ファッションショーの舞台で起きた殺人事件。現場から立ち去った謎の女の正体は? 事件の裏には、いったい何が潜んでいるのか?
 ジャッキー・チェンを、そしてミシュエル・ヨーをハリウッドでの成功へ導いたスタンリー・トン監督の最新作『SPY_N』のジャパンプレミアが、去る6月19日に行われ、主演の藤原紀香、アーロン・クォック、ワン・リーホンが舞台挨拶を行った。
 新しいアクション男優とアクション女優を育てたいというトン監督の下、体当たりでアクションに挑んだ紀香は、シルバーのパンツスーツをセクシーに着こなして登場。「とにかく初めて尽くしの映画。撮影現場の上海も初めて。食べ物から英語のセリフからアクションから、中国の人とのコミュニケーションも全部初めてなので、いろんな苦労があったけれど、積み上げていくうちにすごく団結できた。精神的にも、アクションもすごく鍛えられました」と。
 本作は、地上172メートルに吊られたガラス板の上でのアクションなど、スタンリー・トン監督らしいトリッキーなアクションを全員がノンスタントでこなしたことが話題だが、なんとその板の上で踊っていたというアーロンのエピソードも飛び出し、さすがアクションの香港と唸らせた。
 日本の紀香、香港のアーロン、そして台湾代表のリーホンに、来日はしなかったがアメリカのナンバー1ラッパーであるクーリオや、『ジェヴォーダンの獣』などで活躍する日系人俳優マーク・ダカスコスらも出演という、国際色豊なキャスティングも見所のひとつである。
 この日は、ジャパンプレミアの後、都内のクラブでのシークレットパーティも行われた。
 では、舞台挨拶からそれぞれのコメントをお届けしよう。

$navy 『SPY_N』は、2002年7月20日、渋谷東急3ほか全国松竹・東急系でロードショー$



——外国の映画には初出演ですね。
藤原紀香 とにかくこの映画は初めて尽くしの映画でした。シューティングの場所だった上海も初めてだったし、食べ物から英語のセリフからアクション、中国の人とのコミュニケーションも全部初めてなので、スタッフとぶつかったり、いろんなトラブルがあったけれど、積み上げていってすごく団結できたかなと思います。皆にとても助けられました。
——香港の映画ってよく現場でセリフが変わるとかいいますね。
紀香 日本の現場でもセリフが変わることは多いんです。けど、今回は英語だったから、すごく長いセリフを英語で全部覚えて行ったら、そのシーンが変わってたりしてね。照明をセッティングしている間に覚え直したり、そういうことでもすごく鍛えられました。精神的にも、アクションでも。体がものすごく硬いので。
——そうなんですか?
紀香 本当に私硬いの。立位体前屈マイナス20センチくらいなの。コチコチさんなんですね。それで、監督が「まずは、キミは柔軟から始めたほうがいいよ」と。だんだん練習して、足が上がってきて、人の頭のところでカカト落としができるようになったら、アクション・ハイになっちゃって、嬉しくて嬉しくてしょうがなくて、人が寄って来るとすぐキックとかしてました(笑)。いい経験でした。
——ものすごく柔らかい感じで、紀香さんは格闘技が大好きだし、もしかしたら何かやってらしたのかなと思ったんですよ。
紀香 格闘情報番組をやっていたことは、すごく役に立ちました。空手とかを習っているわけではなかったのだけど、視覚から入ってきて勉強にはなっていたみたいで、監督から言われることも、あの番組をやっていたからすごく理解できたんですよ。何も無駄になっていないなというか、本当に全部勉強だなと思いました。



——アーロンさんも生身でやってましたね。しかも相当高い(地上172メートルの)ガラスの上で。
アーロン (日本語で)ソウ。アブナイ。トッテモアブナイ。
——どうして、スタントマンではなくご自分でやったのですか?
アーロン この映画の中では、僕と紀香さんにアクションシーンが多かったんですが、最初、監督からストーリーの説明を受けたときに、ノースタントでいこうと決めました。それまでにも、僕はいろいろなアクション映画で経験を積んできました。何よりも観客に生身の技を見せたい、この映画のためにこれだけ頑張ったという誠意を観客に感じとってもらいたいと思い、スタントなしにしました。
——アクションの先輩として、紀香さんのアクションはいかがでしたか?
アーロン イチバン。私は今までいろいろなアクション映画に出たし、いろいろなアクション映画も見ましたけれど、今回の作品のなかのアクションシーンに関しては紀香さんのようにこなせるアジアの女優はいないと思います。
紀香 アーロンさんね、私が恐くてぶるぶる震えているところで、あのガラスの172メートルの場所で踊ってたの!
アーロン 高い所が好きなわけではないのですけれど、現場がひじょうにピリピリしていたので、少し雰囲気を和らげようと思いました。それに、僕は別の映画で200メートルくらいの所で撮った経験もあるので、172メートルくらいなら大丈夫。そんなわけで、少しおどけて現場の雰囲気を和らげようとしたのです。



——お待たせしました。ワン・リーホンさんです。今回は、アメリカ・日本・香港・ヨーロッパと各国のトップクラスのスターが出演されている。その中で「あなたですよ、台湾代表は」みたいな雰囲気で出演されました。いかがでしたか?
リーホン 国際的なキャストと参加することになって、最初は少しナーバスだったんです。初めての映画で、本当に素晴らしいチャンスを与えていただいて誇りに思っています。特に藤原紀香さんとそちらにいらっしゃるアーロン・クォックさんとご一緒できて、すごくいい経験だったと思いますし、クーリオと共演できたことも嬉しかったです。クーリオは、僕たちと同じスピリッツを持っていると思います。僕はジャッキー・チェンの大ファンなので、ずっと一緒に仕事をしてきたスタンリー・トン監督とご縁があったこと、彼のスタッフと仕事ができたことを本当に嬉しく感じています。
——スタンリー・トンさんが「これはハリウッド映画のアクションじゃできないよ」とおっしゃったのですが、ハリウッドのアクション映画に負けてないぞというところは?
リーホン ハリウッドのコンピュータグラフィックスやたくさんのスタントマンを投入して作るような大作に比べると、恐いと感じたシーンもありましたが、スタントなしで自分たちがやったことによって表現できたことがあると思いますので、やれたことを誇りですし、100パーセントの力で臨んだと思っています。



——この3人のなかで、怪我をした方は?
アーロン 肋骨にひびが入りました。怪我をした後、すぐ別のシーンを撮ったので、けっこう痛かったです。
紀香 ひび入ったまま撮影してましたから驚いてました。
——で、紀香さんはどこを?
紀香 私はリーホンと、デパートメントストアの5階から4階に飛び移るシーンで、リーホンのタイを持ってぱっと移るんですけど…
リーホン だから、今日はタイをしていません。(会場笑い)
紀香 ぱっと飛び降りて、4階にまた入らなくてはいけない。でも、4階にも手すりが胸のあたりまであって、この手すりを乗り越えなくちゃいけないのに、人間ね、落ちている時はよっぽどの腹筋がないと足があがらなんですよ。スタントの方が見本を見せるためにいらっしゃって、すごく簡単そうにやるから、これは私もできるな、と思ってやったら、落ちている数秒がすごく長く感じられて、一生懸命腹筋で足を上げようとするんだけど上がらなくて……バーン!!って(手すりに)当たっちゃったんですよ。その瞬間は、本当に骨が折れたと思いました。そのころ日本でテレビドラマの収録もあったので、すぐこう「藤原紀香降板か?」って(見出しが)頭に流れてきちゃったんですよ。ちょうどサポーターをしていて、その板がぱきっと折れてたの、骨の代わりに。
——本当にご苦労さまでした。そして?
リーホン 怪我をしたシーンではないのですけれど、藤原さんとのシーンがいちばん難しかったシーンでした。僕のタイを引っ張って藤原さんが落っこちるので、僕は逆さまになってしまうんです。逆さまになったまま、ふたりで会話をしなければいけないというシーンです。見所なんですけど、1日中撮影していて、監督が「アクション!」という度に手すりを越えてひっくり返らなければいけない。その度に、胃のあたりが痛くなって戻しそうになる。ハーネスでサポートしてるんですけど、それがぐっと臓腑を押し付けて苦しい。もう吐きそうだって思うんですけど、目の前に紀香さんがいらっしゃる。こちらを見ている。とてもじゃないけど、吐けない。というわけで、幾度も幾度も吐きそうになったものを飲み込み飲み込み、不快な思いをしつつ何とか乗り越えられたのは藤原さんのお蔭だと言えると思います。
紀香 我慢してくれてありがとう。
——本当に感動的なお話をありがとうございました。最後にいちばんオススメシーンをお願いします。
紀香 オススメシーン、たくさんありますよ。今、話にはでませんでしたが、ものすごいアーロンさんのカースタント。クルマの映画はいっぱいあるけど、そんなモンじゃないと思います。あと、リーホンとアーロンの友情でぐっと胸の熱くなるシーンもあります。あと、172メートル、地上44階の所から吊られた空気感を感じて欲しいですね。
アーロン 同じですね。最初から最後のエンディングまで面白いので、集中して見て頂きたいと思います。特に172メートルのシーンは、僕たちもはらはらして撮っていました。自分にとっても思い出深い作品ですので、ぜひ楽しんでくださればと思います。
リーホン 僕が出ていないシーンで残念なんですけど、僕もいちばん忘れられないシーンは最後のシーンだと思います。安全用のネットも張ってありませんでしたし、カメラのトリックも一切使っていません。ぜひチェックしてください。前代未聞のシーンだと思います。

執筆者

みくに杏子

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