの大きな自然の中に帰っていくというシーンだと受け止めています。まるで石ころのように横たわりながら、ようやく生命を送り込むことができるという仏教的なものを感じるシーンでした。また、自分の子供というよりも生命というものをおとすということが人間としての営みとしてとても自然なことだし、人間としての役割を果たして終われたんです。」

−− ジャンヌ・モローとの共演は?
「最初は女優としても人間としても、とても魅力がある方で少し圧倒されてはいました。でもこれは乗り越えなきゃいけないと思っていろんな質問を彼女にしました。プライベートなことを聞いているうちに友人になって、おどおどしないでいられるようになりました。今回彼女が100%自分の力を出しきるという、やる気満々の状態で映画に臨んだのでいるのを気づいていたので、僕自身もそのレベルに達しないと恥ずかしいし、ギャップができてしまう、と思った。彼女に追いつこうと努力したおかげで、とてもいいものを自分の中から引き出すことができましたし、結果的にいいシーンになったと思います。それにオゾン監督も彼女に対してとても厳しかったんです。オゾン監督は俳優にえこひいきしない公平な人なんだとわかって監督への信頼が高まりました。」

執筆者

umemoto