実際に起きた少女誘拐事件をもとにした「女子高校生誘拐飼育事件」(松田美智子著/幻冬舎)を映画化したシリーズ第3弾は、香港で監禁された日本人少女が、監禁した男の優しさから愛を抱いていく過程を、詩的且つ官能的に描いた純愛ラヴ・ストーリーです。
 修学旅行で香港を訪れた女子高校生・鳴島愛(伊藤かな)は、複雑な家庭環境におかれていた。父親は愛人を作って家を出てしまい、母親は酒に溺れ、愛は精神的に阻害されていた。その彼女がホテルをひとり抜けだし、タクシーに乗ったところ、寂れた一軒家に連れ込まれてしまう。孤独な運転手ボウ(トニー・ホー)は、愛を丸裸にし、家畜のようにブラシで体を洗うのだった……。
 伊藤かなの初主演作は、海外で撮影を行い、しかも濃厚な絡みが含まれた衝撃作。でも、その過激な内容とは異なり、実に優しさと愛に包まれた世界を作り上げている。多少、脚本の構成に甘い部分があるものの、伊藤かなの魅力に免じて、許してあげたくなる。それだけ彼女が際だっているのだ。
 伊藤かなに、自らについてと、本作の思い出について語ってもらった。

$navy ☆『完全なる飼育〜香港情夜〜』は銀座シネパトス、新宿ジョイシネマ3にて12月20日までロードショー公開中!地方順次公開予定$





Q.まず芸能界に入ったきっかけから教えてもらいますか?
「実は日本テレビの“とんねるずの生でダラダラいかせて!!”でねずみっ子クラブのオーディションに双子の姉と一緒に応募したんですよ。動機は合格したら10万円がもらえるので(笑)。そのお金で家族でディズニー・ランドに行きたかったんですね。でも、ねずみっ子クラブは、1年ほどで解散したんですよ。当時小学3年生でしたし、別に芸能プロダクションに所属していたわけではないので、その後、芸能活動をしたいとも思っていませんでしたね」

Q.では、なぜ芸能活動を再開することになったんですか?
「小学6年生の頃、親の仕事の都合で東京に出てきたわけですよ。その時に、芸能プロダクションのスカウトに会って、中学3年まで、姉と一緒に“なつ・かな”の芸名で活動していました。ただ高校受験を控えていたので芸能関係の仕事を辞めちゃったんです。それを機に、姉のなつはオーストラリア留学をすることになり、私は高校1年の時に、現在の事務所に入って、ひとりで頑張っていこうと思ったんです。どちらかと言えば、姉のなっチャンは、シャイで引っ込み思案なので、私の正反対なんですよ。自分ひとりで実力を試したいという気持ちが強かったんですね」

Q.伊藤かなは、本名なんですか。
「いや、違うんですよ(笑)。前の事務所の社長さんが、ザ・ピーナッツさんの大ファンで、その姉妹の本名が伊藤さんだったので、それでつけたらしいんですね」

Q.自分で表現することが楽しいんですね。
「自分で表現することは、小さい頃から楽しかったようです。前の事務所にいた時も、ひとりでやりたかった気持ちはありましたが、姉妹で売っていきたいという方向性があったようですから。以前から、自分が思っていること、やりたいことが、ほんとにできたらいいなって思っていたので、今はほんとに充実してますね」






Q.演技に対しては、いかがですか。
「演技のレッスンは、今の事務所に入ってからずっとやっていましたが、スタッフがいる撮影現場で演じるのでは、空気も違いますから、そう簡単にはいかないなって(笑)。でも今回の映画では、ほんとに勉強させられました」

Q.『完全なる飼育 香港情夜』のオーディションはどんな感じでしたか。
「前3作の内容についてはオーディションを受ける前に観ましたので、内容については大体知っていました。それまでオーディションにあまり受かったことがないので、まあ、受かったら考えようかなって(笑)。受かったら、覚悟はしていましたけどね。でもオーディションでは何も質問されなかったし、連絡がなかったので落ちちゃったかなぁって思ってたんですが、合格の連絡を受けた時は、もう感激しちゃって。その夜、興奮して眠れなかったですよ」

Q.オーディションは、いつ行われたんですか。そして脚本を読んで、どんな感じを持ちましたか。
「オーディションは02年の頭でしたね。そして撮影が、私の誕生日の7月28日から一ヶ月間行いました。脚本は合格の連絡があって、しばらくしてからでしたね。まず読んだら、思わず涙が出ちゃいまして……いいストーリーじゃないですか。鳴島愛の気持ちが分かるんですよ。もし自分が香港で同じ体験をしてしまったら、愛と同じような気持ちになってしまうんじゃないかなと思うんですよ」

Q.でも裸だけでなく、男性との絡みのシーンがあり、緊張はしませんでしたか。
「今までは水着のグラビア写真が中心でしたが、仕事で裸になることは初めてでした。でも意外に緊張することもなかったし、あまり深くも考えていなかったようです(笑)。でも、服を着ていても、裸でいても、表現することは一緒ですから、同じなんですよ。だからそのシーンについては、あまり意識せず、他のシーンと同じように考えていました。気持ちはスンナリでしたし、恥ずかしいというより、2人で寒いねって言ってましたから(笑)」







Q.撮影は、香港のスタッフばかりですよね。
「まず香港に到着して、監督のサム・レオンさんと打ち合わせをしたんですよ。脚本の1ページ目から最後まで、監督が、僕はこのシーンはこう思うんだよって説明してくれるんです。2時間かけて、じっくり話し合いましたね。香港での撮影は見るもの、聞くもの、すべてが勉強でした。言葉が分からないので、私はボディランゲージなんです(笑)。監督のサム・レオンさんは、日本語を喋れたし、私は広東語を少しずつ覚えたりと、毎日が夢のような楽しさでした。撮影がない時は、ホテルで休んでいてもいいよって言われるんですが、撮影現場が楽しいから、行っちゃうんですよ。ストレスもなかったし、それに撮影が進むにつれ、あと少しで撮影が終わるという寂しい気持ちの方が強くなってしまって」

Q.撮影中の面白いエピソードはありますか。
「私って、カエルが全くダメなんですよ。でもカエルが出てくるシーンがあるじゃないですか。撮影現場のどこからか、ゲロゲロッと聞こえてくるんですね。箱の中にカエルが、10数匹も詰まっていて、失神しそうになっちゃって。リハーサルでは手のひらに乗せないってことになっていたんです。私にしたら、もうドキドキしちゃって、演技どころじゃないんです(笑)。でも本番にも関わらず、泣いちゃったんです。それとですねぇ、スタッフが撮影の最終日に、かなが撮影の最終日に泣くって、皆で賭けたらしいんですよ(笑)。泣かないっていう人は、ほとんどいなかったらしいですね(笑)。最後のカットの撮影が終わると、私が思わず泣いちゃってですね……スタッフは私を慰めるどころか、喜んでいるんですよ」

 自分の考えを気持ちよいほど明確に答えてくれる伊藤かなチャン。『完全なる飼育 香港情夜』を撮影していた頃に比べると、だいぶスリムになって、更に美しくなっていた。初主演でありながら、どこか大物ぶりを感じさせる彼女は、既に来年公開の新作が待機している。今後の活躍にも、是非期待したいぞっ。

執筆者

鷲巣義明

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