大きな瞳と、めまぐるしくクルクル変わる表情がとってもキュートな韓国の人気女優ぺ・ドゥナ。彼女にとって初の海外出演作品となった山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』では、韓国からの留学生という設定で女子高生のブルーハーツのコピーバンドのボーカルとして、青春のきらめきを見事に爆発させる快演をみせた。「どぶねずみみたいに美しくなりたい」とドゥナが「リンダリンダ」を歌いシャウトした瞬間、私たちは皆、青い心の高校生の自分に戻され熱い気持ちをかき立てられることだろう。
 今回の彼女の日本映画出演は、監督の山下自身がドゥナの出演を強く希望し、前作『リアリズムの宿』とブルーハーツのCDを贈ったところ、そこに深く共鳴したことからはじまるのだが、ドゥナの日本での人気を決定づけた出演作『ほえる犬は噛まない』のポン・ジュノ監督からの推薦もあったとあって、映画ファンとしてはこの幸せな出会いに心から祝福を贈りたい。
 そしてもうひとつの幸福な出会いに、彼女と一緒に劇中バンド“パーランマウム”を結成する香椎由宇、前田亜季、関根史織との友情がある。初めての日本での撮影を支えたのは、彼女たちバンドのメンバー、そして何度も何度も練習したブルーハーツだと語り、「メンバーと一緒ならどこでも歌えるって気がする」との弁には、映画や音楽を超え生まれた彼女たちの強い絆を感じさせる。

※『リンダ リンダ リンダ』は現在シネセゾン渋谷、吉祥寺バウスシアターにて公開中!新宿K’s cinema(8/6〜)ほか全国順次公開!





この作品は初の日本映画出演だったり、バンドのボーカルに挑戦したりCDデビューまで果たすなどドゥナさんにとって色んな思い出がある作品になったと思うんですが、一番印象に残っている思い出は?
「そうですね、撮影中は群馬県のひとつのホテルにみんなで合宿みたいに泊まって、苦楽を共にしました。撮影はのとんど夕方には終わって、いつもメンバーみんなで「夕飯なに食べようか?」といいながらコンビニに買い物にいったりしていました。メンバーの1人の部屋に集まって豆腐や枝豆を食べながらおしゃべりをしていました。私たちの間ではこれを「豆腐パーティー」と名づけていました(笑)。あと自転車に乗って市内を廻ったりもしました。韓国にいる時はあまり自転車に乗る機会もないので、そういった経験も初めてでした。」
先日、渋谷AXでは本物のお客さんの前でライブもしましたね。感想は?
「いまだに歌は自信がなくて、この前ライブをやった時の映像を部屋に帰ってから見てみたら、音程がものすごくはずれててビックリした(笑)。CDを出したのは、私にとって“パーランマウム”のメンバーはとっても大切な3人で、最初日本での撮影ということで、知り合いも友達も誰もいない中での状況ですごく怖かったんだけど、メンバーの3人が私の支えになってくれたの。だからCDを作ると聞いたときは、私たちの努力の結果が残せるし、ずっと持っていたいと思いました。映画の撮影が終わってからもそのためにまた練習しなきゃいけなかったけど。ライブ中はすごく幸せな気持ちでした。舞台に上がる前は緊張して震えていたんだけど、いざ出てしまうと他のことは考えられなくなって、今私たちは4人で舞台に立ってて、私の後ろには3人が見守っててくれる、そういうことを感じました。歌は下手なんだけど、“パーランマウム”のメンバーが一緒だったらどこでも歌える気がします。」
ブルーハーツの音楽をこの映画で初めて知った時と、撮影が終わった今では、このバンドに対する思いというものに変化はありましたか?
「初めて聞いたときはとにかく驚いた。こんなにパワフルで素敵なバンドがあったんだ!って。彼らの曲は私と“パーランマウム”のメンバーたちと何度も何度も数え切れないくらい練習して歌ってきました。汗を流しながら、みんなでこの曲を巡って泣いたり笑ったりしていて、今となってはまったく距離感もなく、すごく親しみを感じています。ブルーハーツも私にとっての支えになったし、お母さんのような存在に今は思えています(笑)。」
撮影が終わり完成した今の気持ちは?
「撮影が終わった直後は不安だった。どんな映画になるのか、監督とも言葉の壁があって意思の疎通がうまくいかない部分もあったかもしれないので。しかも山下監督の現場にはモニターもなかったし、現場での編集もしないもでまったくどんな映像になっているのかすらわからなかったんです。でも出来あがったものを試写で観て、ほんとうにいいものが出来上がったと安心しました。それぞれのキャラクターが美しく描かれていて驚いたし、この映画に出演できたことを誇らしく思っています。早く韓国でも公開してほしいと思います。」

執筆者

Kaori Watano

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