透明感のある女の子 ——。
これが大西麻恵さんにお会いした時の第一印象だ。インタビューを続ける中で、とっても可愛い笑顔にも表れている伸びやかで素直な性格、そしておそらくは生来の意志の強さ、さらには“女優魂”を感じ取ることが出来た。
 今回大西さんが演じたのは、14歳の時に神経の不治の病・脊髄小脳変性症が発症した木藤亜也さんという実在した女性の役。『1リットルの涙』は、周囲に元気を与え一生懸命に生き抜き、25歳で生涯の幕を閉じたご本人の日記を基に映画化された。CMクリエイター岡村力氏がメガホンをとり、木藤さんの出身地・愛知県豊橋市の協力を得てオール豊橋ロケによって完成した。温かい家族愛と友情を軸に、人への感謝を忘れずにひたむきに生きる姿、避けられない死に対する恐れ、やりきれない思いに至るまで全てが丁寧に描かれている。人としての在り方や生き方について教えられ、涙を流さずには絶対に観られない映画だ。初主演にして、徐々に体や言葉の自由がきかなくなっていくという難しい役どころを見事に演じきった大西さんは、着実に大女優への道を進んでいる最中だ。

$red ★2月5日よりテアトル池袋、立川シネマシティ、ほか全国順次ロードショー!






——大西さんにとって、木藤亜也さんとはどんな女性ですか?
「率直に思うのは、人を思いやる気持ちに溢れていて、きれいな心をもっていて、どんな状況でも前向きな方。すぐに悩むし考えるけれども、それを人には見せずに自分の中で消化している。でもお母さんにだけは正直に伝える。私も母にだけは当たってしまったり泣いてしまったりするので、共感できました。」
——この映画をきっかけに、ご自分の家族に対する思いに何か変化はありましたか?
「亜也ちゃんのお母さんが書かれた「いのちのハードル」という本を読んで、親は子供に対してこんなふうに思っているんだということが分かって、親の大切さをより感じました。」
——「オーディションで主役を勝ち取り、上京し、そして難病の女性を演じる」というかなりハードな流れだったと思いますが。
「最初は、主役をもらえて嬉しい気持ちが大きかったですね。でも原作を読んだり、脚本を読んだりしていううちに「大変なことをしようとしているんだな」と思ったりもしました。」
——撮影期間は?また、現場はどんな雰囲気だったのでしょう?
「3週間弱の撮影でした。現場は楽しかったです!監督がほんと面白い方で(笑)。皆を緊張させないように、リラックスできるように、と色々して下さいました。ファーストシーンが擁護学校で先生に挨拶をするところだったんですが、カメラが回り始めた瞬間に携帯電話が鳴り始めて。「誰だよ、切っとけよ!」って監督が言ったんですが、実は監督の電話だったなんてこともあって(笑)。あれで場が和んだりもしました。」
——特に苦労したのはどのシーンですか?
「廊下を歩いていて転ぶというシーンです。亜也ちゃんのこの時の症状では、転ぶ時に手が前には出ないはずなのに、どうしても条件反射で手をついてしまって、何度もやりました。」
——どんなふうに役作りをしたのですか?
「亜也ちゃんと同じ病気の方を撮影したビデオを観たり、担当だった先生にお会いしてお話を伺ったり、養護学校へ見学に行ったりしました。どの演技が正しいんだろう?と色々悩み考えながら演じました。」
——豊橋市の方々とのエピソードは何かありますか?
「高校のシーンでは、実際に東高校の生徒さんたちにエキストラで参加して頂きました。病院・家・学校など、全部協力して頂いて。ロケ中も「何の撮影?」って訊かれて「『1リットルの涙』です」と答えると、皆さん「あーっ、知ってるよ!頑張ってね!」って言って下さいました。」
——完成した映画を観てのどんな感想をもちましたか?
「もっとこうした方が良かったんじゃないか、という後悔がたくさんありました。でも、皆の協力があって皆で作ったので、完成して本当に良かったと思います。」
——印象に残っているセリフがあれば教えてください。
「亜也ちゃんの日記に書かれていた、“不幸じゃない、不便なだけだ”です。病気になってしまうと、苦労もするし悔しい思いもすると思うんですが、「考え方次第なんだな。そう思えるってすごいことなんだな」と感じました。あと、“私は何のために生きているんだろう”という言葉も、印象に残っています。これって、病気の方に限らず、人が生きていくうえでの問題だと思うので。私にも、まだ分かりません。」
——今後どんな役をやってみたいですか?憧れの女優さんはいますか?
「竹内結子さんと倍賞千恵子さんが憧れです。竹内さんの『いま、会いにゆきます』がすごく良かったので、あんな役をやってみたいなと思います。」

執筆者

村松美和

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