“ジョバンニ監督に声を掛けられた時、2分の1秒足りとも迷わなかった” 「父よ」主演ヴァンサン・ルクール、独占インタビュー!!
「撮影のため10キロ減量した。だけど、減量なんて他の演技表現に比べればずっと簡単なことなんだよ」(ヴァンサン・ルクール)。「サルサ!」ではキューバ人になりすまし、サルサに傾倒するおバカで憎めない主人公を、次作「赤ずきんの森」では色白・端正な美貌を活かし、ホラー映画に挑戦したヴァンサン・ルクール。端正な顔立ち、確かな演技力とフランス映画界・若手注目株の彼が、今度は死刑囚に扮する。原作は監督であるジョゼ・ジョバンニの実体験で、当時、牢獄から彼を救い出した亡き父へのオマージュであるという。ヴァンサン・ルクール自身、かねてからジョバンニ監督の大ファンで、撮影中は劇中の父と息子さながら、男と男の絆ができたらしい。スクリーンから受けた神経質な印象はどこへやら、気さくな人柄が胸に残るインタビューとなった。(撮影:中野昭次)
※「父よ」は6月29日から日比谷シャンテ・シネにてロードショー!!
——本作品のどのようなところに魅力を感じましたか?
いやいや、魅力も何も、あんな凄い監督が自分に声を掛けてくれたことの方がよっぽど謎だよ。二分の一秒たりとも迷わなかった。27歳でジョバンニ監督に出会えたことは自分の人生においても、キャリアにおいても、計り知れないくらい大きいだろうね。
——監督は何故あなたを選んだのだと思いますか。
まず写真を見て、気に入ってくれたらしい。監督の若い頃を演じるわけだから、顔がスベスベだったりしたのが良かったのかな(笑)?ジョバンニ監督が言うに、犯罪に手を染めていてもなんとなく育ちが良さそうで、かつハンサムボーイだってことが重要だったみたいだよ(笑)。
——ジョバンニ監督はどんな人でしたか?
誠実で人間的な人。何より友情というものを大切にし、とても信頼できる人だ。監督にとってこの作品は撮らなければならないと同時に、古傷を掘り返す作業に違いなかったと思う。父と息子が対立するシーンの後、涙を流していたこともあったしね。
——獄中の中にいるあなたは実年齢より、かなり若く見えますね。それこそ10代後半といっても通るくらいの。
うん、それこそ意図してやったことだよ。映画の中で僕は17歳から40歳までを演じなければならなかった。登山のシーンは17歳だし、釈放された時は35歳だよ。刑務所にいる場面では10キロほど体重を落として、若く見えるように工夫したんだ。
——撮影期間は40日間ですよね。その間、それだけの体重の増減があったんですか。
撮影に入る前の1ヶ月間で減量したんだ。でも、そういうことはハリウッドの多くの俳優もやっていることだし、難しいことじゃないよ。例えば、スクリーンで愛情を表現するようなこと、感情表現に比べればしごく簡単なことだ。
——現場の雰囲気はいかがでしたか。
面白いことにチーム全体が修道士の集団みたいだったよ。看守役のリュフュスと仲良くなってよく冗談を言ってね。「鉄格子の向こう側にいる人たち(クルー)はなんて居心地が悪そうなんだ」って(笑)。僕と彼と、やはり囚人を演じた役者3人は逆にくつろいでいた位だね。囚人の大仰なパジャマの柄は笑えるし、撮影中つけっぱなしだった手錠にしても素敵なアクセサリーじゃないか、とかね(笑)。
——「サルサ!」、「赤ずきんの森」、そして今回の「父よ」と全く違った役を演じていますが、役柄が日常生活に影響を及ぼしたりしますか。
うん、それは逆かもしれない。役柄が日常生活に影響を及ぼすんじゃなくて、日常生活を生かしつつ、役柄に入っていく。そんな感じだね。
——カットされたシーンなどはありましたか?
原作に忠実、全くシナリオ通りに進んでいった。これがホラー映画になると現場でシナリオがひっくり返ってしまうってこともあるけど…。どちらにしても「父よ」のように天才が書いたあれほど素晴らしい原作があるなら、傑作になることは既に決まっているようなものなんだよね。でも、台詞は一フレーズだけ付け加えたかな。「私は恥ずかしく思う」、その一部分だけ。
執筆者
寺島まりこ
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作品紹介
「父よ」で来日!!ヴァンサン・ルクール、今度は死刑囚に挑戦「出演の基準はシナリオ。『赤ずきんの森』だってシナリオは良かったんです」
作品「サルサ」
作品「赤ずきんの森」