ホラー・ゲームの最高峰「バイオハザード」シリーズの映画版が、遂に日本上陸を果たす。「バイオ〜」と言えば勿論、アンデッド(ゾンビ)。本作も、ゲーム版のイメージのオリジンとも言うべき、G・A・ロメロ監督の『ゾンビ』等を彷彿とさせる場面も多々あるが、それ以上に印象に残るのが、記憶を失われたままアンデッドが徘徊する秘密研究所で戦いに巻き込まれるヒロイン・アリスに他ならない。演じたのは、モデル出身でL・ベッソン作品等で知られるミラ・ジョボヴィッチ。スレンダーで健康的な肢体でありながら、どこかアンニュイな魅力を醸し出すエロスと、彼女の生身のアクションはそれだけでも必見ものなのだ。
 8月7日、ミラ・ジョボヴィッチさんと本作で監督を務めたポール・アンダーソン監督がキャンペーンのために来日し、帝国ホテルにて記者会見が開催された。ものものしい特殊部隊に先導され登場した二人は、共にラフなTシャツ姿。「この暑さだもの。109のTシャツは絶対必要よね」素敵な笑顔を見せたミラさんは、会見中も一つ一つに表情豊かに応えてくれ、目映いばかりのオーラを放つ。また厳しい撮影を共に過ごした監督には、ひとかたならぬ信頼を置いているのが、手にとるように感じられる仲のよさだった。

$navy ☆『バイオハザード』は、2002年8月31日(土)より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹系にてロードショー公開!$









Q.今回演じられたアリスは、とても強いのですが表情は穏やかで、自分から戦いを挑むのではなく自分や仲間を守るためだけに戦うキャラクターですが、ミラさん自身が考える強い女性はどのような人ですか
ミラ・ジョヴォヴィッチさん——私はいつもヴァラエティにとんだ役を演じていきたいと思っていますが、日本で公開された数作は精神的に起伏にとんだクレイジーな役が多かったので、今回のアリスという役は内面的に強くコントロールしている穏やかな人物で力を出すときには出す美しさを出そうと監督とも話し合ったの。常に考えて行動する人物にしたかったの。

Q.ミラさんは最近アクション・アドベンチャー系の作品が続いていますが、ご自身が意識されて選ばれているのですか。
ミラさん——実際は、アクション映画にばかり出ている訳ではなく、大作ではなくインディペンデンス系の作品ですが、ドラマ性の高い様々な役を演っているわ。でも、残念ながらそうした作品は、海外では公開されにくいのよ。確かに、こうしたアクション大作に出演すると、アクション映画のオファーが増えてしまうのだけど、他の作品が日本などでも公開されると嬉しいわ。勿論、アクションは大好きだから、こうした作品に出るのもハッピーなの。

Q.監督はゲームの大ファンだそうですが、映画化するにあたって苦労された点はなんでしょう。
ポール・アンダーソン監督——ゲームの映画化ということで脚色で最も苦労した点は、二つのタイプの観客に訴えかける作品を作らなければならないということだ。ゲームに関しての知識が豊富なファンを満足させねばならないのと同時に、そうではない広い映画ファンにも、クールなアクション・アドベンチャー映画として受け入れられる作品にしなければならない。訴えかける要素としては矛盾している点もあるが、基本的な原典の要素をファンの方が飽きない程度に押さえつつ、知識の無い方にも背景を伝えられるくらいの量を調整しながら、進めたんだ。

Q.ゲームのどのような点がお好きだったのですか。またプレイしてクリアするまでに、どのくらい時間を要しましたか?
ポール監督——Ⅰ〜Ⅲを同時にプレイしたんでクリアするには5週間くらいかかったね。その間、家にこもりっきりで髭もぼうぼう目が真っ赤でほとんど自分がゾンビ状態。ようやくクリアして家から出たときに、もう映画化するしかないと思ったね。初期のG・A・ロメロやJ・カーペンターの作品に影響されている点でも、このゲームのファンだったんだ。本作のプリ・プロの時に、「コード・ヴェロニカ」と「ガン・サバイバー」もプレイしてクリアしたし、昨日新作の「バイオハザード0」をプレイしたけど、これも素晴らしそうだね。














Q.ミラさんがアクション場面を演じるために、特にエクササイズをしたことなどありますか
ミラさん——ストレッチが一番ね。それで蹴りや、身体の柔軟性を持たせるようにしたわ。そして次には、キック・ボクシングや空手を学んだの。それと今回始めてワイヤー・アクションに挑戦したんだけど、その撮影にはかなりの時間をかけ、自分が納得がいくまで3ヶ月くらいかかったわ。

Q.怪我は気になりませんでしたか?また一番得意な技を教えてください。
ミラさん——“ラウンド・ハウス”と言う蹴りが得意よ。アクションが激しいんで、怪我や痣は沢山あったわ。監督が言うには、最初の頃は怪我や痣を私にメイクで施していたのに、最後のほうはその無残な状態に逆にメイクで消していたのよ。
ポール監督——付け加えればミラのアクションに関して、僕を含めスタッフが「そこまでやらなくても」と言う場面まで、彼女は全て自分で演じると言って、ガンと聞き入れてくれなかったんだ。それでスタントを使わず、本人が演じているんだ。ただ1ショットだけは、本人も演りたいと言っていたのだが、保険会社がどうしても許してくれなかったので、スタントが演じている。これまで僕は6本の作品を撮っているが、本人が最も素晴らしいアクションを見せてくれた女優だよ。

Q.原作のゲームの生まれた国で、ゲームファンに観られる心境は?また、今後も日本のゲームは海外で映画化されていくと思いますか?
ポール監督——映画が日本で公開されることに関して、大変エキサイトした気分だ。この仕事を受けて最初にしたことは、飛行機で日本に向かい3日間に渡ってゲームのクリエイター三上氏と話し合いをしたんだ。そういう意味ではこの作品は、作り手とのコラボレーションの結果だとも言えるだろう。彼の頭に入って、色々盗めないかと相談したところ様々なアイデアをもらえたんだ。
僕はゲームが大好きで、この作品以外にも様々なゲームをやっているが、欧米で作られたゲームに比して日本のゲームは進んでいると思う。特にヴィジュアル面でね。そうしたものは映画化したいと思えるものが多いので、今後も日本のゲームをベースにした映画が作られることは多多あると思う。

Q.音楽にマリリン・マンソンを起用した理由を教えてください。また、彼が出演するような話はなかったのですか。
ポール監督——オリジナルの「バイオハザード」シリーズは、例えばJ・カーペンターの『ニューヨーク1997』といった作品に影響されているので、そうしたものの音楽の使われ方と同じようにしようと思ったんだ。70年代後半から80年代にかけて、例えばD・アルジェント監督作品に音楽をつけたゴブリンのような、エッジな音を使いたいと思いならば誰がいいかと考えたときにマリリン・マンソンがピッタリだと思ったんだ。それにもう少しトラディショナルな音楽を手掛けているマルコ・ヴェルトラミに、スコアの方で担当してもらって、いいコラボレーションになったと思っています。
マンソンは、僕の『イベント・ホライズン』のファンだったこともあり、快く仕事を引き受けてくれたんだけど、一つだけ大きな問題があって、彼は夕方6時以降しか起きてこないので、それ以前にはミーティングが出来ないんだ(笑)。それで夜になると彼のゴシック調の屋敷にお邪魔して、夜中中吸血鬼気分で語り合ったんだ。
映画出演に関して言えば、今回は撮影が全て終わってからの依頼だったので出演と言う話までは至らなかったけど、もしかしたら続編でお願いするかもね。

Q.ミラさんが最も困難だった場面にっついてお聞かせください。また続編が進行中とのことですが、どのような状況でしょうか
ミラさん——この映画は難しい所が沢山あって、それを選ぶことの方が大変なくらい。敢えて一つ選べば撮影が進むに連れリライトの時間等で撮影が押し、次第に1日の撮影時間が延びていったの。中でも水浸しの研究所の場面では露出度の高い衣装で16時間に及ぶ撮影を行い、それ以降は常に濡れた状況での撮影開始で兎に角寒かった記憶があるわ。続編に関しては、監督におまかせね。
ポール監督——現在脚本を執筆中で、ゲーム版「3」の原爆が落とされる結末以前の12時間を描く物語になる。ミラにぴったりの役があるんで、是非彼女にオファーしたいし、演ってもらえればと思っているよ。監督に関しては、最初に僕がやるか否かを答える権利を持っているとしか、未だ言えないね。

執筆者

宮田晴夫

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