昨年の秋公開されると、作品で描かれる同世代の観客は言うに及ばず、幅広い層の観客の支持を得た『プラトニック・セックス』が、4月24日にDVD発売&ビデオ・レンタル開始となる。このうち、ポニー・キャニオンよりリリースされるDVDソフト(税抜3,980)には、オーディションにより選ばれ本作で主演デビューした加賀美早紀さん、原作も含め作品のプロデュースに携わった渡辺ミキプロデューサー、そして松浦雅子監督によるオーディオ・コメンタリーが収録され、作品に関してのそれぞれの思いや撮影の裏話など、興味深い話が聞ける仕様になっている。
 3月某日、加賀美さん、渡辺P、松浦監督が都内のスタジオにて久々の再会を果たし、なごやかなムードの中で、コメンタリー収録が行われた。本インタビューはその合間をぬって行われたもので、劇場公開からしばしの間をおいての現在の心境や、これから新たにDVDというメディアで作品と出会う観客に向けてのメッセージをここにお伝えしよう。
(インタビュー・撮影:飯塚克味)









Q.本作が、映画として動き出した発端は?
渡辺ミキプロデューサー——ご存知のように、飯島愛の書きました『プラトニック・セックス』という本があり、これが構想2年・執筆1年強という期間をかけて作られたものなのですが、その製作過程のでひじょうに絵が浮かんでくる作品なので、映像化の話が多数くるのではないかと思いました。飯島の半生を基にした本でありながら、同時に時代を超えて生きることに一生懸命とらえるからこそ、悩んだり迷ったり満たされない思いを抱えて歩いていかざるをえない十代の時の気持ちを、普遍的に表現できている作品だとも思いました。この作品は、いろいろな若い人たちに生きていこうという勇気を与えてくれるものになっていると思いましたし、映像と言うもっと多くの人たちの心に突き刺さり得る表現で、表現すべき題材じゃないかと思ったんです。

Q.この作品は、テレビドラマと映画が同時期に製作され、DVDも同時期に発売され、メディアミックス的な展開をとられていますが、どのような観点からこの展開に臨まれたのでしょうか?
渡辺P——映像化しようと思った時に、ふたつの側面があると思いました。これは愛を求め、愛されたい、自分の存在意義を持ちたいと思ってもがく少女の話だと思いますが、それを一番基本の社会である“ファミリー”という単位を軸に描く表現と、一人の少女として人を愛するようになった時に、愛するからこそ寂しさを感じるという面、その二つがあると思いまして、それぞれをちゃんと表現する必要があると思ったんです。一つの作品に両者を盛り込むことも考えましたが、それはかえってよくないなと思い、二つのメディアででわけるべきではないかと。家族揃って観ていただくか、それとも母子がそれぞれ別々のテレビで観て、それぞれの気持ちを思って感じてもらえればいいと考えたのがテレビドラマという表現をとったものですし、同性の友達…もしくは一人でかもしれませんけど、観に行って人を愛する素晴らしさと、人を愛するからこそ感じる寂しさを、感じ始めた女の子達に、そして男の子達にも伝えたいと思ったものが、劇場で上映する映画かと思いました。

Q.映画の方もヒットし、また現在DVDが製作中なんですが、DVDの方はどういった方に観て欲しいと思いますか?
渡辺P——『プラトニック・セックス』は、本も映画もとても真面目な作品だと思います。大人が考え子供に見せたい真面目なものではなくて、悩んでいる当事者が見てすごく真面目な気持ちになれるエンターテイメント作品だと思います。ですが、たまたま映画がR-15指定になりました関係で、本当は中学生や小学生の女の子たちにも見てもらいたかったですし、教育上も良い作品になっていたと確信してます。将来16歳以上になっていく若者達に、ずっと長い時間を経て観つづけてもらえる作品だと思ってますので、そういう意味ではDVD化は、時間を超えて、もしかしたら国境も越えて、いろいろな国、いろいろな時代の若者に刺さってくれればいいなと思っています。








Q.非常に難しい役どころだったと思いますが、役作りなどどのような点で苦労されましたか?
加賀美早紀さん——結構自分と似ているところがあって、すごく孤独だと思っていたり、人を信じることとかの気持ちの面で似てましたので、難しかったけれど、逆にすんなりは入れました。ただ逆に、自分と似すぎていて出来ない部分もあったりして、そういう部分は撮影中もすごく難しかったですね。

Q.今回コメンタリー収録として久しぶりに作品に接し、その感じ方とかが変わって来た部分などはあるのでしょうか?
加賀美さん——素直に言えば最初だから恥ずかしいっていうのはあります。でも、その時に思っていたことや考えていたことは嘘じゃないし、その時のものが全て出てますし、その時間が戻ってくるわけでもないし…だから、懐かしいっていうのはありますね。

Q.R-15ということで、観ていただきたい年代の方に観てもらいづらい状況がありましたが、同世代の方の直の反応などはお聞きになりましたか?
加賀美さん——聞きました。友達からメールで来たりして、「すごいじゃん」とか。人を大切に思うことや生きることが、普通に生きてるけどそれは素晴らしいことで、好きな人・大切な人を守って行くのはすごく大変なんだとか、いろいろなことを考えさせられたよ、ありがとうって言われました。

Q.これからDVDを購入する人たちにメッセージをお願いします。
加賀美さん——今その時に、早紀が思っていたこととか、十代後半くらいとかって、そういう気持ちをすごく持ってたり、いろんなことを考えてたり、それでも答えが出なくて、そういうことは何年経ってもあると思うから、自分の子供とかにそれを見せてあげるとかってなれば、早紀としてはすごく嬉しい。自分が演ってるからとかじゃなくて、自分がもらった想いとかをすすめてくれる人がいて、それを見て何か考えてくれる人がいるってことは、本当にすごく嬉しいことだし。何か悩んだときとか見たいときに、いつでも見てもらって、ちょっとでも役に立ってもらえればすごく嬉しいです。










Q.演出を引き受けられたきっかけは?
松浦雅子監督——最初に『プラトニック・セックス』が映画化されると聞いた時は、正直驚きました。誰がやるんだろうとか、過激な部分も沢山あったんでどんな映画になるんだろう。どういうメッセージを伝えようと言うのか、非常に興味があったんです。それで本のほうもプロデュースされた渡辺さんにお会いした時に、映画館に来ない、本を読まない十代の子たちにむけて、生きるというストレートなメッセージを確実に届けるために映画化したいという話をお聞きしたんです。それだったら、すごく意義があるなぁと思えて。今、十代の方に限らず、二十代の方からご年配の方まで皆、何で生きているんだろう?という部分で、心の中に解けない塊があるんじゃないかなと。そういう所の根本の話を聞いて、やってみたいなと思ったんです。

Q.女性の監督と言うのは本作でキー・ポイントだったと思いますが、その点ご自身で意識された部分はありますか?
松浦監督——きっとあの原作というのは、様々な映画化の仕方があったと思うんです。私にお話をいただいた部分では、過激な内容を過激に撮る、もしくは官能的な部分も含め刺激的に撮ればいいんだよってことでは無いという、プロデューサーの方の志向がきちっとあって、お声をかけていただいたのかなと。過激なシーンもありますけれど、主人公側に立った気持ちでシーンを撮っていく、内面から撮っていくという部分で、女性監督をということになったのだと思います。

Q.作品に対する手応えなどは、どのように感じられましたか?
松浦監督——正直言いますと、きっと題名から来る過激な内容の映画という興味で入られた方は、皆さん驚かれるとは思いますね。ピュアなラブ・ストーリーになってますので、「あれっ?」と思われる方はいらっしゃるかと思いますけど、我々のやりたかったことは、いろんなことをやってますけど、本当に普遍的に存在する、人を信じるとか、もう1回生きてみようとかいう、ひじょうにスタンダードなものなんです。

Q.公開時にR-15指定を受けたことは、どのように思われましたか?
松浦監督——内容が援助交際してたり、AV嬢だったりというストーリー的な部分でついたのですが、我々がやりたかった、伝えたかったメッセージは15歳以下の人たちにも是非伝えたいという部分はありますね。

Q.映画とテレビが同時進行の中で、監督はどういった部分で映画ならではの工夫を注がれようと思ったのでしょうか?
松浦雅子監督——これは映画版ということで始まったわけですが、最初から一人の女の子の成長という映画でしたので、それとリンクしてオーディションを行い、普通の女子高生が映画に参加し成長していくと。その二つのストーリーが同化しているのは、映画ならではの試みで、我々の賭けでもありましたが、やった意義はすごくあったなと思いますね。リアルな生き様の女の子を探し当てたという、そういう感じでしたね。

Q.これからDVDを購入する人たちにメッセージをお願いします。
松浦監督——この映画は、自分的にもすごく愛情をこめて作ったもので、DVDとして購入して、持っててくださる人たちに対しては、非常に嬉しいなという感じですね。あまり説教臭いことを言うのもなんですが、テーマは自分の居場所とか、何で生きているのかとか、でも生きていこうと。立派じゃないけど、生きていこうという生命力のようなものを描いたつもりなので、哀しくなったり、壁にぶち当たっちゃった時なんかに、思い出してみていただけたら嬉しいなと。単に過激な映画じゃなくメッセージがありますので、未だ見ていない方にも、観ていただけたらと思います。

執筆者

宮田晴夫

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