生まれ変わっても逢いたい人、そして忘れられない人——大人気漫画家・矢沢あいの同名漫画の映画化『下弦の月』は、19年という時間サイクルと月のミステリアスな力を大きな軸に、人と人の絆を描いた美しくも切ないラブストーリー。今をしっかり生きるということ、命を失うということ、想い続けるということなど、様々なことについて自然に考えを巡らせてしまうような奥行きのあるストーリー性と映像美、そして音楽が、映画の中で見事に調和している。
 主演に抜擢されたのは、『バトル・ロワイアル』『キル・ビル vol.1』での強烈なキャラクターが印象強い栗山千明さん。ラブストーリー映画への出演は初となる栗山さんは、記憶喪失のイヴと、どこにも居場所がなくなってしまった大学生・美月の二役演じている。2004年10月に公開された本作がついにDVD発売となり、今、改めて『下弦の月』について語っていただいた。

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——原作者の矢沢さんにはお会いしたのですか?
「はい、現場に様子を見に来て下さいました。緊張しました(笑)。試写のときに、矢沢先生が隣に座られたんですよ!その時はさすがにどうしようかと思いましたね」
——ラブストーリーのお話がご自身にきたとき、どう思いわれましたか?
「いいのかなあと思いました(笑)。私にそういうイメージをもたれている方は少ないと思うので、ストーリーをぶち壊しにしたりしないのかなあと、最初はちょっと心配しました」
——役を演じるにあたって、こんなふうに演じてみようとか何か意識しましたか?
「美月とイヴっていう、ひとりなんだけどふたつの内面がある役だったので、その違いを出せたらいいなあとか、回想で高校生の時のシーンがあるのですが、それを楽しくすればするほど、のちの悲しさとか切なさが出るかなあと思って、ほんとに元気に楽しくやりました」
——撮影で大変だったことは?
「夜のシーンを撮った後に、いきなり昼間のシーンにいくときに、身体がついていかなかったりしましたね」
——ピアノをすごく練習されたと聞きましたが。
「すごくというか、集中してやった感じです。撮影に入る2週間前から練習を始めて、撮影が始まってからは、その合間に。公開された映画の中では一曲しか弾いていないんですが、実は三曲覚えたんですよ!一曲しか弾いてないみたいでちょっと悲しかったのですが(笑)、他の二曲を弾いているところもちゃんと撮ったので、ディレクターズカット版のDVDではちゃんと観られるとようなので、嬉しいですね」
——映画の中のインテリアもファッションもおしゃれですよね。
「可愛いですよね!内装がぼろぼろなシーンと綺麗なシーンがあって、綺麗なシーンを一気に撮って、一日経ったら古いぼろぼろな感じになっていてショックでした(笑)。まるで自分が時間に取り残されたような気分になってしまいました」
——居るの見えない存在のイヴを演じたときの気持ちは?
「悲しかったですね。否定されているわけではないし、無視されているのとも違うのだけれど。ただ単純に見えないことが寂しいなって思いました」
——撮影現場はどんな雰囲気でしたか?
「イヴのシーン、ムーディーなシーンは、出演者それぞれが、ぽつんぽつんと控えていたときもありましたが、ラブラブなシーンは、撮影の合間も、シーンとリンクするようにふざけあったりしていましたね。なので、シーンに左右されていた感じです。楽しかったですよ」
——19年もひとりの人を想い続けるということに対して、どう思いますか?
「夢のような話ですね。それがまた、『下弦の月』の魅力のひとつだとも思います。だって、なかなかできないじゃないですか、そういうこと。自分がずっと想っていても相手からは想われていなければ気持ちが薄れていっちゃったりするものだけれど、自分が想うだけでいられる、愛し続けていけるっていうのが、すごいなあと思いました」
——輪廻転生を信じています?
「信じるようになりました。この映画をきっかけに。もともとそういう生まれ変わりのお話に興味はあったし好きでしたけれど、信じるまでには至ってなかったんです。でも役を演じたら、自分がまるで経験したかのような感じになって、信じたいなと思うようになりました」
——『下弦の月』を通して得たことは?
「いっぱい学んだことはありますよ!今までに演じたことのない役だったというのもあるし、色々と信じられるようになったりとか、月を見てなつかしいなって思うようになったりとか…。気持ちがすごく豊かになった感じがしますね」
——完成品を初めて観たときの感想は?
「客観的に観れないですね〜(笑)。あ、こう繋がっているんだとか、あのシーンがないとか、こういうBGMなんだとか、そういったことにも気をとられますし。でも、完成したことへの感動とかストーリーそのものに対する感動で、ちょっとうるうるきましたね」
——印象に残っているシーン、お気に入りの台詞はありますか?
「シーンは、聞かれるたびに違うんですが(笑)、今日の気分は、夜景が綺麗なラストシーンです。再出発するんだという気持ちにさせてくれるシーンなので。台詞は、「今日見ているのと同じ月は19年後にしか見られないんだぞ」という知己の台詞ですね。美月として、胸に残った言葉です」
——今後も恋愛映画に出演してみたいと思いますか?
「そうですね、難しいんですけどね(笑)。ほんと、これまでの役で一番難しかったなって感じます。でもまたこいう役をやって、成長していきたいなという前向きな気持ちです」
——これから観られる方にメッセージを。
「ひとつのメッセージでなく色々と入っているので、ぜひ楽しんで観てください。ひとそれぞれ感じるものって違うと思うので、何か感じて頂けたらと思います!」

執筆者

村松美和

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作品紹介『下弦の月』