ひとりの男とふたりの女、そして周囲の“ステキな”人々。恋のトライアングルを軸に恋愛の深層心理に迫る『2番目の彼女』。これは夢か現実か?と惑わされてしまうくらいクルクルとカラフルに変わる楽しいシーンがある一方で、自分の存在って…とおそらく誰しもが一度は陥るマイナス思考の自己内省や自信喪失も表現しているという、なんともカテコライズしえない新感覚ムービーに仕上がっている。
 監督は、テレビドラマ「カバチタレ!」「ランチの女王」「きみはペット」映画『インストール』などを担当した人気脚本家・大森美香氏。恋愛の酸いも甘いも、そして恋愛に限らず人と人との繋がりも細やかにかつテンポよく描くことで多くの支持を集め、めきめきと頭角を現してきた逸材。そんな監督が、三角関係そして自分の人生に頭を悩ませる主人公・草野役に指名したのは、映画・舞台・テレビドラマをコンスタントにこなす中でその柔軟な才能を発揮している実力派俳優・北村有起哉さん。本作が初主演映画となる彼に、早速インタビュー!!なんと今回は特別に、前田綾花さん(2番目の彼女・ゆきの役)、川田希さん(劇中劇3のヒロイン役)、藤井宏之さん(彼女・ゆきこの弟アキオ役)にも同席頂くことに!まるで大学生の仲間同士ような雰囲気で、楽しく和やかなインタビューとなりました。キャストの面々の恋愛観も、少しだけ披露しちゃいます。

$red ●『2番目の彼女』は、11月27日より渋谷シネ・ラ・セットにてレイトショー、ほか全国順次公開!!






$ ——北村さんと前田さん、なんだかお兄ちゃんと妹みたいに仲が良いですね。 $
北村 :「そんなことないですよ(笑)」
川田 :「撮影では完全に綾花がリードしている感じだったよね」
前田 :「巧く振り回されているフリをしてくれる人でした。優しいなって思いました(笑)」
$ ——初めて脚本を読まれた時の感想は?$
北村 :「不思議なシーンもあったりして、正直イメージ湧かなかった部分も多かったです。想像がつかないというか。登場人物が大勢なのに一人一人の人物設定がしっかりしていたので、大丈夫かな、ごちゃごちゃにならないかなって不安もありました」
前田 :「面白かった!いつもあまり考えて読むことはしないので。自分のところしか…読まないわけじゃないんですけど(笑)。自分目線で読んでしまうんです。有起哉さんみたいに、ここはどうなんだろう、大変そうだななんて、考えないですね」
藤井 :「僕は、台詞の中に“一億円テニスプレーヤー”ってのがあって、はあ?と思って美香さんに「意味が分からないんですけど」って訊いたら「いいから言って」と返されちゃったので、じゃああんまり考えずにやろうかなと(笑)。やっぱり不安はありましたけどね。あ、あと有起哉さんの役の部屋って、実は僕んちなんですよ。何日間僕は家に出入りできないのかなーなんて思ったりしました(笑)」
北村 :「“一億円テニスプレーヤー”を理解したところで、ねえ(笑)」
川田 :「役作りとか難しいよね(笑)。ただ、爽やかな笑顔が一番似合うなあと思ったの。あ、私は、自分以外のキャスティングにはすべて担当しているんです。プロットの段階から監督と相談しながら、オーディションもしながら決めていきました」
$ ——具体的にどんなふうに? $
川田 :「主人公の草野に関しては、「外国人でいうヒュー・グラントを探せ!」と監督に言われて。有起哉くんには絶対出てほしいなあと考えていて、ヒュー・グラントかなあ、どうかなあなんて思いながら薦めてみました(笑)。そうしたら、「ヒュー・グラントかどうかはおいといて、いいね(笑)」という感じになって。綾花はほんとイメージ通りでしたね。小悪魔的な感じも含んでいて。どの役も、すごく“ハマったな”って思います」
$ ——草野を演じる上での楽しさ、難しさは? $
北村 :「うーん。あんまりないですね(笑)。僕ではない別人物…まあ当然なんですが、それを演じるにあたって、どういう佇まいがいいかとか、どんなニュアンスを出したらいいかとかを考えました。映像はそんなにキャリアがないので、その分、細やかなディティールに気をつけるようにしてました」
$ ——テストは少なかったそうですが。 $
北村 :「ああ、そうですね、あまりリテイクは無かったですね。でも、ここぞ!というところでは、かなりこだわって撮りましたよ」
$ ——たとえばどんなシーンですか? $
北村 :「ダーツバーのシーンですかね。人間がちょっと肩の力が抜けた時ってどうなるんだろう?と考えたり」
$ ——北村さん、前田さん、藤井さんは、大森監督とは初のお仕事とのことですが、どんな方ですか? $
藤井 :「素敵な方ですね」
前田 :「可愛かった」
川田 :「キューを出す時の手とかね(笑)」
北村 :「人間的に、すごく付き合いやすい方ですね。だらだらしたりしないし厳しいところでは自然と厳しい表情になったりしますんで、仕事もやりやすかったです」
$ ——詩を書くことが趣味だそうですが、作家になりたいなんて思いも? $
北村 :「いえ、そんなたいしたものではなくて。いつかは何かの役に立つかなと。詩というよりは、ただ書き殴ってる感じですよ。書き始めたのは19歳くらい。初心を忘れないために。読み返すと、ウブだったなとか相変わらず進歩してねぇななんて思います。どうにもならない時に、それを人に話しても楽しくないですから、紙にぶつけるんです。むかついた、腸が煮えくりかえるようなこの感覚を絶対忘れてはいけない!って思ったりして。人付き合いがうまくなったり角がなくなったりするのは良いことですけど、危険信号でもありますよ。演じる上で、色々な感情を表現する必要がありますから」
$ ——前田さんは何か書かれたりしますか?$
前田 :「絵、描きますよ」
北村 :「そうなの?」
前田 :「…台本の隅とか」
一同:「それって落書きじゃん(笑)」




$ ——異性のこういう所に弱い、というのを教えてください。 $
北村 :「僕は匂いですね、香り。けっこう覚えちゃいますね。あ、あとふとした時の無表情。あれを見せられると気が気じゃないですね」
前田 :「“よしよし”って頭を撫でる仕草」
藤井 :「僕はギャップですね。強そうな印象の人の弱い瞬間なんて見ちゃったりすると、簡単に落ちます」
川田 :「私もギャップかなあ。あ、それと二の腕とか(笑)」
$ ——草野とゆきののような恋愛関係について、どう考えますか? $
北村 :「僕は無理ですねえ。やっぱりケジメがあって、バシっとしていないと。ずるずるしている感じは嫌です。そんなふうだと、自分自身が何も先に進めないと思うんですよ」
前田 :「でも、好きな時に好きって言うのはバシっとしてない?逢いたい時に逢うのはだめなの?」
北村 :「そういう時に、例えば逢っている時に、もう一人のことを思い出しちゃったりするんでしょ?割り切れないよ」
前田 :「思い出したら、そう言っちゃうと思う」
一同:「えっ。言う必要なくない?」
前田 :「一緒にいる人には、今思っていることを知ってもらいたいもん」
北村:「でも辛いぜー?それは。言ってどうするの?じゃあ帰ればって言われない?」
前田 :「でもココにいたいもん」
北村 :「えーどっちかにしてよお(笑)」
川田 :「でも、言いたいことは言った方が良い時もあるかもね。男の人って、隠すのヘタなくせに隠そうとするし。どうして女の子って気付いちゃうんだろう?」
前田 :「好きだから分かるんだよー」
北村 :「男も分かるよ。ねえ?」
藤井 :「いや。俺、分かんないんだよね(笑)。気付けないから、長く一緒に居たい。一緒に居れば、安心だから」
川田 :「お互い仕事してても、けっこう一緒に居られるものだもんね」
北村 :「うん、居られるよね」



$ ——撮影中の面白いエピソードは何かありますか? $
前田 :「…パンツ」
一同:爆笑
$ ——どういうことですか?(笑) $
前田 :「草野さんの部屋でのシーンの撮影で、着替えてたらパンツがあったんで、これを穿けってことなのかなと思って穿いてそのまま撮影したんです。で、終わった時に「俺のパンツがねーよ!」って有起哉さんの声が聞こえて。あれ、綾花、穿いてる…と思って(笑)」
$ ——下着ドロボウしちゃったんですね(笑)。ちなみに、皆さんのお気に入りのシーンは?$
北村 :「シンプルに生きられればいいのになっていうシーン。偉そうなことを言って、初めて気付くっていうところ」
前田 :「全部!」
北村 :「なんかずるいぞー、それ(笑)」
前田 :「じゃあ、Uさん(有栖川役:MCU)がチャチャッとやるシーン!」
藤井 :「岡元さんと、お父さん役の志賀廣太郎さんが二人で歩いているシーンで、岡元さんが電話している時の志賀さんがたまらなく好きです(笑)」
川田 :「どのシーンも好きなんですけど、どうしてもあの家族にしたかったので、ゆきこ(岡元さん)の家族が揃うシーンでしょうか。あと、半田健人さんの雨のシーンです。大変でしたが(笑)」
$ ——では、最後に観客へ向けてメッセージをお願いします。 $
川田 :「“2番目の彼女”という言葉をぜひ流行らせたいです。それぞれの立場で感情移入しながら観て、恋バナで盛り上がって頂けたらいいなと思います」
前田 :「ラブストーリーって嫌いで、あまり観る気がしないんです。ありきたりなのも嫌だし。でも『2番目の彼女』は、あったら嫌だろうけれど、身近にありそうなお話で、これが今の恋愛の形なんだと思うんです。人間ぽいところが出ている映画だと思います」
藤井 :「2番目になれということではなくて、この映画を観た人が、少し勇気が出せるようになったりしたらいいなと思います。色々な立場の人が出てくるので、それぞれのどこかに自分がいると思いますし、楽しく観てもらいたいです」
北村 :「“シンプルに生きられたらいいのに”という言葉の通りなんですが、それでも、ムダでもいいから色々と悩んでいいんじゃないかなと思います。思い詰めて恋愛至上主義になる必要なんて、全然ない。いちいち悩めばいいんだと思います。自分だけの想いを大事にしてもらいたいですね」

執筆者

村松美和

関連記事&リンク

作品紹介『2番目の彼女』
大森美香監督インタビュー
舞台「リンダ・リンダ」
朗読劇「ラヴ・レターズ」