東京国際映画祭コンペティション作品「ホテル・ハイビスカス」は「ナビィの恋」の中江祐司監督の最新作である。前作に続き、今回も舞台は沖縄。小学校3年生の女の子を主役に、最近ではそうそう見られないイキのいい家族物語を描いたもの。大拍手のなか、上映後は監督のティーチイン。客席から飛びこみで主役の女の子らが壇上に掛けあがって来たほか、客席には母ちゃん役の余貴美子さん、「ナビィの恋」でヒロインを演じた西田尚美さんの姿があった。なお、本作は同映画祭で審査員特別賞を受賞した。






 ーー前作「ナビィの恋」が沖縄初級篇なら本作は上級篇という気がしたんですが。
中江監督 そうですか。うーん、僕としては2作とも沖縄の映画を撮ろうと思ってやったわけではないんですよ。映画を撮りたいというのがあって、たまたま僕が沖縄に住んでいるのでここが舞台になっちゃってるんですけど。

 ーー本作はほとんど引きで撮ってますよね。アップどころか、バストショットすらない感じがしましたがカメラワークは意図的だったんですか?
中江監督 作品ごとにどういう撮り方が相応しいかカメラワークを考えて撮っていますので、意図的ともいえるでしょうね。主人公が子供なのでカットを割りすぎると、エモーションが持続できないんですよ。なるべくシークエンスを長くしようとすると必然的にカメラをひかざるを得なくなってしまうんですね。

 ーー演出はどうしたんですか?
中江監督 主役の子どもでいえば、演出してもそうは動きませんから。まだ人間にはなってませんから(笑)、演出というよりほとんど調教みたいなもので。彼女自身を見ていると、自分の存在と美恵子の存在とを近づけているような感じですかね。彼女が台風の目でほかの役者さんは、彼女に合わせて芝居をする努力をしてくれました。






 ここで、美恵子役の蔵下穂波ちゃんが劇中まま、元気いっぱいな姿で舞台に登場。ケンジ役のネスミスとのとじま役の和田さんも壇上にあがった。

 中江監督 彼女はね、撮影現場に脚本持ってこないんですよ。全部頭に入ってて。今もまだ入ってるんじゃないかな。
「どうやって覚えたの?」と聞かれ、
 蔵下 リハーサルで覚えた
 中江監督 リハーサルの時にね、僕が書いたお上品な台詞を彼女がどんどん汚い言葉に変えていっちゃう。で、しょうがいないから決定稿は彼女が言った汚い言葉のままにしたんですよ(笑)。

 ーー劇中のホテル・ハイビスカスはいい感じの場所ですよね。あれは本当は何なんですか?
 中江監督 1階部は40年くらい前に建てられたピザ・レストランを美術さんが改装したものなんですよ。二階部分は本当にホテルですね。原作の「ホテル・ハイビスカス」の舞台になったものです。

 

執筆者

寺島まりこ

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作品紹介
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