今年のゆうばりファンタで審査員特別賞に輝いた『金魚のしずく』。本作の主人公Pを、大人にに対し壁を作り反抗的な態度を取りながら、不安と孤独感を内に抱える10代の少女としてナチュラルに演じて見せたのが、モデル出身で本作が映画初出演にして初主演作となったゼニー・クォックさんだ。日本での待望のロードショー公開に先立つ6月、彼女が仕事としては初めての来日を果たし、インタビューをするの機会に恵まれた。
 先にキャロル監督のインタビューをした際に聞いた、彼女の存在感や現場での関係が映画の中のPにかなり近いものだったという話を思い出しつつ、勝手にとんがった雰囲気の女の子を想像しながら約束の場に臨んだのだが、邦題に因んだ淡い黄色地に赤い金魚柄が涼しげな浴衣姿で現れたゼニーさんは、物腰のそこここに素直さが滲み出るお嬢さん。映画の姿は、周到な演技なのか?それとも、監督が話していた反抗期も過ぎたということなのか?などとこちらは余計な想像を巡らせてしまう。
 仕事では初来日と書いたが、彼女はプライベートを含めると既に4度目の来日となる親日家で、慌しいスケジュールの合間をぬって、今回もショッピングなどを楽しんだそうだ。「以前一度着物は着た事があるんですけど、浴衣は初めてです。こちらの方が軽くて楽ですね」と初浴衣の感想を述べたゼニーさん。それでも昼食後すぐのインタビューということで、時折のぞかせるきつそうな表情もまた、あどけなくキュートだった。

(撮影:中野昭次/衣装:きものパルワ(浴衣)03-3440-4449)

$navy ☆『金魚のしずく』は、2002年8月3日(土)より新宿武蔵野館にてロードショー公開!$




Q.モデルとしては活躍されて来られてますが、映画は今回が初出演でしたね。
——話をいただいた時には、とてもよいチャンスだとすごく嬉しかったです。カンヌ映画祭にも行かせてもらいましたし、何より映画を通して様々な人生の勉強をさせてもらいました。判らないところもありましたが、頑張れたと思います。

Q.作中のPが見せる表情が、実にナチュラルで等身大の少女を感じさせてくれたと思いますが、ゼニーさんご自身はPというキャラクターと共通する部分はありましたか?
——性格が強いところは一緒かもしれませんけど、私は楽観的なんですよ(笑)。映画のPは純粋だけど斜めから見ているようなところがありますから、そういうところは違いますね。生き方や普段の生活は、私とは全く違いますし、私は家族との中だってとてもいいですから(笑)。

Q.言葉遣いや持ち物なども、現代普通にいそうな少女っぽかったですが、そうした部分でご自身で工夫されたことなどありますか?
——まずは監督から教えてもらった上で、なるべく自然に演じてみたんです。そこで、何か監督の意向と違うことがあれば、また指導を受けて役を作っていったという感じで。私一人によるものではなくて、皆の指導があって演れたものだと思います。

Q.ウーを演じらたロー・リエさんらベテランの方との共演で、勉強になった点、感想などをお願いします。
——経験豊富なロー・リエさんと一緒に映画に出れたことは、とても嬉しいです。いろいろ教えてくれましたよ。例えば、そのシーンに合わせた表情や動き方とか、台詞のイントネーションなどです。







Q.同世代でトーフ役のチョイ・ティンヨーさんとはいかがでしたか?
——お互いに映画初出演同士でしたので、わからない点もほとんど一緒。だから演技や気持ちなどについても、周りの人に一緒に尋ねたり、よく話をしたりで楽しかったですよ。

Q.大人に対して厳しい視線を向けるPが、ウーとの交流等で次第に心を開いていく過程、例えばスケート場で見せる笑顔などその表情の変化がとてもよかったですが、撮影は順撮りだったのでしょうか?
——順番ではなく、普通にロケ地ごとの撮影でした。

Q.今回初の映画ということですが、撮影中苦労された点など教えてください。
——夜のプールに飛び込むシーンの撮影はつらかったですね。大変でしたよ(笑)。

Q.キャロル・ライ監督の印象はいかがでしたか?
——Pも個性的なキャラクターですけど、監督自身もすごく個性的な人でした。すごく要求の高く、映画への情熱が激しい人です。

Q.撮影スケジュールはいかがでしたか?美しい夜間シーンなども多かったですが。
——結構辛かった部分もありますね。撮影中私はまだ学生でしたから、やはり撮影は夜に集中しがちだったんです。中には週4日徹夜…なんて時もあったんですよ。でも、自分自身も好きな撮影だったんで嬉しさの方が強かったです。

Q.本作に続く映画が既に香港では公開されていますが、今後もモデルとともに俳優も?
——はい、映画でもドラマでもチャンスがあれば是非やっていきたいです。日本の映画にも是非出てみたいです。映画は昔から大好きだったんです。映画俳優では、トニー・レオンが好きです。ジュリア・ロバーツも。それと、俳優以外に、メイキャップ関係の仕事にも興味があるんですよ。

Q.本作の中で特にご自身で気に入られている場面はどこでしょうか
——地下鉄で涙を流す場面ですね。実はあの撮影は、ちゃんと撮影の申請をせずに撮ったものなんで。まず自分の中で涙が流れるように感情を高めてからカメラを回してもらって、撮り終るとすぐに撤収って感じでした。

Q.最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
——好きになってくれたら…と思います。よろしくお願いします。

執筆者

宮田晴夫

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作品紹介
キャロル・ライ監督インタビュー