「スケジュールの都合もあったけれど、それ以前に誇りの持てない作品で来日したくはなかった。初来日が『ボーン・アイデンティティ』でとても嬉しいよ」。1月25日の日本公開を目前に控え、マット・デイモンが初来日を果たした。マットが本作で演じたのは記憶喪失の男。そして、これが初めてのアクション作品になるわけだが…。「ウエルメイドな脚本でさえあればジャンルは問わないんだ。従来のアクション映画と違って、この映画はすごくリアルに描かれている。たとえば、カーチェイスの前に地図を広げて道を調べたりする。普通、そんなシーンはないけれど、ちょっと考えれば当然のことだろう」。1月22日に新宿パークハイアットで行われた記者会見では、当初やや緊張気味だったものの、時間が経つに連れ、乗ってきた感じが伺えたデイモン。「ここの(パークハイアット)部屋は東京中が見渡せるんじゃないかって思うほど眺めがいいんだ。金曜日はフリーになるから、明治神宮にでも行ってみたいな」。






ーーこの作品に出演しようと思ったのはなぜ?
 アクションのシナリオはこれまでもたくさん読んだ。でも、やりたいのはなかったんだ。ハリウッドのアクション映画って時間で図れてしまうだろう?映画館に行ってポップコーンを食べながら、「ああ、5分後に爆発だな」とかね(笑)。でも、「ボーン・イエスタディ」は本当に完成されたシナリオだった。カーチェイスの前にちゃんと地図を広げて確かめたりもする。「007」みたいに美しすぎて現実感の全くない女性も出てこない。「007」は好きだけどね(笑)。監督の もインディーズ出身で僕と似たような感性の持ち主だった。準備期間は半年もあったんだけど、監督とは何度もディスカッションしたよ。

 ーーアクションシーンで一番たいへんだったところは?
 アパートでの格闘シーンは、実はあの場面のリハーサルに6週間かかっているんだ。僕が闘うのはプロのキックボクサーだった。まず、ゆっくりとしたテンポでやってみて、一つ一つの動きをだんだんスピードアップしていく。パンチシーンというのは通常のハリウッド映画だと、顔の18インチ手前まで打てばカメラはうまい具合に捉えてくれる。けれど、今回はアクション監督がそれを許さなかった。ほんとうにギリギリまで打ってくれと言われた。僕は対戦相手に「もし、本当に殴ってしまったらごめん。その時はシャンパンをプレゼントするよ」って言った。結局、そのシーン終了後には彼にシャンパン1ケースを送る羽目になった(笑)。「いつもはタダで殴られっぱなしだから、ラッキーな感じだね」って彼は大喜びしてたけどね。

 ーーアクションのトレーニングはその後・・・?
ボクシングはLAでトレーニングしてたんだ。今はニューヨークに住んでいるから、あまりやっていないけどLAに行った時はトレーニングを受けているよ。日常的には長距離を走ってるかな。
俳優のいいところは役作りのために学んだことから、自分の趣味が生まれたりするってことだね。もちろん、優れてうまくなるわけじゃないけど、ボクシングは気に入ったね。






ーー監督業やプロデュースに興味はありますか。
そうだね。でも、監督は絶対に自分で書いたシナリオじゃないと。そうしないと人の書いたものをメチャクチャにしてしまいそうだから(笑)。
 製作も興味あるよ。ミラマックスがウェブサイトで「新しい映画作家を育てる方法」というのをやっているんだけど、僕も携わっている。そこにはシナリオが今で7000は集まってる。絞り込んでいって優秀作品に100万ドルをプレゼント、映画を撮ってっていうんだ。

 ーーベン・アフレックとの共同脚本は?
いつもいつも、「書こう」、「書こう」って言ってるよ。ただ、実際2人とも忙しくてなかなか時間が取れなかった。2年以内には必ず完成させたいと思ってるんだけど。

 ーーケヴィン・スミス作品には一生カメオ出演するのでしょうか?
多分、するんだろうな(笑)。「ジャージーガール」っていう、ジェニファー・ロペスとベン・アフレックが共演した次回作でもカメオ出演してるよ。

 ーーマット・デイモンさんの次回作は?
 ガス・ヴァン・サントと砂漠に行って即興で撮った低予算映画がある。シナリオもなにもないんだ。僕は俳優としてのリミットを設けたくはない。ビッグバジェットの作品でも、インディーズ作品でも、面白いと思えばなんでもやってみたい。ジャンルも全くこだわらないね。

 

執筆者

寺島まりこ

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