ゆうばり市民有志による独自企画、フォーラムシアターのオープニングを飾った『飼育の部屋』は、都内では昨年レイトショー公開され、単館興行ながら好成績を記録し、映画祭と前後してリリースされたソフトも人気を博している。個人的には作品を観る前は、正直のところ、実際に起きた少女監禁事件をベースという題材には、いささか手垢のついた感を禁じえなかったのだが、これまでの同系列の作品とは全く異なる斬新なアプローチと、役者陣の熱演は、そんな先入観をいい意味で裏切ってくれる快作サスペンスに仕上がっていた。
 ゆうばりファンタ2003には、本作の主人公・松男を演じると共に、作品の製作面でも力を尽くした小沢和義をはじめ、彼の交友関係から今回の作品に参加した、遠藤憲一、根岸季衣、山口祥行という主要キャスト陣が集結し、上映前の舞台挨拶にはお仲間の俳優達も大挙登場。ちょっと(かなり?)赤ら顔の方も混じりながらの挨拶は、満員の会場との一体感で実に心地よいムードであった。
 舞台挨拶終了後、酒を酌み交わし寛いでいる出演者の方々に、お話しをうかがうことができた。バカ話やオフレコ発言なども飛び出すインタビューの場は、気の置けない飲み仲間同士の心地よい連帯感に満ちていたが、今回の作品を見ても明らかだがそんな関係を芝居には決して持ち込まないそうだ。5月から撮影に入るという続編への期待も高まる、役者陣の声をお届けしよう。

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まずは、ゆうばりファンタスティック映画祭に参加しての感想をお願いします。
遠藤憲一——もう、楽しいっすよ。色々な人がごちゃ混ぜで。夕張の人ばかりかと思ったら、全国あらゆるところから来ていて…。自分達もゆうばり映画祭は認知されてる映画祭だと意識していたので、そういう方々との関わりがすごく楽しい映画祭だと思います。
小沢和義——変わらないですね。色々な方々が言ってますが、迎えてくれてる雰囲気とか…。前に来たとき(『SCORE 2/THE BIG FIGHT』(99)で参加)は、文化スポーツセンターで上映させてもらったんですが、そこでも一杯になってもらって、やっぱりいいなぁと言うのが、凄くありますね。
根岸季衣——私はあらためて縁の繋がりを、ここで楽しめて嬉しいなと思ってます。自分達の映画をかけつつ、一緒に飲め、ここに一緒にいられる感じがとても嬉しいです。
山口祥行——ゆうばり来たのに、なんかニューヨークに来た気分ですね。

今回の作品はほとんどが小沢さん演じる松男と桜井真由美さん演じるまどかの二人による密室劇ですが、作品を飽きさせず持続させるのに気をつけられたポイントは?
根岸——裏話をするとね、どうも和君は遠藤に「お前は恋愛ものは出来ないよ」と言われた悔しさから、発奮してこの映画に繋がったとか。バカ酒飲みながらですけど、こうして生み出しているっていうのが嬉しいですよね。ただバカ酒もいっぱいあるけど(笑)。
遠藤——俺、そんなこと言ったか。でも、バカ酒がプラスになっているもんね(笑)。
小沢——主だった部分では二人しか出てなくて、相手は目隠しに猿轡をされている中、一人ベラベラ喋っている。そんな中、喋らないでも感情を表現し会話をするということを、彼女にも要求しましたね。「ウ、ウン」みたいなのでも会話はできる、恐怖とかね。そうした部分は大事にしようと思いましたね。

根岸さんは、事件が一応収束したところで、登場する弁護士役ですが、そこで延々と松男と対話を繰り広げる件は緊張感がありましたよね。
根岸——私、嬉しかったですよ。和君からはじめに電話をもらって、脚本をもらう前だったんだけど、色々な出会いをしたかったし是非やらせてって答えて。それで脚本をもらって、ものすごく嬉しいなって思って。法律用語って、本当に頭に入んなくて短い用語をガンガン頭に入れたりが大変ではありましたけど、すごく楽しかったです。あれはほとんど最終日だったんですけど、和君が自分達でリハーサル通しちゃいましょうよって。和君と仕事するの初めてだったんですが、凝縮された現場を過ごせてよかったですよ。自分の中でもいいものが出来たなっていう感じがあるから、嬉しいです。今日なんかも、自分達で一緒にレンタカーに乗ってやってきたんですけど、仕組まれたものではなくて自分達で行こうよって来た気持ちのよさみたいなのが楽しくてね。このゴージャス感(笑)。
小沢——小松沢さんも言ってましたが、役者達がこの作品を出してくれと言う部分、入りたいなと思う部分が、色々な映画祭がある中でも特殊かなって思いますよね。
山口——町自体も特殊ですよね。映画の看板とかあるし、僕にとってはカルチャーショックな町ですね。
遠藤——町が一丸となっているよね。それで、雪の中を一人、また一人ってお客さんが来てくれるのを見てるのがすごく嬉しい。
根岸——出迎えてる自分達が嬉しいみたいな(笑)。いいよいいよって、聞いてたんですけど、町も可愛いくてうるうるしちゃう。





山口さんは、松男の階下の住人役ですね。普通でありながらも、やはりどこか得体のしれなさがあるところが、今風の若者という感じでが
山口——和さんから入る前に電話をもらったときに、ナチュラルでいこうぜと言うのがありました。本番が始まる前に、和さんと遊びの芝居をしてたんですよ。
小沢——それがある程度形になり初めて、本番へいこうかっていう感じです。途中で、時間があくと役者同士で自主的にテストをしようってことで、それは根岸さんにも助けてもらいまして。それを見て本番になるみたいな感じで。
山口——俺の中では、台本に無いフィーリングみたいな部分で芝居をしたというか。
根岸——いつも飲んでるだけだったけど、みんな素敵な奴だなと思って、それが仕事をやった時にやっぱりなって感じで。
遠藤——でも、何かが生まれたっていうのが凄いよね。内容以上に、人の一念のすごさっていうのかな…和君が相当な力の入れようだったから。そこに客を呼んだというのが、凄いよ。相当本気でしたよね。だって、それまで週1は飲んでいたのに、もう飲めないって付き合わなかったもんね。

そういう遠藤さんも、最後には美味しいところを持っていくという…
根岸——持ってくんだよね。変な顔して(笑)。続編の顔してるんだよね。
遠藤——続編のことは、未だ和君しかしらないから。
小沢——キャストはみな同じらしいんです。みんなに協力していただいてっていう部分があるし、出したいんですよ。山口君は隣人という離れてしまった役なので、それは違う形で繋がって行くでしょうし、弁護士の根岸さんや遠藤さんはそのままで残して行きたいと思いますね。次は3倍くらい面白くなりますよ。真面目に作ります。






それは実に楽しみですね。是非期待しています。では、最後にメッセージをお願いします。
根岸——自分たちがはしゃぎすぎてるかもしれないけど、いい出会いが形になった作品だと思うし、続編にも繋がるという素敵なこともります。飲んでたことが形になっているという誇りと、いいものを作ったなという感じを、是非楽しんで見て欲しいです。嬉しいよね。最高です。
遠藤——人が見るとバカの集まりに見えるけど、モノ作りや演じることでは一生懸命な奴ばかりだからね。
小沢——今回、こういう形で繋がったじゃないですか。そういう部分の出会いがあって、役者同士であることの共通点が強く出た作品だと思います。さらに次の続編では、何倍にも濃いものを作って、またこれから先もこういう繋がりを何倍にも強くした部分での映画に携わっていきたいなと思います。色々な人間たちと会って、色々な人間達とガチンコ勝負をする。遠藤さん、根岸さんと交わす空気を楽しむ時間は、監督をするならするでその時の糧になりますから、今はそれを蓄えている。だから、次に監督する時はすごいですよ。
山口——『飼育の部屋』は現実にあった監禁事件を映像化した作品の中で、観てくれた人たちが観終わった時に、面白い中に嫌悪感を抱いて欲しい。人としてやっちゃいけないことを、エンターテイメントとして映像化してるわけじゃないですか。そうした中で、そういう犯罪が無くなればいいなと思っていますね。
遠藤——本当にそんなこと思っているのかよ、お前。嘘だろう(笑)。さっき和君がガチンコって言ったけど、普段は気が合う同士なんだけど、芝居の時には本当にガチンコでやってるから、これは面白い仲間だと思うんですよ。遊んでる時と、芝居してる時の落差の激しさ。これが面白いですよね。芝居の時に、この仲間同士を引きずらないんですよ。用意、スタートでガチンコをやるから、これが面白い作品になったんじゃないかな。
根岸——こういう時はなあなあにしてるけど、演っている方はなあなあじゃないよなという気持ちよさがあるじゃない。
小沢——それをやらなきゃ、気持ちよくないってこともあるんですよね。そうでなければ、仲間になれない。逆に言えば、その落差を無くすような作品が多いんですよ。僕らが仲がいいと知っているから、「じゃぁ、どうします?」と言うのではなく、ピシッとしたものがある中でやると、お互いの疎遠感・親近感が変わってくるじゃないですか。それをやっている瞬間が、本当に楽しいんです。だから、人にいじられるのは大好きですよ。だから、こういう作品を続けていきたいなと思いますね。

本日は、どうもありがとうございました。

執筆者

殿井君人

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