日本版の40倍の製作費70億円をかけたドリームワークス版「ザ・リング」。既に公開されたアメリカでは初登場1位の快挙となった。東京国際映画祭の目玉作品でもあった本篇、主演女優のナオミ・ワッツ、プロデューサーのウォルター・F・パークス、ローリー・マクドナルドが来日、10月28日、記者会見が東京・帝国ホテルで行われた。「マルホランド・ドライブ」に続く主演抜擢で知名度も人気も急上昇のナオミ・ワッツ、「ご自身のオーバーナイトサクセスについて」という質問が出たときは「仮にそうだとしても10年間いろいろあったし、一夜といえど非常に長い夜だったわ」とコメント。金髪に細身の身体、聡明さが伺えるルックスと息の長さを予感させる会見だった。

 











ーーリメイクに最も熱心だったというプロデューサーのウォルターさんへ。日本版「リング」はいつ、どこで見たんですか?
ウォルター・F・パークス 「リング」を見たのは最高のシチュエーションだったよ。それはビデオだったんだ。それも画質のかなり悪い。自宅で仕事をしていたある日の午後、ドリームワークスのスタッフが興奮して電話をかけてきたんだ。『今、すごい日本映画を見た。メチャクチャ怖いから、午後の約束キャンセルしてでもすぐに見て欲しい』ってね。
 そうして、自宅のビデオデッキに「リング」を押しこんだのが夕方の4時。7時にはアメリカでのリメイク権を買っていたよ(笑)。

 ーーナオミ・ワッツさんは日本版を見ましたか?
ナオミ・ワッツ ええ、もちろん。ウォルターと同じ、非常に画質の悪いビデオだったんだけど(笑)。私は先に脚本を読んでいたのだけど、シナリオを読んだ時と同じように興奮したわ。だけど、敢えて一回しか見ないようにしたの。オリジナルにとらわれないようにしたかったから。

 ーー日本版のヒロイン、松嶋菜々子さんをどう思いますか。
ナオミ・ワッツ ワンダフルな女優さんだと思うわ。映画にあんなに興奮したのも、そのひとつは彼女の力だと思う。機会があればぜひ会ってみたい。(この日の舞台挨拶には松嶋ななこさんが特別ゲストとして登場した)

 ーー監督のゴア・ヴァービンスキーは「マウスハント」、「メキシカン」などライトコメディを得意としてきた監督です。起用の理由は?
ウォルター ゴアとはドリームワークスの設立以来のつきあいなんだけど、私としては逆にライトコメディが多いのが不思議だったんだよ。彼はデジタルを駆使して映像を作りこむのがすごく上手で、いわばビジュアル派の監督だ。彼なら「リング」を素晴らしいものにしてくれることは間違いないと確信したんだよ。

 ーー主人公のレイチェルをどう思いますか?
ナオミ・ワッツ 最初は迷っているんだけど一度決めたらサバイバルモードになって息子の命を守ろうとする。運命と対峙するガッツのある女性だと思うわ。ただ、レイチェルには欠陥もあるの。仕事にまい進していて息子のことは見落としてしまっている。そうした危機をはらんで物語が始まるの。つまり、リスキーな役ではあったわ。レイチェルに共感できないなら、観客をこの映画の世界に引き込むことは難しかったから。
 
 ーーアメリカではあなたのことを「オーバーナイトサクセス」(一夜で成功した人の意)と形容する人がいますが、そう呼ばれることについてどう思いますか。
ナオミ・ワッツ そうね。でも、仮にそうだとしても一夜というには非常に長い夜だったと思う。女優になって10年間、失敗したことも何度もあったわ。けれど、その体験が今の自分の役に立っている。もし、20代で今のような成功を手にしていたら自分を見失っていたかもしれないと思う。

 ーープロデューサーの方に。また、日本の企画をリメイクする予定はありますか。
ウォルター 今現在、実際にあがってきている企画はないが、日本映画のリメイクはハリウッドにとってもなくてはならないものと思う。クロサワなくてはアメリカの西部劇は違うものになっていただろう。「リング」のオリジナルもそうだが、最近の日本映画は語り尽くさない部分がストーリーの軸になっている気がする。一方、ハリウッド映画は全てを語り尽くしてしまう。僕にとってはそうした曖昧な部分が、とてつもなくエキサイティングに感じるんだよ。

 ーーできあがった作品を見て親友のニコール・キッドマンも大絶賛してくれたとか。
ナオミ・ワッツ NYでプレミア上映をやったとき、ニコールは私の隣に座っていたんだけどうるさくて猿ぐつわを噛まそうかと思ったくらい。劇中の私のスクリームより大きな声で叫ぶんだもの(笑)。階段を上るシーンでも「ダメよ。そのドアを開けちゃダメ!」とかね。静かにしてくれって言いたかったわ(笑)。

執筆者

寺島まりこ

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