「僕自身はツイてるなって思うようになりましたね。こういう方向になって欲しいなぁとか思うことって大体そうなってる気がする(笑)」、こう語るのは『仮面ライダー龍騎』をはじめ、ヒーロー系出身俳優のなかで最も注目されている萩野崇。運、不運を本人に尋ねるまでもなく、彼の躍進ぶりは目を見張るものがある。そんな萩野が鶴見昴介監督「HERO 天使に逢えば…」で世界一ツイてないボクサーに扮した。わずか数週間で8キロも減量し、ボクサー未経験とは思えない勇姿を見せてくれるのだ。芝居にもこれまで以上にこだわった。「前半部、修ニは金銭トラブルに遭った千夏のため、八百長試合をやってお金を渡す。そうしたあまり男らしいとはいえない優しさと、後半、彼女に『試合、見に来てくれ』と言い残す男らしさと、メリハリをつけたいと思いましたね」。素顔の彼は人の目を真っ直ぐ見て話す率直さと、軽快にジョークを飛ばす気さくさがある。甘いマスクにウィットに富む会話、生真面目な人柄、これは女性ファンが多いのも当然、そんな感想を抱いたのだった。

※「HERO?天使に逢えば…」は6月12日、テアトル池袋にてロードショー!!



——今回が映画初出演にして初主演。世界一不運なボクサー、修ニを演じていますが。
 最初に話があった時は「どうもボクサーの話らしい」ってことだけを聞いて大丈夫かなぁって心配だったんですよ。で、本を読んですごく面白かった。それと同時に展開が複雑で難しいなと感じました。人生がネガティブに動いているような時期の話ですし、そんな中で本人は一所懸命やってるんだっていうのをどういう風に見せようかと。後者は体で見せるしかないなって思ったんですけど。

——撮影前3週間で8キロ減量したそうですが。
 衣装合わせの時、3、4キロ落として筋肉もつけて行ったんですよ。自分ではいいじゃないとか思ってたんですけど(笑)、監督が「うん。あと5キロくらいはいけるんじゃない?」って(笑)。やっぱりボクサーって普通の人と筋肉のつき方は違うじゃないですか。
 で、夜の食事制限をして、当時、アニメの仕事で毎週大阪に通ってたりでかなり忙しかったんですけど、ホテルに戻ってもすぐび寝ないで筋トレに励みました。

 ——女性からしてみれば羨ましい話ですけど、そんなに急激に痩せて体調は大丈夫だったんですか?
 それが…、不運な男っていう設定だったので体調が悪くてもそれはそれでいいじゃないってことだったんです(笑)。
 ただ、減量で寒さがこたえましたね。撮影は去年の11月だったんですけど松本の高地で雪とか降ってるんですよ。雪そのものはほんとに雪印の結晶みたいにキレイだったから感動しましたけど…。

 ——撮影はかなりハードだったらしいですね。
 映画のスケジュール的に僕はかなり迷惑な奴だったと思いますよ。たとえば、大阪で仕事があって夜の8時に東京行きの新幹線に乗る、PM11時頃から朝方まで後楽園ホールで撮影、その日の夜に松本に行き、翌日には始発で別の仕事に向かう、とかね。新幹線の中で仮眠を取る、みたいな生活でしたね。

 ——ボクサー姿が様になってますけど経験はなかったそうですね。
 「『ロッキー』を見てくれ」って言われて映画を見て、花形ボクシングジムが協力に入っていますからそこで2日間トレーニングしました。あとは共演者の虎牙(光輝)くんですね。
虎牙くんは元ボクサーでいろいろ教えてもらいました。たとえば、公園でのトレーニングシーンがあるんですけど、その日、彼の撮影は昼過ぎからだったのに朝から見に来て「こうやるといいよ」とかアドバイスしてくれたり。虎牙くんとは今回が初めてだったんですけど、いきなり出会ってそこまで付き合ってくれる人ってなかなかいないじゃないですか。スタッフ、キャストとも仲間にすごく恵まれたなと思いますね。




——現場の雰囲気は和気あいあい?
鶴見監督からしてアニキって感じなんですよ。お兄ちゃんっていうよりアニキ。いろんな人に聞くと糖分取らないと集中力は落ちるし、セリフ覚えも悪くなるってことらしい。今回、ほんとにセリフは覚えられなかったし…(笑)。監督にそれを言ったら「うん、言い訳だな」って(笑)。千夏役の桜井(裕美)さんへの監督の演出もなんか面白くて…。普段の僕はNGってあんまり出さないんですけど爆笑してNGっていうのがすごく多かった。監督と虎牙くんは今回2度目の仕事なんで、いつもふざけ合ってましたしね。(虎牙くんは)普段はストイックな男ですけど、みんなでいると劇中のアキラままのテンションでものすごいエネルギーを持ってる奴です。

——劇中ではツイてるカップル、修ニ含むツイていないカップルが登場しますが、萩野さんご自身はやっぱりツイてる?
オレ自身はツイてるなって思うようになりましたね。ホームに入ったらすぐ電車が来るとか、駐車場がすぐ見つかるとか、細かいところのツキはないですけど(笑)、大きな部分ではツイてるなって思いますね。こういう方向になって欲しいなぁとか思うことって大体そうなってる気がする(笑)。

——どうやったらツくんでしょうかね?
ツイてるって思うこと。この映画に入るまで、運とかそういうの、あんまり考えたことはなかったんですよ。でも、今回出会った人とは運の話をすることが多くて。例えば、上からモノが落ちてきて肩に当たったとしても「頭に当たらなくてよかった。オレはツイてる」って思うのがいいみたいですね。いい方向に捉える。でも、だからっていっても女の子に振られたのに「振ったのはオレなんだ!」とかっていうのはダメだと思いますけど(笑)。

——なるほど(笑)。さて、最後になりますがこれから映画を見る皆さんにメッセージを。
楽しんでもらえればそれが一番です。笑ってもらって、ダメな時にも何かいいことあるかなって信じてもらえればそれが一番嬉しいですね。

執筆者

寺島万里子

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