女は“楽園”を作りたいと思った。そして男は“楽園”に行きたいと願った。

期せずして孤島に流されてしまった男と女。
そこには食べるものどころか、一滴の飲み水さえ手に入れることが困難な場所だった。
お互いを拒否し、憎しみ合うふたり。
それまでふたりはまったく違う環境や価値観の中で生きてきたのだった。
空腹感に苦しみ、孤独感に苛まれる日々の果て、極限状態に追い込まれた男女がやがて選択した愛の形とは…。

恵利香を演じるのは『ラブ・キル・キル』『自由戀愛』の街田しおん。
高飛車でプライドの高いヒロインを凛とした佇まいで演じた彼女に作品の魅力や撮影時の思い出について語ってもらった。

☆2006年1月28日(土)、uplink xにてロードショー





—— 完成した作品を観てどうでしたか

観る人によって、見方が変わる映画だと思ったので、観た人の感想が知りたいと思いました。音楽が、ロードムービーみたいに乾いた感じだったり、映像が緑がかった黄色ぽかたりと、面白く観ることができました。

—— 台本に惚れ込んだとのことですが、どのような部分に惹かれたのでしょうか

ヒロインのキャラクターです。こういうキャラクターって、意外と日本の映画にはいない気がします。単純に嫌な人として演じることも出来ますが、政治家になるという自分の目標があり、エリート意識ゆえの傲慢さがあるけれど、生きることに貪欲なので、島に流されても生き残る為ならなんでもしてしまう正直さが面白いと思いました。

—— キャラクターと自身との共通点はありますか

こんなにひどくないけど(笑)、プチ恵利香だと思います。(笑)普段は皆とうまく行く為に出しちゃいけないなという部分なんだけど、それを膨らませてやりました。”この良い人そうなのに、傲慢な振りしてるな”というのではなく、内側からでてる感じ、本当こういう人なんだという風に演じました。

—— 亀井監督の前作『心中エレジー』は観ましたか

亀井監督は俳優・女優の新しい面を出して下さる監督だと思います。小山田さんと真島さんも、『心中エレジー』で違う感じがしましたし、今回も榊さんも私も、今までと違った新しいカラーを出してもらった感じです。亀井監督は、作品で孤独感とか、痛さをテーマにしていて『心中エレジー』もとても面白かったので、今回の作品も面白いものになるだろうと、最初から期待していました。

—— 恵利香を演じるにあたって、監督から指導されたことなどは

傲慢なんだけど、人がいる時は気が張ってる。ただ、人が居なくなった時は、無人島にいるのだから、孤独感を出してと言われました。人が居なくなったら、「食べ物もないしどうしよう」という感じなのに、人が来たら「魚とってきてよ!!」と傲慢になってしまうような。(笑)そういう差が欲しいと言われました。まず私が思う恵利香を演じてみて、シーンごとに距離感や温度を監督がアドバイスするというやり方でした。時々私が榊さんとのシーンで優しくなりすぎたりすると、「もっと突き放してください」と言われました。そういうバランスを見ていてくれました。

—— 無人島のシーンはどこで撮影したのでしょうか

三浦半島で撮影しました。機材を持っていくのが大変な場所で撮影して、夜は洞窟みたいな所で撮影しました。まるでプチキャンプのようでした。全部野外ロケで、トイレに行くのも大変な状況だったので、撮影はとても過酷でした。でもその過酷さで、撮影中どんどんやせていって、程よく映画に反映されてました。(笑)

—— 共演者の方とはどうでしたか

映画では殺伐としていましたが(笑)控え室では皆仲良く和気藹々とお話していました。どの俳優さんも良い味を出されていたので、観ていて気持ちよかったです。

—— もし映画のように無人島に流されてしまったら、どうしますか

もう少し仲良くしますね。(笑)魚が小さくても、”捕ってきてくれてありがとう”って。気が合わない人でも、そこに居る間は協力していかなければいけないので、仲良くすると思います。恵利香みたいに強くないので、無人島に流されたらしょぼーんとしてしまいそうです。対立するよりも無理やり好きになろうとしたり(笑)共存しますね。

—— 無人島の場合でなくとも、合わない人とどう付き合っていくかというのは日常の問題だと思いますが

普段は本当、嫌いな人はいないし、居たとしても態度に出さなかったり、人付き合いがうまいと言われます。(笑)逆に恵利香みたいにはっきり出せることはないので、演じていて面白いなあと思いました。ハリウッド映画だと、階級が違ってもお互い仲良くやっていこうよ!みたいな感じになると思うのですが(笑)この作品の終わり方はリアルな感じがします。

—— 海の上のシーンが多くありましたが

凄く大変でした。船が流されているシーンは、船を二台紐で繋いで、片方に機材を積んで撮影をしていました。スタッフは揺れている海の上で機材を見ているので船酔い気味になってきてしまったり、なるべく一発で撮ろうという感じでした。怪我だけは気をつけていて、帰ってから寝込んでもいいわ位に体力を消耗していました。過酷なシーンも多く、切り傷などはあったのですが、大きな怪我はなく周囲には「しおんは俳優だね、強いね」と言われて、野生児みたいでした。(笑)

—— これから映画を観る人にひとこと

本当に面白い作品なので、観るというよりジェットコースターのように体験して欲しいです。今まで数多くの映画を観てきましたが、その中でもかなり面白い作品だと思います。是非、観て頂ければと思います。

執筆者

Tomoko Suzuki

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