北海道が生んだ最強タレント・大泉洋。バラエティ番組などで地元ではお馴染みの彼も道外在住のファンとあればやすやすと活躍を見れず、悶々としていたのではなかろうか。その影響もあるのか、彼が出演した「マンホール」は口コミが口コミを呼び、シネ・リーブル池袋で絶賛レイト・ロードショー中である。26日の上映前には大泉洋が舞台挨拶。観客の熱狂ぶりに一番びっくりしたのは思うに彼本人だろうが、矢継ぎ早のトークでしゃべるそばから笑いが起こり、さすがのセンスを感じさせてくれた。以下のインタビューは、舞台挨拶終了後、意外にも「いやー、緊張してダメだったなぁ、参ったなぁ」と呟く大泉洋をつかまえたものだ。人を笑わせ元気づける話術の持ち主は、同時に繊細で誠実なキャラクターでもあった。




——純は、大泉さんに似ていると。
大泉洋 そうですねぇ。ここ一番ってところでうまくいかない感じが似ているかと(笑)。音楽やるって東京に行っても戻ってきちゃったり。全てに対して、どっかメンドくせぇって思ってるところがあるんですよね。コツコツと努力できないというか。今の自分に満足できなくて、コンプレックス感じてるって男なんで、演じた僕としてもこいつの人生がなんとかうまく回って行けばいいな、って思ってましたね。

——先ほどの舞台挨拶でおっしゃってましたけど、鈴井監督は撮影中“人殺しの眼になる”と?
初めて出会った頃、社長はーー鈴井さんのことなんですけどーー眼光の鋭い方でしてね、怖い、怖い感じの人だったんです。それが近年、段々と怒らない人になってきてたんですよ。ところが、映画の撮影に入ったらね、また、戻っちゃいましたねぇ(笑)。

——NGも多かったり、撮り直したり、もですか?
いえ、撮り直したのは1シーンだけでしたね。なにせ、低予算でお金もない映画なんで本番はほぼ一発でOKにしなきゃならなかった。本番に入るまでの準備といいますか、打ち合わせのようなものは密にやりましたけどね。
 



——撮り直したのはどのシーンですか?
明日美ちゃんがデートクラブに出入りする女子高生・希役で、僕は純という元締めを演じたんですけど、純は希に自分を重ねているところがあるんですよ。本当は進学校を出ていて、真面目なところもあって…。そんな背景があって、ある時、希に「嫌だったらやめてもいいんだぞ」って言う。彼女は「それは自分で決めることでしょ」って返す。そう言われて、はたと自分自身を振り返る、希に掛けた言葉が跳ね返ってきてノックアウトされる、純にとっては重いシーンだったんですけど僕は割と軽めに演じた。それを見て監督はねばりましたね。
 
——NGってやっぱりプレッシャー?
 僕の人生のなかで、かなりの緊張を感じた瞬間でしたね(笑)。僕一人のお芝居のために、何十人の作業がストップするわけですから。でも、逆にOKが一番怖いともいえます。OKって、つまり、もうやり直せないってことですよね。OKと言われても100点満点のOKなのか、そうじゃないのかはわかりませんからね。

——とはいえ、現場は和気あいあいとした雰囲気だったそうで。先日、安田顕さんがヤキモチやいてましたけど、大泉さんは三輪明日美さんと携帯の番号を教えあったとか。 
 たまにメールのやりとりはしてますけどね(笑)。安田はちょっとおかしいんですよ(笑)。聞きたいなら聞けばいいのに、あいつ、じっと見てるだけなんですよ。僕も彼も明日美ちゃんに恋してましたけど(笑)、表現の方法が全く違うんです。

執筆者

寺島まりこ

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作品紹介:『マンホール』