朝、目覚めるとシッポが生えちゃった!?前田哲監督「パコダテ人」は函館を舞台にしたチャーミングなラブ・ストーリーである。しかし、前田哲といえば前作「sWinG maN」で、主人公の屈折した怒りを描いた監督ではなかったか。ヒロインを演じる宮崎あおいにしても明るい女の子とはほど遠いキャラクターが多かったではないか。しかし、前田監督は「エンタティメントの方が向いてるんじゃないかと思うんですね」という。「パコダテ人」はいってみれば現代のおとぎ話だが、いわく「ライバルはディズニー、イメージしたのは宮崎アニメの実写版(笑)」だそうだ。

※「パコダテ人」は4月27日から銀座シネパトス、新宿東映パラス2でロードショー!!




——「パコダテ人」のシナリオは脚本家・じんのひろあきさん宅で見つけたそうですが。
 函館港イルミナシオン映画祭というのがありまして、じんのさんはシナリオ大賞の審査員をやっていたんですね。僕が遊びに行った時、じんのさんの家には公募シナリオが山と積まれていたんです。その山を崩して、「パコダテ人」という変な題名のシナリオがあった(笑)。なんだか気になって読んでみると、これが面白かったんですね。

——前作の「sWinG maN」とタッチが全く違います。
 逆に「sWinG maN」を終えたばかりの時だったから、明るい話をやりたかったというのもありましたね。僕のデビュー作(「かわいいひと」EPISODE3)にしても、軽くて楽しい感じの話でしたし、どうもそっちの分野の方が向いてるんじゃないかって気もするんですよ。助監督時代もエンタティメント作品にずっと関わってきましたし…。

 ——主演の宮崎あおいさんもこれまでの暗めキャラクターから180度転換。
普段は明るくて、面白い子なんですよ(笑)。ひかる役は当初からあおいちゃんをイメージしていました。とても勘のいい子なんでね、現場もスムーズでしたし、
ちなみにひかる一家は現場でもいつも一緒で本当の家族みたいだったんですよ。ロケで泊まったホテルの人たちはあおいちゃんと姉役の松田一沙さんとを本当の姉妹だと思ってたみたいですしね。

——前田監督の演出ってどんな感じなんでしょう。役者さんにあれこれ言う方ですか?
 ケース・バイ・ケースですねぇ。これ、木下ほうかさんに言われたんですけど「sWinG maN」の時は“まばたき1ミリの差でも妥協しなかった。変えてくれって言ってた”って(笑)。「パコダテ人」に関しては役者さんの個性に任せたというのか。市役所職員を演じた大泉洋さんは、一発OKが多くて逆に不安がってましたけど。




——函館市はロケに対して協力的だったそうですね。
 函館って、ものすごい数の映画が作られていて、撮影慣れしてるんですね。東京なんかと違って、おおむね地方は映画撮影に好意的っていうのもあるんですけど(笑)、消防団が駆けつけてくれて雨を降らしてくれたりとか。ロケーション的にも海があって、坂があってと、ファンタジックな場所が多いんですね。

——「パコダテ人」は北海道で先行上映されました。同作に限りませんが、ご自分の映画を劇場で見たりはしますか?
劇場には行くけど、見ないようにする(笑)。お客さんの反応は気になるけど、見てしまったらああすればよかった、こうすればよかったって始まってしまうので。自分のタイプは後ろ向きの全力疾走なんですよ。竹を割ったような、というなら僕は餅をついたような性格なんで(笑)。

——餅、ですか(笑)。撮影後はほっとするよりもがっくりきてしまう方なんですか?
うーん、現場に入っている時しか生きてる実感がないような気がします。普段は優柔不断で何一つ決められないんですけど、撮影に入るとちゃんと決断できる人間になる(笑)。僕にとっては仕事というんじゃなくてプレーという感じ、野球選手も仕事するとはいいませんけど、それと同じ感覚なんですよ。

——次回作のご予定を教えてください。
 具体的なものではないですがアクションか、大人の恋愛ものを撮りたいというのがありますね。とにかく、ひとつのジャンルに染まらずにいろんな作品を撮っていきたいです。

執筆者

寺島まりこ

関連記事&リンク

作品紹介
宮崎あおいが明るい(?)少女役に挑戦!!シッポが生えて「パコダテ人」(ゆうばりファンタレポート)
映画監督「前田 哲」Web Site
公式サイト