アンドレ・テシネ監督「かげろう」は第二次世界大戦下のフランスを舞台に17歳の少年と戦争未亡人が唐突に出会い、唐突に別れるまでを描いた珠玉の愛の物語である。未亡人を演じるのはエマニュアル・ベアール。勝気ながら情緒的に不安定な複雑な内面を表現し、キャリア最高の演技と評された。そして、相手役の少年にはこれが主演デビューとなるギャスパー・ウリエル。監督テシネは「自分の知る限り、もっとも謎めいた少年」と彼を評しているようにスクリーンに映るその様は些細なしぐさひとつ、観客を惹きつけてやまない。さて、本国では既にブレイク中のウリエルが9月上旬、緊急来日し、「かげろう」の内覧試写後にティーチインを行った。劇場公開は晩秋となりそうだが、美少年好きなあなたは観る前にチェックしておいてソンはなし!!

※「かげろう」はシネスイッチ銀座にて2004年お正月、ロードショー公開







——ベテラン女優、エマニュエル・ベアールとの共演はいかがでした?
ギャスパー・ウリエル 初日のメイクルームで彼女の方から声をかけてくれました。もちろん、当初は緊張もしたけれどベアールは撮影の間もずっと気を使ってくれた。僕のことを対等なパートナーとして考えてくれ、相手役を演じるのに必要なことのほとんど全てを惜しみなく与えてくれたのです。

——番難しかったシーンは?
ウリエル 兵士2人がやってきて、イヴァンは妄想から彼らを殺そうとまで思う。あの時の狂気の発作が、他のところより異様にテンションを高めなくてはならず、ちょっと難しかった。もともとイヴァンには語られない過去がある。監督には「動物的であると同時に植物的であれ」と言われましたが、なかなかこれも難しい。

——ほとんど明かされないイヴァンの過去について。テシネ監督からは何かサイドストーリーのようなものを聞かされましたか?
ウリエル そういうのはほとんど教えてくれませんでした。一度、「ジャン=アルデス(劇中ではイヴァンの話の中に友達として出てくる)って本当は誰なんですか」と聞いたことがあったけど、監督の返事は「あまり考えすぎないように」。まぁ、それも演出のうちで、秘密は秘密にしておいた方がいいと思っていたようですね。ラストシーンにしてもイヴァンがなぜあんなことをしたのか、きちんと説明はされていない。テシネ監督は「理由が簡単にわかるのなら、誰かに簡単に説明できるくらいなら、彼はあんなことはしなかったはずだ」、と言ってましたけど。

——映画の世界に入ったきっかけを教えてください。
ウリエル 母親の友達がエージェントを始めたんだ。で、子供の頃にちょこちょこテレビ番組に出るようになった。当時は将来、続けていこうなんて思ってもみなかったんだけどね。今では俳優の面白さがわかってきたし、このまま役者としてやっていきたいと思っている。もうひとつ、いつかは自分で監督をしたいとも思う。もちろん、ずっと先のことになると思うし、僕にはまだまだ時間がたくさんあるからね。
 

執筆者

寺島万里子