構想30年、撮影270日、製作費150億円——マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演「ギャング・オブ・ニューヨーク」がついに完成した。共演はキャメロン・ディアス、ダニエル・デイ・ルイスとお正月映画に相応しい本作、公開に先駆け、去る11月20日、東京・新宿パークハイアットでスコセッシ監督、ディカプリオの来日記者会見が行われた。「利己的かもしれないが自分の映画は僕が生まれ育った街、ニューヨークのフィルターを通してきた。この場所ははじめから言語も宗教も混じり合っていた。そうした全てを受け入れるというのが今回のテーマでもある」とスコセッシ監督。「毎回、日本に来るのはすごく楽しみにしてる。特に今回は『ギャング・オブ・ニューヨーク』を、これほど時間を掛け、情熱をこめた作品を持ってこれて嬉しい」というディカプリオは「当時のニューヨークは本当に実験的な場所だったと思う。人種や宗教があれだけ混在した都市はなかったのでは」と言葉を重ねた。近年まれに見るほどの混雑ぶりだった会見の一問一答をレポート!!

※12月21日、全国松竹・東急系にて超拡大ロードショー!!

 











——スコセッシ監督に。構想30年、ついに完成した心境は。
スコセッシ 映画にしたいと思ったのは1971年のこと。それから何度も脚本を書き直し、内容は少しづつ変わっていった。その間、時代も変わり、世界はどんどん小さく、そして個人、インディビジュアルが重視される時代になっていった。特にニューヨークに集まる人は人種、宗教もいろいろでこの映画にますます合う時代になったと感じた。さまざまなものを受け入れる、それが「ギャング・オブ・ニューヨーク」のテーマだからね。

——日本映画からの影響はありますか?
スコセッシ それはもちろん。50年代から日本映画の大ファンだからね。決闘のシーンは黒澤の「乱」からインスピレーションを受けている。もちろん、あの作品には及ばないがね。撮影中、スタッフやキャストには三船の「椿三十郎」や今村昌平、大島渚の作品などを見てもらったよ。ただ、実際のアクションシーンはもっと原始的な形で表現した。日本映画の決闘シーンって一種バレエの振り付けのようで、非常にエレガントな感じがするだろう。

 ——スコセッシ監督から影響を受けたことは?
ディカプリオ もちろん、スコセッシはアメリカの巨匠中の巨匠だ。どの俳優にとっても彼と仕事をすることはひとつのゴールだと思う。実はこの映画の話は僕がまだ16の時に聞いた。今回、実際に参加できて非常に光栄に思う。
 監督からの影響というのは余りに多すぎるけれど、彼ほどの集中力で細部にこだわれる人はそうそういない。映画に情熱をかけている人と仕事をすることは僕にとっても当然自分の情熱の引き出すチャンスになる。スコセッシ組は映画の撮影というよりも演劇を作っているような、チームがひとつの劇団のように動いていたよ。
 撮影が七ヶ月を越えた頃、スコセッシ監督から「悪いね、こんなにかかっちゃって」といわれたことがあったんだけど、僕は「いや、あと8ヶ月だってやるよ。夢がかなったんだから」って答えた。ずっとローマで撮影してたんだけど、本当のところ、自分のねぐらに早く帰りたいとは思わなかったんだ。 

——撮影中のエピソードを教えてください。
スコセッシ キャメロンとレオのラブシーンの時、キャメロンは風邪をひいていたんだ。でも、彼女は別の作品の撮影があって、そのシーンはその日中に撮らなくちゃならなかった。次の日にはレオがヘンリー・トーマスを殺す、大切なシーンが控えていた。
 で、翌日だ。レオに風邪がうつってしまった(笑)。「今日はやめよう」というと「イヤだ、絶対にやる」とレオ。で、何テイクか回してランチタイムに入った。僕はレオにもう一度、「今日はやめないか」と聞いた。でも、レオは「絶対にイヤだ」と言う。「よし、わかった。でも5分だけ横にならないか。少し休んで撮影に入ろう」。彼はしぶしぶ承諾してベッドに横になってくれた。それからレオは一日半起きてこなかったのさ(笑)。

——キャメロン・ディアスとのラブシーンでは彼女に本気で叩かれたそうですが。
ディカプリオ スコセッシ監督独特のラブシーンというのは愛のなかに怒りがある、少々暴力的な感じなんだ。少なくとも僕が慣れているジェントルな愛の表現とは違ったんだよ(笑)。あのシーンは何テイクも重ねたんだけど、正直、あれほど本気で叩かれたのは初めてだったね。

——それぞれ好きなシーンをあげてください。
ディカプリオ ビル・ザ・ブッチャー(ダニエル・デイ・ルイス)がモンクを殺すシーン。好きな場面が殺人のシーンというのはどうかと思われるかもしれないけど、あのシーンの間髪入れず、早業の所業ってところが気に入ってるね。
スコセッシ 私はレオとキャメロンのラブシーンが好きだね(笑)。非常に暴力的なんだけど深く愛し合っている。あそこは何テイクも撮ったし、2人ともノリにノッていた(笑)。
 その後の、ビル・ザ・ブッチャーがベッドの上のアムステルダム(ディカプリオ)にこんこんと語る場面も好きだった。

 ——それぞれ次作品の予定を教えてください。
スコセッシ レオからシナリオが送られてきたので一緒にやろうって言っているよ。
ディカプリオ 若き日のハワード・ヒューズの話だよ。初めて読んだのは8年位前になる。来年の3月には撮影に入りたいと思っているんだ。
スコセッシ もうひとつの企画は音楽のドキュメンタリー。7つのシリーズからなるものでヴェンダースやクリント・イーストウッドなどにも声を掛けている。音楽のジャンルは問わず、その監督が好きなものを選んで撮ろうって企画なんだ。

執筆者

M/ M/T

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