ゆうばりファンタランド人物賞受賞!『MOON CHILD』寺島進インタビュー
『MOON CHILD』ではGackt演じるショウの兄・信士として、若手中心の作品の中で、そのキャリアに裏付けされた存在感で作品に深みを与えていた寺島進。今回の映画祭では、ご自身の出演作に関連する部分に留まらず、あちらこちらでファンや若き役者・スタッフ仲間との交流を重ね、初参加のゆうばりファンタにすっかりはまられている姿が実に印象的だった。フォーラムシアター部門の舞台挨拶にも、たびたび応援に駆けつけたり、ゆうばりの夜を、より若い世代の人々と過ごされている姿は、映画という共通語を話すものどうしでありながらも一際気さくで、映画祭参加者投票によるゆうばりファンタランド大賞で人物賞が贈られたのも、実に納得なのであった。以下、『MOON CHILD』の公式上映を翌日に控えた2月15日に行ったインタビューの模様をお届けしよう。
$navy ☆『MOON CHILD』は2003年4月19日より丸の内ピカデリー2他にて全国ロードショー公開!$
Q.ゆうばりファンタに参加されてのご感想をお願いします。
——殺伐とした東京の冬を離れ、しかもさらに北に行くというんで、余程覚悟がいるんじゃないかと思ったんですが、こっちは寒さが心地いいですね。それで人との温もりが暖かいんで、すごく感慨深いですね。コミュニケーションが良いじゃないですか。それで元気が貰えるんです。朝の5時・6時まで毎晩呑んでるんだけど、二日酔いでも心地いいみたいな(笑)。こういう交流があると、人間の原点みたいなものを感じますね。こういうのが大事なんだろうなと。皮膚感というか団結を感じますし、いいですよ。東京に帰るのが、なんか覚悟して帰郷するような感じでね。
やっぱ、僕らの仕事って、出会いがあって今の自分がいるんだなというのをいつも思うんで、こういう場で様々な方と出会えるのは嬉しいですよ。市長さんも素晴らしいし、小松沢さんも熱い。ああいう人の人柄も映画祭に出てるのかなと。それとまた、映画が好きな人ばかりなのがまた嬉しいんですね。吹雪でもなんでも劇場に足を運んでくれて…。一言で語り尽くせない感じです。自然に気持ちが高揚するんで、フォーラムシアターとかに応援しに行きたいとかもあるし、自分もいろいろな方に応援されてなりたっているので、それが普通に出来ちゃう感じなんです。そんな目に見えない力やエネルギーが、ゆうばりにはあるような気がして。
Q.今回映画祭でも上映される『MOON CHILD』は、Gackt、HYDEらフレッシュな魅力を放つ異業種出身の若い方々との共演の中、存在感のあるキャラクターを演じられてましたが、そうした方々との仕事はいかがでしたか?
——始めにやる前までは、どうなることかな…と不安というより全然想像がつかなかったんですよ。余計な心配をしてたんですけど、始まったらそんな心配は全然関係なくて。Gackt君とも初対面だったんですけどね。人って一面だけで、イメージをつくりがちじゃないですか。自分も強面なんじゃ?とかよく言われますしね。Gackt君にもCM等から、柔いイメージが膨らんでたんですけど、出会うと本当に映画が大好きで、ワンカット、ワンカットを一生懸命なんですよ。徹夜でも手をぬかずにね。そういう彼の姿勢には、いい意味で感化される部分がありますよね。
それと台湾ロケだったんですけど、自分もそうですがメインではない香港や台湾の役者さんに出会えたことと、日本と台湾の混成チームからなるスタッフが刺激的だったし、ゆうばり同様暖かかったですね。むこうの役者さんと今回みたいに、毎晩酒を飲み明かしたりして、仲良くなったり。日本もこうしてアジアの方々と、段々と近しい関係になれればいいと思ったし、近い将来なれるのではということを肌で感じましたね。
ゆうばりといえば、ここで撮影された侯孝賢監督の『ミレニアム・マンボ』にも出ていたガオ・ジェさんとか、香港映画のアウトロー役としてバリバリに活躍されてる人とも出会え、ジョイント出来たのがすごく嬉しかったですね。御互いの作品をそれぞれ観ていますから、そんな話でも盛り上がりましたしね。映画が世界共通語だということを本当に感じたし、そういう場を瀬々(敬久)監督と出来たというのはひじょうにありがたかったですね。
Q.ご自身で逆に演じるにあたって、若い方達との共演で意識された部分などはありますか?
——意識はないですね。自分はいつも自然体でありたいし、気負いたくも無いし、フラットな感覚でいつもいたいんですよね。あまり邪心の無い方が自然に呼吸も出来るし、発信・受信が出来るような気がするんです。若手の方が刺激的というのは、新しい感覚を吸収したいということも確かなんですけど…。映画祭のオープニング作品『リロ&スティッチ』を観て、とても心が洗われたんですよ。子供ってとても純粋で、喜怒哀楽がストレートじゃないですか。それで初心に帰るっていうのか、原点みたいなものを垣間見るんですよね。若手の人たちにも、こういう懸命さが大事だとか、こういう反応がとか、その時々に感じるものがあるんです。
Q.混成スタッフによる台湾ロケということで、言葉など仕事で大変だったことなどはいかがですか?
——いやもう、日本のスタッフも向こうのスタッフも一緒ですね。一つの映画を作る映画が好きな人たちという共通する部分があって、方向性が一緒なんで言葉が云々は、互いに片言の相手の言葉を覚えれば後は共通の映画語みたいなのがありますから、いい感じだったですけどね。以前、北野組の『BROTHER』の時に、ハリウッド組との混成チームをやった経験も大きな財産になってますね。それがどこかで活かされているというか、自分ではひじょうにフラットな感じで出来ましたよ。フレンドリーに、仲間って感じでね。
Q.劇中ではGackt演じるショウの兄・信士役ですが、どのように演じましたか?
——今の時代とは異なる時代を描いた一種の時代劇なんだけど、いつの時代も一人では何も出来ないのだけど、一人で歩けなくてはしょうがないし、そういう自分の弱さとか、世の中に対する憤りとかを心に結構いれていたかもしれないですね。
Q.瀬々監督の演出や印象はいかがでしたか?
——瀬々監督は物腰が柔らかいというか、こちらが気付いたことやアイデアを出すと、ちゃんと聞く耳を持ってくれるすごくキャパシティの広い方だと思いますね。受け止めてくれるというか…。あの人の演出は、本当に理屈じゃない部分があるんです。言葉の説得力も確かに大事は大事なんですけど、あの人が持つ世界というか匂いというか、感覚で相通じるものがあるじゃないですか。そういう感覚がなんともいえないというか、結構好きなんですよ。現場でライブ感覚みたいな匂いがしますね。
Q.寺島さんは、現在数多くの日本映画に出られてますが、昨年の東京Filmexで上映されたSABU監督の『幸福の鐘』の主人公も、存在感がありましたが。
——『幸福の鐘』は、まず脚本を読んで素晴らしかったというのがありますね。鳥肌が立つくらいで、SABU監督に感謝という気分で。それでSABU組で、脇役でやってきて主役なんていいのかな…って。でも、嬉しくてね。SABU監督とも、ずっと一緒に入れるし。ああいう寡黙なキャラクターも演りたかったんですよ。言葉の大切さもありますが、表情とから感じ取れるような…。本当に一番やりたい役だって言うのが、送られてきて嬉しかったですし、でも逆に難しいなというのもありましたし…。でもそれが、いい意味でのプレッシャーだったし、気持ちのテンションが高くなるんだけどその手綱を自分で引っ張って、普通にみたいな感じでね。あの人の脚本と演出が素晴らしくてね。自分みたいな人間をいじり、生かしてくれて有り難かったですね。それとあの人は、独特のリズムというか音が流れている気がするんです。SABU監督は音楽の幅もある人で、今はこんな感じの音楽ですってテープをプレゼントしてくれたりね。
Q.それでは、これから作品をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
——観に来てくれたお客さんなら、そこで何かが始まってると思いますし、こちらはその時点で胸がいっぱいですね。敢えて言えば、なんでも予備知識無くフラットな感覚で見て欲しいので、それで何かを感じてもらえればありがたいです。
Q.今後の寺島さんの公開作品のご予定は?
——塚本晋也監督の『六月の蛇』と、是枝裕和監督がプロデュースした二作品、西川美和さんが監督の『蛇イチゴ』と伊勢谷友介君が監督の『カクト』がそれぞれ初夏くらい、『幸福の鐘』は秋口の公開予定ですね。
Q.それぞれが異なるテイストの作品で、楽しみですね。また、今後も様々な作品に出演し、来年も是非新たな作品でゆうばりに帰ってきてくださいね。
——是非是非、呼んでいただければすぐに飛んできますので。頑張ります。
本日はどうもありがとうございました。
執筆者
殿井君人