『どんてん生活』『ばかのハコ船』など海外でも評価の高い新鋭・山下敦弘監督が今回はじめて挑戦するラブストーリー『くりいむレモン』は、血の繋がらない兄と妹の恋物語を描く、タイトルどおり、せつなく“甘酸っぱい”物語。同名のカリスマ美少女アニメをベースにしている。
主演の二人には、『月光の囁き』をはじめ数々の映画でその存在感と少年っぽさを失わない青臭さを印象づけ、日本映画界の重要な若手俳優といえる水橋研二。またヒロインには、本田隆一監督のラス・メイヤー魂が炸裂した痛快作『プッシーキャット大作戦』で薄幸の海女という「なに、それ?」なキャラを堂々たる存在感で演じ強烈な印象を残した、村石千春。この二人のなんとも可愛らしいキャスティングによって、禁断の愛がさらりと、しかし濃厚に描かれる。恋する兄と妹のあいだに流れるもどかしい緊張感、一見普通のようでいて、なかなかリアリティのあるベットシーンや、せつない愛の行く末、をキュートに、そして繊細に演じあげた水橋・村石のナイスカップル。実際の二人といえば、本当に兄妹のように仲の良いリラックスした会話が印象的だ。そんな二人に『くりいむレモン』について聞いてみた。

★『くりいむレモン』は9月25日(土)よりテアトル新宿レイトショー、他全国にて順次公開!





出演のお話しがあったときの感想は?

水橋「タイトルは知っていたけど内容は知りませんでした。衣裳合わせの時にアニメを見せてもらって、とてもステキだなって(笑顔)。すいません、うそです、びっくりしました。でもそういうエッチな話だとは知ってはいたんですけどね。」

特に、村石さんにとっては初主演でこの作品を選ぶのはかなり勇気がいることですよね。

村石「原作のアニメもタイトルもなんにも知らなくて、脚本をいただくまで何もわからなかったんですよ。ただ、お話をいただいた時、事務所の方に「できる?」って言われてたので、できるもなにも台本みてなかったんですが、実際に見たときに、「こういうことか」って思って。こりゃあ、すごいぞ!って思って。でもやってみたいって思いはあったので、その気持ちに素直になって挑戦してみようということでした。」

作品中はほぼ2人芝居ですが、お互いの印象はどうですか?
村石「水橋先輩とご一緒させていただいて、すべてにおいて勉強になりました!」
水橋「あはは!うそつきー」
村石「でも本当に、私ははじめてのベッドシーンだったので撮影に入る前からすごく緊張していたんですよ、でも水橋さんが「大丈夫だよ」って声をかけてくれたり、本番でもリードしていただいたので、すごく安心できました。大先輩です!」
水橋「僕はすっごい可愛い子だなって、はじめてあった時すっごいドキドキしました(笑)」
村石「うるさいよー(笑)」
水橋「実は最初はほとんど口きいてなかったんですよね。でもメイクさんとかスタイリストさんとかと同じ部屋でワイワイしてて、さすがに初対面で爆裂トークなんてできないから、みんなが一緒にいて間をとりもってくれたんで、そういう人たちがいるなかでだんだんと打ち解けていくことができたので、楽でした。」

本当に実際お会いしてみて、兄妹のように仲のよいお2人ですが、亜美とヒロシを演じてみてどう思いましたか?特にヒロシは監督が水橋さんをあて書きしたんだとか。

水橋「そういっていただいてすごくうれしいです。ヒロシと一緒でカレーは僕も大好きですし(笑)。ヒロシというキャラクターは僕のなかでも拒むところがないので、自然に演じられました。ヒロシはごくふつうの青年で、たまたま好きになってしまったのが妹だっただけ。もし隣の女の子だったら普通に恋をしてお付き合いをしているような、そういう感覚で演じていました。特に妹に恋しているからどうとかってことは考えませんでした。」
村石「私も演じるってことはあんまり考えないようにして、自分と亜美とちょっと似ている部分を探して共感できるようにしました。こう演じてやろう!とかそういうことはあまり考えないようにして、現場現場で感じをつかんでいったというかんじでした。」

山下監督の現場はどんな感じでしたか?

村石「すごく楽しかった。監督自身も悩んでいたんですけど、そういうところがかえって“みんなで一緒に作っているぞー!”って感じがしてよかった。段取り段取りで作っていくのではなく現場での雰囲気をつかもうとしているのがやりやすかったし、楽しかったです。」

では台本もけっこうその場で変わったり?

村石「本読みは主に監督と2人でやってたんです、特に重要な部分とかは力が入って2人で一生懸命やってたんですが、いっつも最後に監督は「今日やったこと忘れて!」って言うんです。「え?今一生懸命やりましたよね?」ていうと、「いや、考えすぎるとよくないからさ。」って言われて、今日一日何だったの?と思ったり。でもやってよかったとは思いますけどね。」








お互いを好きだとはじめて告白するあのシーンは2人のあいだに流れる緊張感がすごく良かったシーンですが、長回しでしたし苦労したのでは?

村石「あのシーンは前日監督と4時間くらいやってたんですが、代役の方と本番で水はしさんは違うので、とまどった部分もありましたが、さすが先輩!フォローしてくれましたね。」

ヨーグルトいっぱい食べてましたね。

水橋「おいしかったですよ。彼女はあんまり食べてないんですよ!」
村石「いや、あんまり食べないでって言われたので。わたしも食べたかったんですよ。」

お2人にとって一番緊張したのはやはりベッドシーンだったと思いますがいかがでしたか?

水橋「それはもう、僕はヒロシなので「エッチになっちゃえー!」って思ってやりました。うふふ。」
村石「私もそうですね、こんな風にいったら変ですけど、ほんとに素直に撮影を楽しんじゃいました。中途半端にやるのが一番いけないなって思ったので。でもやっぱりすごく緊張しましたよ!」

では逆に一番楽しかったことや印象に残っているのは?

水橋「亜美の先生役の小沢さんとのシーンですね。スリッパで小沢さんの頭を殴らなきゃいけないので失敗して何度もやっちゃいけないって思ったので(笑)。この作品では亜美ちゃんと2人のシーンが多いので、僕と村石さんと監督と3人で話しあって撮影している部分がほとんどなので、小沢さんや根岸さんや山本浩司さんなど、いつものメンバーじゃない人が現場に入ってくるとまた雰囲気が変わって楽しかったですね。その分現場の緊張は高まるんですけどね。」
村石「私は作品で印象に残っているのは、ホテルからお兄ちゃんが出てってしまうシーンがあるんですが、そこで飛び出したお兄ちゃんが道端でしゃがみこんでしまうところで、その水橋さんのしゃがみ方がなんかすっごい可笑しくて。シリアスなシーンなんですけど、なぜかしゃがむときにワンバウンドあってしゃがむんですよね。もう、そんなところまで細かくてさすが先輩!(笑)」
水橋「もー(笑)」

では最後におふたりの今後のご予定は?

水橋「僕はもうじき久しぶりに舞台があります。河原雅彦さんのお芝居なんですけど、「バッド男」っていうタイトルで10月から。もうじき稽古もはじまります。舞台は一度しか経験がないので楽しみですね。あとはまた映画も何本かでてます。」
村石「私は、いまのところは公開を待つのみってところです。楽しみです!」

村石さんは映画がかなりお好きでいろいろ研究されているとか?

村石「はい、好きですね。メジャーなものからマイナーなものまで何でも観ます。日本映画も好きですし。DVDの音を消して日本語字幕が出るようにしてみるのが好きで、そうすると音があるのとまた違った感じが楽しめるし、お芝居の勉強にもなるんですよ。」

最近みた映画で印象に残っているのは?

村石「『茶の味』です!すっごく面白くって、もちろん先輩が出ているシーンもみてさっすが先輩だなって。」
水橋「うわー。あはは!」

本当に映画のなかのヒロシと亜美のように仲の良い兄妹、といった感じの水橋さんと村石さん。役者としてのキャリアがある水橋さんのリードもあったということだが、やはり村石さんのこの度胸は、ただ者ではない!というものを感じさせるものがあった。一体どんな女優になってゆくのだろう。2人の今後の活動が楽しみだ。
(インタビュー・文 綿野かおり)

執筆者

綿野かおり

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